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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第一巻 第三章 「その異世界人、好戦につき」
29/112

第三章 第十一節 ~ 決勝戦、開幕 ~


     ☯


 その後は特に苦戦することもなく、リオナは順調に大会を勝ち進んでいった。

 対戦相手のレベルも、大体が20前後、ちょっとした強敵で30弱といったところだった。

 相変わらず攻撃力の低さは目立ったが、ゲームで数々の強敵を打ち破ってきたリオナには、さほど障害にならない。(むし)ろ、丁度良いハンデだとさえ思っていた。


 ハイドルクセンの方も、絶対王者の名に恥じぬ戦いぶりを見せていた。

 彼の方はちょっと強めの相手と当たるようにトーナメントが組まれていたが、彼の進撃を止められる程の者はいなかった。

 余裕の表情で、一つまた一つと駒を進めていく。


 ――そして、


「……さあ、これまでたくさんのドラマと興奮を生み出してきた第六十三回チャンピオンズカップも、いよいよ最後の一試合となってしまいました。名残惜しいこととは存じますが、皆様、どうか盛大な拍手で出場選手をお迎えください」


 会場のボルテージは最高潮だった。

 観客が(そろ)って推しの選手の名を叫び、試合が始まるのを今か今かと待っている。

 決勝戦だけあって、その雰囲気はこれまでの試合とは全く違っていた。


 盛り上がっていながらも、空気は何処(どこ)か重く、厳かだ。

 凄まじい重圧が会場を支配し、並の者ならその雰囲気に当てられて気を失ってしまいそう。

 そんな重苦しい気配の中、司会が僅かに緊張した声で、決勝戦の舞台に上がる選手の名をコールした。


「東側コーナー――レベルは初期レベルのレベル1にして、チャンピオンズカップ初参加! 果たして、彼女の決勝戦進出を一体誰が予想できたでしょうか⁉ 有り余るレベル差を、卓越した体術と駆け引きにより(ことごと)く覆してきた駆け出しの英雄ッ! その快進撃は、この闘技場の頂点に届くのかッ⁉ 〝アンネームドルーキー〟リオナ選手ッ‼‼」


 東側のゲートから、金髪金眼の少女が姿を現す。

 神々しいまでのその姿は、今や期待と羨望の視線を一身に集めている。

 それら全てを真正面から受け止め、リオナは堂々とリング上の開始線へ歩を進めた。


「リオナちゃ~~んっ‼ ファイトだよぉーっ! 君なら頂点も夢じゃないっ‼‼」


「〝幻影〟は手強いが、女性には甘い! 君のテクでメロメロにしたれーっ‼」


「笑顔! 笑顔忘れないで~っ‼」


 様々な声援が観客席から飛んで来る。

 どちらかと言うと、やはりアイドルでも見ているかのような応援が多かったが、燃えることに変わりはない。

 拳を打ち鳴らし、獣のような大きな咆哮(ほうこう)を上げる。


「ッしゃあッ‼ やったらぁッ!」


 歓声に沸いていた観客席が、一瞬静けさを取り戻す。

 リオナの対戦相手の名がコールされた。


「西側コーナー――これまで六度の防衛に成功してきた、チャンピオンズカップ創設以来最強と(うた)われる現王者! 優しげな笑顔の裏に隠された貪欲なまでの勝利と女性への執念は、正に平原を駆け巡る(おおかみ)が如く! 今日も彼の隣に狙った獲物の亡骸が積み上がるのか⁉ 第五十六回ないし第六十二回チャンピオンズカップ覇者――〝幻影〟ハイドルクセン選手ッ‼‼」


 リオナの向かい側、西側のゲートから、輝く(よろい)に身を包んだ長身痩躯(そうく)の青年が歩いて来る。

 その顔にはいつもの人当たりの良い笑顔が浮かべられているが、双眸(そうぼう)の奥にだけは、肉食獣の鋭い光が宿っていた。

 こちらも、リオナに負けず劣らず盛大な声援が送られる。


「ひゅ~っ! 今回も期待してるぜ、〝幻影〟さんよお!」


「相手が女だからって、油断すんじゃねーぞっ!」


「負けんなよー! ちっくしょ~っ‼‼」


 いつもは手を振ったりウインクしたりして観客の声援に応えるハイドルクセンだが、今回だけは、リオナを真っ直ぐ見つめたままリングに上がって来た。

 それだけ彼も本気だという証だ。


 両者が試合場の中心から僅かに間合いを開け、(にら)み合う。

 どちらも並々ならぬ威圧感と意志の強さだが、それだけで目を()らしてしまうような弱者ではない。

 互いに互いの視線を受け止め、不敵な笑みを浮かべる。


「……そういや、まだ名乗ってすらいなかったな。オレはリオナだ。待ってたぜ……テメェと戦える、この決勝戦をなッ!」


「そうか。……実は、私も楽しみにしていたよ。君は女性としてもとても魅力的だが……一人の戦士として、私は君に興味がある。レベル1にして、そこまでの強さを一体何処で手にしたのか、存分に確かめさせてもらおう!」


 会場が再び静寂に満ちる。

 誰もが固唾を飲んで見守る中、司会のよく通る声が、闘技場全体に響き渡った。


「それでは、参りましょう! 泣いても笑っても、これが最後の戦い! お二方、どうか悔いの残らない戦いをッ‼‼ 第六十三回チャンピオンズカップ決勝戦、リオナ選手VSハイドルクセン選手! レディィィィィイイイイ――――、ファイッ‼‼‼‼」


「さあ、祭といこうか――〝幻影〟ッ‼‼」


「ああ、共に踊ろう――運命の女性(ひと)よッ‼‼」


 闘技場の頂点を決める戦いが、幕を開けた。



決勝戦って、なんであんなに重苦しいんでしょうね?

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