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☯︎Heaven's Walker✡︎  作者: 御丹斬リ丸
《Creature_Buster_X》
6/10

✡︎御飛の長男

ほんへ


御飛家の朝は早い。

閑静な住宅街の一角に家を構える御飛家は、近代まで続く名家の家系である。

1000年以上前、天下分けめの戦いの功績により御飛の名を授かったとされる。

いくら名家といえど1000年の年月は長くその間に血は途絶え俺、御飛無月(みとび むつき)と両親、それからもう一人親戚にいるらしいという話を聞いたくらいだ。

名家というだけで資産もない家も小さい、力もない。そういうのも多いと聞く中、代々所有する広大な屋敷があるだけでも恵まれている方だ。

ただ、資金面の方は芳しくない。

そのために、まだ朝日も登らない朝から俺は家の掃除や洗濯、父のために風呂を沸かし、両親のために朝食と仕事先に持っていくお弁当を用意しなくてはいけないのだ。


石造りの西洋風の屋敷とは違って代々所有しているこの日本屋敷はとにかく防音性が低い。

だから、いくら急いでとは言っても足音をドタバタと走ろうものなら眠りが浅い父を起こしてしまう。

正式なこの家の住民だというのに後ろ暗いことがあるようなすり足差し足忍び足で忍者のように広大な屋敷を走るのだ!

廊下を掃除してくれるルンバ先輩に感謝の挨拶をして庭に出る。

納屋から取り出した栽庭用の大きなハサミを使って伸びすぎた松の枝を落として行く。

誰かに師事したことはないから、自分で庭の模様替えを行いことは出来ないけれど、幾度となく繰り返してきた今、状態を維持することくらいはできる。

30もの松の木を裁庭し終わる頃には真っ暗だった空は紫蘇を絞ったような青紫色へと変わっていた。

汗をかいたまま朝食を作るわけには行かない。洗面所で冷たい水で顔を洗いスッキリしていると、朝の始まりを知らせるように家の敷地内からカラス達が飛び去って行った。


お弁当もそうだが、まずは自分と両親、それと居候の為の4人分の朝食の支度をしよう。

おかって……えと、台所にたった俺は冷蔵庫から卵や肉を取り出し手際よく調理して行く。

現代になったというのにまさかのガスが通っていないこの家では、ものを調理するときは基本的に電子レンジで行う。

一応、IHコンロという文明の利器があったのだが、居候の屑……じゃなくてお父さんの友達が壊してしまって今は、ただの物置台とかしている。


右手に炎を宿しかまどの下に火を放って行く。

俺の超能力《火炎操作》で作られた炎は自然界の火とは違って能力を切るまで消えることはないし、勝手に燃え広がることもない。

やれ人を灰へ帰す爆炎の炎だとか、やれ如何なる兵器も打ち返す最強の念力だと、テレビでは超能力自慢をしているが、俺はより良い生活に使うのが一番いい方法だと思っている。ガスのようにつまみを調整せず、代金を払うことなく大量の料理をすることが出来るこの能力には感謝しか浮かんでこない。


フライパンを熱し過ぎないように調整した炎で釜を温め、肉や野菜を入れたフライパンを並べて行く。

頭上に浮かせた火の玉で明かりを確保し、蛇口で小さな虫や埃を洗い直し、まな板に並べて左手で切る。

慣れた作業なものでわざわざ見ずとも切れる。

お母さんには怒られそうだが、時間短縮のために、切り終わった野菜を遠くのフライパンに投げ入れその間に皿を洗う。


近くのコンビニで買ってきた袋入りのサラダを大皿に盛りリビングのテーブルに置く。

パンパンに食材や飲み物が詰まった冷蔵庫から作り置きのハンバーグを取り出しレンジで調理する。


痛めた野菜や肉をタレで絡めたり、鮭の切り身を焼いていると、ドタバタと足音を立てながら誰か起きてきたらしい。


次々に出来上がる料理を皿に並べ水差しやコップとともにテーブルに配置して行く。

香ばしい匂い、柔らかな甘い香りが台所を満たして行く。きょうもなかなかいい出来だ。


「おーと、ボクが一番乗りみたいだねえ?」


たぷたぷと腹の肉を揺らしながらやって来たのは、居候の男だった。

もし手元に7つ集めると願いが叶う球があるなら、こいつが出て行ってくれることを頼む。そのくらい俺としては嫌だと思っているし態度に出しているのだが、この居候、なかなか図太い精神をしているらしい。お父さんが大切な友達だからと拾ってきたこの根絶やし草は働かず一日中家でゴロゴロし、毎食、あれがいいこれがいいとゴネてくるのだ。

一応、客人という立場があるものだからできる限り叶えているが、居座って食事まで口を出すなら家事の少しくらい手伝ってくれてもいいのに。


どういう事情なのか、詳しくは知らないが、要は家の事情というやつで学校に通ったことがない俺は、朝から始まる家事が終われば両親とともに職場に向かい超能力を訓練したり仕事を手伝ったりするわけだ。

学校生活というやつを、アニメやドラマで見るわけだがあまり楽しそうと思うものでもなかったので、一度も両親に不満を言ったことはない。

優しい母に家族思いの父、広い家に役に立つ超能力。とある居候以外には不満のないこの恵まれた生活を俺は、楽しんでいる。



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