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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第一章 「その異世界人、買い物につき」
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第一章 第二節 ~ だってその方がエロいではないですか ~


     ☯


「ふ~ん? 仕立て屋、ねえ……」


 どうやら、この店では客の注文に合わせて衣服を一から作っているらしい。

 服などユ○クロとかG○とかの既製品しか買ったことのないリオナは、いまいちオーダーメイドにするという考えがわからなかった。


「だが、一から作るとなると、それ相応の時間がかかるんじゃねえのか?」


「そんなことはありません。リリアンさんの仕事は、私が知るどんな仕立て屋より早くて安くて上手いのです! スキル付与もできますし、何より見た目がとっても可愛らしいのですよ!」


 何処(どこ)かの牛丼チェーン店のような宣伝文句で称賛するミラ。

 余程この店を気に入っているらしい。


「……そう言うわりには、客がオレ達以外に見当たらねえが? 今だって呑気(のんき)(よだれ)垂らして寝てたわけだしな」


「あぅ、そうなんですよねえ……。リリアンさん、仕事は大変丁寧で信頼もできるお方なのですが、商売っ気が皆無でして……」


 ウサ耳を萎れさせるミラに、リリアンが反論した。


「別にわたくしは商売をする気が全くないわけではありません。ただわたくしの作る服を思う存分着古していただく――それがわたくしの一番の願いであるというだけなのです!」


 ズドオォォオン!という効果音が聞こえてきそうな程、完璧な(たたず)まいで言い放つリリアン。

 正しく仕立て屋の鑑とも言うべき崇高な志だ。


「リリアンさん……」


 ミラが感激に赤い瞳を潤ませていると、リリアンはニコっと慈愛の笑みを浮かべ、


「あとあと! 毎日三食たっぷり食べることができて綺麗(きれい)なモデルに思う存分触ることができて好きな時に好きなだけベッドで惰眠を貪れるようなそんなささやかな幸せがあってくれると(なお)良いのですけどっ‼‼」


「リ、リリアンさん……」


「ハハ! 欲に素直でいいじゃねえか!」


 溜息(ためいき)()いたミラが、一つ(せき)払いを挟んでから本題に入った。


「コホン……それで、リリアンさん。今日はこちらのリオナさんの服を仕立てて(もら)いたくてお伺いしたのですが」


「はい何でも注文しちゃってください! 丈夫な普段着から快適な寝間着からデートの勝負服に舞踏会用のドレスまで何でもお作り致しましょう!」


「……では、冒険者用にスキル付与の()された戦闘服を縫って頂けますか?」


「承りました!」


 リリアンが作業台の引き出しから何かの用紙を取り出した。

 そこにペンを走らせつつ、


「形は如何(いかが)致しましょう? シャツやスカートやワンピースは勿論(もちろん)のこと(よろい)のアンダーウェアに魔術師用のローブまで幅広く扱っておりますが」


()(かく)動きやすいヤツを頼む。オレは近接戦メインの戦士なんでね」


「でしたら上はシャツに下はショートパンツかスカートがよろしいでしょう。好みはありますか?」


(スカートとか穿()いたことねえからな……好みも何もあったもんじゃねえ)


「……よくわからねえから、適当に頼む」


「ちょっとリオナさん! ファッションは個性の表現ですよ! 少しはご自分の個性を大事にしてですね……」


「知るか。ウサ耳童顔貧乳ロリと属性もりもりのオマエに言われたくねえ」


(ほとん)どネガティブ表現じゃないですかっ⁉」


「大丈夫よミラちゃん! ミラちゃんはまだまだ成長途中なだけだから!」


 元気付けるように笑みを浮かべるリリアンの豊満な胸部がたゆんたゆんと揺れるのを見て、ミラは顔を青ざめさせてしまった。

 部屋の(すみ)(うずくま)り、床に〝の〟の字を書くという今時わかりやす過ぎるいじけ方で、「うぅ、どうせ……どうせ私なんか……」とうわ言のように(つぶや)いている。


 彼女の名誉の為に訂正しておくが、彼女は決して貧乳なわけではない。

 ただ、この場にいる女性陣の平均バストサイズが、世の中の平均よりやや大きめであったというだけの話である。

 それに、彼女が成長途中であるというのは事実であり、希望がないわけでは……


「それよか、本題に戻ろうぜ」


「そうですね」


 旋毛(つむじ)を曲げるミラを余所(よそ)に、二人はリオナの服の話に戻った。


「正直なところお客様は素質が素晴らしいですから何をお召しになってもお似合いになられると思います。強いて言うならばその抜群のプロポーションを()かす為に肌の露出を多めにすることをオススメしますよ!」


「肌を露出させる、か……。前々から思ってたが、どうして女の服ってのはどいつもこいつも露出度高めなんだ? 戦闘には向かねえだろ?」


 リオナが疑問を口にすると、リリアンはフッと不敵な笑みを浮かべ、


「だってその方がエロいではないですか」


「同感だ」


 恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべるリリアンに、即答するリオナ。

 互いに熱の(こも)った瞳で見つめ合いながら、固い握手を結ぶ。

 何やら、気の合う同志を見つけた様子だ。


「わあった! そういうことなら、テメェが適当にプロデュースしてくれ。戦いに支障がなけりゃ、何でもいい」


「かしこまりました! 必ずや最高の衣服を仕立ててみせます!」


 優雅に一礼した彼女は、部屋の隅に置かれていた様々な色の布の束を見つめながら、作る衣装の構想をブツブツと呟き始めた。


「金髪が映えるように色はシンプルめに……かなり鍛えてそうな人だから(へそ)出しルックとか良いかも……動きは激しいはずだからスカートにするならスパッツも用意して……」


 仕事の世界に入り込むリリアンの目は、真剣そのものだった。

 邪魔しては悪いし、これ以上何かを手伝うこともできないので、リオナは武器屋や道具屋などの別の店を回ることにした。


「そんじゃ、あとはオマエさんの好きに任せるから、存分に想像と空想と妄想を膨らませておいてくれ。オイ、行くぞミラ」


 それだけ言葉を残すと、リオナは未だ隅っこで縮こまっていたミラのウサ耳を(つか)んで、店を後にした。



だってその方がエロいではないですか(念押し)

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