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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第二章 「その巨塔、予測不能につき」
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第二章 第九節 ~ VS ギガスコーピオン ~


     ☯


 ミラ達が戦いの意思を示すと、スコーピオンもまた鋏を構え、応戦の気を示した。

 相手の動きを(にら)みつつ、ミラは脳内でボス戦での方針を考える。


(ギガスコーピオンとは何度も戦っていますから、攻撃のパターンも大体の能力値も既に把握済みです! 私が気を引きつけて攻撃を(かわ)しつつ、リオナさんが倒れないよう注意して立ち回れば、苦戦することはないはず……)


「……リオナさん、まずは敏捷性(びんしょうせい)の高い私が敵の気を引きつけますから、その間にリオナさんは――」


「っしゃ、いくぞオラアアァァァッ‼‼」


「――ってもう飛びかかってる⁉ 少しは話を聞いてくださいーーっ⁉」


 方針を伝えようとしたミラを置き去りにして、リオナは一直線に巨大(さそり)に向かって走って行った。

 このボスの倒し方は既に知っている。作戦を立てるまでもなかった。


 敵の接近を察知した蠍は、彼女を捕らえようとその巨大(はさみ)を伸ばしてくる。

 今の彼女の防御力では、挟まれた瞬間に身体が真っ二つになるだろう。

 迫る鋏に対し、


「フッ!」


 鋏が閉じられる直前、リオナは大きく跳躍して、蠍の鋏から脱出した。

 一歩間違えれば即死、そんなギリギリのスリルを味わいながら、外殻で覆われた蠍の背中に着地する。

 そのままスコーピオンの尻尾目掛け、無数の斬撃を(たた)き込んだ。


 一部始終を見ていたミラは、ギリギリで鋏を躱すリオナに胸をハラハラさせていた。

 彼女が蠍の背から飛び降りたところで、ホッと一息。

 それから、独走するリオナに対し、


「リオナさんっ! 危ないですから、正面からの接近は避けてくださいっ‼‼ 一旦私に任せて――って聞こえてないですね……。ああもう仕方ないっ‼‼」


 半ばやけっぱちになりながら、ミラは遠距離から魔法を放った。


「≪ムーンフォース≫っ!」


 蠍の顔面に爆発を起こす光弾を発射する。

 強力な爆風は蠍の身体をのけ反らせ、一定時間のダウンを取ることに成功した。

 蠍が動きを止め、ぐったりと鋏を下ろす。


「よし! リオナさん、今のうちにスコーピオンの尻尾を攻撃しまくってくださいっ‼‼」


「わかってらぁッ‼‼」


 ギガスコーピオンは顔面に一定のダメージを与えるとダウン状態になる。

 その隙に弱点となる尻尾を攻撃することで、簡単に倒すことができるのだ。


「≪辰彌(たつみ)流・(たき)()り≫ッ‼‼」


 大上段から振り下ろされた強烈な一撃を叩きつけられ、蠍が苦悶(くもん)の声を上げる。

 間髪入れずに更なる武技を使い、


「≪辰彌流・()()太刀(たち)≫ッ‼‼」


「ギシャアアアァアァァァアアアアッ⁉」


 横一文字から縦一文字に繰り出された二連撃の斬撃が、蠍の尻尾に十字型の傷を付け、そこから紫色の血液が噴き出した。

 蠍がのたうち回り、足の爪でフィールドの地面を引っ()き回す。

 しかし、リオナの攻撃の手は()まない。

 返り血を浴びるのも構わず、リオナは剣を振るって、縦横無尽に蠍の尾を斬りつけた。


「ハハハハハハッ! どうしたどうした⁉ 10層ボスの力はそんなもんかよッ⁉」


 モンスターに人の言葉など通じないはずだが、リオナの嘲笑的な態度が気に障ったのか、蠍は鋏をギリギリと持ち上げ、再び動き出そうとしていた。

 その様子を見ていたミラが、


「リオナさん、そろそろスコーピオンがダウンから復帰します! 一度離れてください!」


 ダウンからの復帰の気配を感じ取り、リオナに向かって叫ぶ。

 しかし、彼女の声など聞こえていない様子で、リオナはその場から離れようとしなかった。

 そのうちに、蠍は重い身体をゆっくりと持ち上げ、


