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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第二章 「その巨塔、予測不能につき」
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第二章 第七節 ~ トレジャーハンティング ~


     ☯


「ふむ、この辺りか」


 マップと実際の景色を見比べていたリオナは、唐突に足を止めて、左の壁のある一点を指し示した。


「ほれ、あそこ見てみろ」


「……何処(どこ)です?」


「あそこだよ。岩が出っ張って、モケーレ・ムベンベの首みたいに見えるトコ」


「……その(たと)えはわかりませんが、場所はわかりました。しかし、あそこがどうかしましたか? 一見して、何も無いように見えますが……」


「気付かねえのか? 岩の辺りに、ちょっとした(くぼ)みがあんの。如何(いか)にも何か隠してそうだよな……?」


「はっ⁉ アタイ、ちょっと見て来るよ!」


「あ、気を付けてくださいねっ‼」


 リオナが指し示した所に、リィがパタパタと駆けて行く。

 その尻尾を注意深く見守っていると、彼女が何かに気付いたように声を上げた。


「地面が盛り上がって、何か突き出ているよ!」


 リィが手で盛り上がっている部分の土を()けていくと、やがて、隠れていた物の正体が明らかとなった。


「やった! 宝箱だっ! ……でも――」


 見つかった大きな宝箱を胸いっぱいに抱えて運んで来る。

 その中身を見て、ミラは残念そうに(つぶや)いた。


「あやや……空っぽですね。既に誰かが見つけた後だったようです……」


「うーん、まあ、そんなもんだよね。この辺りは冒険者が何度も訪れているだろうし」


 苦笑するミラ達を余所(よそ)に、リオナは宝箱の隠されていた岩壁へと近付き、猫の手でその表面を()で回し始めた。

 何となくその動きが不出来なパントマイムのように見えて、ミラは(いぶか)しげな声で彼女に尋ねた。


「リ、リオナさん……突然、何をされているのです……?」


「……人間ってのは、目の前の宝を手に入れると、もう一つあるとは考えねえ生き物だ。それが巧妙に隠されていて、見つけるのにメチャクチャ苦労したモンであれば、尚更(なおさら)な」


 その時、リオナの手の触れた岩壁の一部が、ガコンという音を立てながら、正方形の形に沈んだ。

 すると、すぐ隣にあった巨大な岩がボロボロと崩れ出し、その奥から()びついた鉄扉が現れた。


「か、隠しスイッチっ⁉ そんな仕掛けが第8層に……」


「その宝箱はこいつを悟らせない為のブラフだ。大抵のヤツはそいつに気を取られて見逃しちまうだろうが――オレの目は誤魔化せねえぜ!」


(ゲームで知ってただけだがな)


 MMORPGシェーンブルンには、こうした隠しアイテムが無数に存在する。

 注意していれば気が付くものから、偶然の導きがなければ見つけられないものまで様々であり、攻略サイトでもその全ては載っていない。

 そうした隠しアイテムを求めて、マップ中を探索するのもリオナの趣味の一つであった。


 ギイィィと(きし)む重たい鉄扉を開けたリオナに続いて、ミラとリィも扉の向こうへと足を踏み入れる。


 六畳程の空間の中央に祭壇が置かれており、その上に赤い宝箱が載っていた。


 ミラとリィがゴクリと息を()む前で、リオナがその宝箱を開けてみると、中から緑色の光に包まれた美しい鉱石が現れた。


「これは――〝エメラルド〟ですね! 素材に使用すると風属性強化の効果を付与することができる貴重な鉱石で、取引価格もかなり高額です。文句無しの〝お宝〟なのですよ♪」


「わお、すごいねえ! アタイ、エメラルドなんて初めて見たよ! 下層にもこんなお宝が眠ってるんだねえ!」


 リオナが宝箱の中の鉱石を取り出し、ニヤリと笑った。


流石(さすが)にこいつの存在にまでは気が付かなかったか。ラッキーだな♪」


 取り出したそれをリィに手渡した。


「ほらよ! 落とすんじゃねえぞ?」


「わ! とと……。うん! 貴重な資源だ。大事に運ぶからね!」


 (うなず)いたリオナは、再びマップを見て歩き出した。


「さて! この第8層には、このエメラルドみたいに隠されたお宝がまだまだ眠ってる! こっからはダンジョン攻略じゃなく、未知のお宝探しといこうかッ‼‼」


「おー‼‼」


「『まだまだ』って、そんなにたくさんの隠しアイテムが、一つのフロアに配置されているものですか?」


「ああ! 例えば――」


 そう言って彼らが訪れたのは、第9層へ上がる階段から正反対の場所に位置する広大なドーム状の空間だった。

 何本もの道がこの空間から奥へ伸びているが、どれも基本的にはモンスターの巣に(つな)がっており、その為に、この空間はモンスターとの遭遇率が高く、冒険者が忌避する場所となっている。

 そんな場所に()えて足を運んだのは、この場所が文字通り貴重なアイテムの〝宝庫〟となっているからだ。


(ゲームでもよく来た場所だな……。目的は隠しアイテムじゃなくて、ドロップアイテムの方だったが)


 この空間に頻繁に出現するモンスターに〝ファイアリザード〟というのがいる。

 それのドロップする〝()蜥蜴(とかげ)の尻尾〟というアイテムが序盤では大量に必要になるので、よくここへ狩りに来ていたのだが、それは今は関係無い。

 過去の思い出を振り払いつつ、


「ここはモンスターの数が多くて難易度が高い分、配置されているアイテムの数も多いんだ。ミラ、試しにそこ掘ってみろ」


「ここですか?」


 リオナが顎で示した岩の下を掘ってみる。と、


「あ! 〝()(かわ)しの球〟がありました!」


 使うと一定時間味方全体の回避率が上がるマジックアイテム。

 街の道具屋ではなかなかお目にかかれない。


「次は――そこだな。地面の色が周りと微妙に違ってる所だ」


「これは……〝ちからの種〟だね! 食べると攻撃力のステータスを上げられる貴重品だ! これも高く売れるよ!」


「んで(もっ)て、そこから南南東に八歩進んだ辺りに、〝方解石〟が埋まってる」


「ありましたよーっ‼‼」


 リオナの指示で、次々とアイテムを見つけていくミラとリィ。

 あまり冒険者が立ち寄らない所為(せい)で、落ちてるアイテムが丸々残されているようだ。


 段々と楽しくなってきたミラは、


「さあ、次は何処を探しましょうっ⁉」


「そうだな……。あとは、丁度ここから真東にある岩の下に隠しレバーがあるが、それを横に倒し――」


「はいっ!」


「――ちゃならねえ。そいつはトラップで、レバーを縦に倒すのが正解だ」


「先に言ってもらえますかっ⁉ 危うくローストウサギになるところでしたよっ⁉」


「先に言ったぜ」


 天井のトラップから大量に現れたファイアリザードを瞬殺し、肩で息をしながらミラが叫んだ。


 それから、リオナの言う通り正しい方向にレバーを倒すと、壁の一部が反転し、現れた宝箱から〝星の欠片(かけら)〟が入手できた。

 単なる換金アイテムだが、レアリティはかなり高い。


「わぁ~! こんなに大きな星の欠片! リィさん、これもお願いしますね!」


「あいよ、任された!」


 膨らんだバックパックを満足そうに抱えながら、その中にまた一つお宝を追加する。

 彼女にとってもこれ程の大漁は珍しいのか、「うへへへ……」と不気味な笑い声を上げていた。


 ざっと辺りを見渡したリオナは、


「――よし、大体取り終えたな。あんまり取り過ぎても動きが鈍るだけだし、そろそろボスのいる第10層に向かおうかッ!」


「ええ、いよいよボス戦ですね! 腕が鳴りますっ!」


「アタイは戦えないけど、精一杯お姉さん達を応援するよ!」


「ふふ、ありがとうございます! リオナさん、作戦はどうなさいますか?」


「ふむ……正面突破・猪突(ちょとつ)猛進・勇猛果敢。どれが好みだ?」


「どれも変わらないじゃないですか……。要するに、力押しってことですね……」


「そうとも言う」


「そうとしか言いません! ……まあ、強いボスではありませんし、それでもいいんですけど……」


 目に付くアイテムを一通り拾い終えたことを確認すると、一同は力なく項垂(うなだ)れるミラの溜息(ためいき)だけを後に残して、第8層のアイテム部屋を後にした。


 次の層を抜ければ、遂に彼女達の目指す第10層――ボスモンスターのフロアである。

 そこに、どんな凶悪で凶暴で強力なモンスターが待ち受けているのか、彼女達はまだ知る由もなかった――


(――と言いたいトコなんだが、既にゲームで知ってんだよなあ……)



要は唯の「宝探し」をカッコよく言いたかっただけ

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