「リオナさんっ‼‼ 聞こえていないんですか⁉ 今すぐそこから離脱を――」


「ギシャアアアアアァァァァァアアアァァアアアアアアアァア――――ッ‼‼‼‼」


 とうとう蠍が自由を取り戻す。

 散々攻撃を受けて(いら)()っているのか、とてつもない咆哮(ほうこう)を上げながら、赤い瞳を光らせていた。

 それを見て、リオナは獰猛(どうもう)に笑った。


「よしよし、(ようや)くお目覚めか。折角逃げねえで待っててやったんだ。最後の足掻(あが)きで、このオレを楽しませてみせろッ‼‼」


 リオナが両手を広げて、蠍を挑発する。

 蠍の巨大な鋏が打ち下ろされ、フィールドの地面が陥没した。


「リオナさんっ‼‼」


 顔を蒼白(そうはく)にさせるミラの前で、攻撃直前に跳躍していたリオナが、蠍の鋏の上にスタッと降り立った。

 彼女に相当なヘイトを()め込んでいるのか、蠍はミラの方など見向きもせずに、リオナに向かって鋏を伸ばしてくる。


 二本の鋏が交互に、間断的に繰り出される。

 それら全てを、リオナは跳躍し、回転し、後転し、屈伸し、うつ伏せになり、潜り込み、躱し続けた。

 流れるような所作で延々と鋏を避け続けるリオナの姿は、まるで新体操の演技でも見ているかのように美しかった。


(おせ)え遅えッ‼ そんなんじゃ亀にも追いつけないぜ? もっと本気を出してみろッ‼‼」


「リオナさん! あんまり調子に乗ってると……」


 鋏では捕らえられないと判断した蠍が、唐突に別行動を取った。


 奈落のような口から、何かの液体をリオナに向かって飛ばしてくる蠍。

 リオナが避けたその液体は、フィールドに設置された石柱に着弾すると同時、その表面をジュウジュウと溶かし始めた。

 根元を削り取られ、倒壊していく石柱を見()りながら、リオナは(つぶや)く。


「ふう、危ねえ危ねえ。そういや、そんな攻撃もあったっけな」


 口を開き、再び溶解液を飛ばそうとした蠍の身体に、魔法の砲弾が直撃した。


 砲弾の飛んで来た方を見遣ると、ダガーを振り切った姿勢のミラが(たたず)んでいた。

 鋭い視線で土煙に隠れた蠍の様子を(うかが)っている。と、


「シャアアアァァァァアアアアア――――ッ‼‼」


「くっ……やはり、尻尾でないと攻撃が通りませんか……」


 ミラの放った魔法は、蠍の硬質な外殻によって阻まれていた。

 ダメージを負った様子はなく、蠍は鋏を打ち鳴らしてミラ達を威嚇してくる。


 攻撃対象をミラへと変えた蠍は、彼女を追って駆け出した。

 それを引きつけつつ、


「私がスコーピオンの動きを止めますっ! 最後はリオナさんがキメてくださいっ‼」


「ほう」


 追って来る蠍に背を向けたミラは、一足飛びで石柱の上へと飛び乗った。

 蠍は彼女を捕捉するべく、彼女が乗った石柱の根元を鋏で粉砕する。

 しかし、石柱が完全に倒壊する前に、ミラは次の石柱へと飛び移っていた。


「≪ムーンライトアロー≫!」


 隙のできた蠍の背中に、魔法で作った光の矢を射出する。

 蠍の身体の節目掛けて放たれた一本の矢は、外殻の隙間を縫って蠍の身体を貫通した。

 思わぬダメージに蠍がのけ反り、一瞬動きを鈍らせる。そこへ、


「≪ムーンショット≫っ!」


 チャージした≪ムーンショット≫を蠍の顔面に叩き込む。

 数発()らわせた後、再び蠍のダウンを取ることに成功した。


「リオナさん! トドメをっ‼」


「あいよ」


 ダウンした蠍の正面で、リオナが正眼に剣を構える。

 ミラの攻撃により、蠍は動きを止めていた。

 狙いを定め、蠍を仕留める最後の剣術を使用する。


「ま、そこそこ楽しかったぜ? 今度は威力だけじゃなく、もっと速さを鍛えるんだな。――≪()(けん)の五・天衝(てんしょう)≫ッ‼」


 自分の身体ごと突っ込む最速、最大威力の突きを蠍の尾に捻じ込む。


 動きを完全に止め、瞳の光を失った蠍は、拳大の魔晶石(ましょうせき)を残して消え去った。



敢えてモンスターを煽っていくスタイル

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