出会い
暖かい目でご覧ください
きらきらとしたシャンデリア高い高い天井、足元に目を向けると真っ赤な絨毯が一面を覆い尽くす。一歩踏み出せば、靴が埋もれてしまいそうなほどフサフサな絨毯は、一目で高級なのだとわかる。そこには、身長180センチをこえる長身の男が二人立っていた。一人は50代ほどの品のよいグレーのスーツを着こなしている。今流行のイケオジという部類に入るであろうカフェの片隅でコーヒーを片手に英字新聞を読んで居ても様になりそうな美丈夫だ。そのとなりには、彼を30才ほど若返らせた紺のスーツを身に纏った男性が立っていた。紺のスーツ、青ネクタイ、ライトブルーのシャツ、紺のベストというモノトーンでまとめられており、無機質な表情の彼にとてもよく似合っている。そこら辺にいるモデルや俳優より顔が整っている彼らは普通なら女性に絶え間なく声をかけられたことだろう。とはいえ、若干眉を寄せている彼、京本耕作は不機嫌ですオーラを隠すことなく全身で表している。そのせいか彼らに話しかける女性がいなかったのは幸いなのかどうなのか。
京本は父とともにホテルのロビーに来ていた。というのも、婚約者というものに会うためなのだが。
「なあ親父、聞いてもいいか?」
耕作は不機嫌そうに口を開いた。そして、神妙に父に問いかけた。
「なんだ?」
「何で俺に婚約者がいるか聞いてもいいか?」
父、雄作は急に黙り込んだ。
「えっと?何だ?聞いたら不味い感じなのか?」
「実はな、酔った勢いで結んだ。」
まるでテヘペロというかのように雄作はいった。恐らく、いや、確実に人目がなかったら耕作は叫んでいただろう。
クソ親父ぃぃ、と。
耕作の眉間にさらに深く溝ができたことだろう。それを父が気にしているかはさておき。
しばらくして、隣から雄作が消えた。慌てて周囲を見渡すとロビーの玄関に雄作はいた。雄作の前には濃いグレーのスーツの男と桃色の振り袖を着た女がいた。例のやつだな、と直感した耕作は億劫に思いながらも父のところへ向かった。濃いグレーのスーツを着た父と同じほどの身長の男は、賢そうな眼鏡の男だった。大学の図書館で朝から晩までずっと本を読んでいそうな大人しそうな男だった。…見た目は。警察官として培った勘なのかなんなのかわからないが、なんとなく敵に回してはいけない相手だととっさに思った。そして、その男は柔らかい声で耕作に名乗った。
「東城睦月ともうします。こちらは娘の彌生です。」
桃色の振り袖に身を包んだ耕平の肩ほどしかない小柄な彼女は耕作の目をじっと吸い込まれそうなほど透明な目で見上げた。うっすらとだけファンデーションを塗り、紅を引いた彼女はこちらをみて微笑んだ。
「はじめまして、彌生です。」
「彌生お嬢ちゃん、私は昔、君が赤ん坊の頃にあったことがあるんだって覚えていないかな。私は、京本雄作、こっちは息子の耕作だよ。よろしくね。まあこれから長い付き合いになるんだ、そんなかしこまらないでくれ。」
「耕作です。よろしくお願いします。」
「さて、立ち話もなんだし、中へ入ろうか。席を予約してあるんだ。」
そう雄作が切り出し、彼らはホテル1階のレストランに入っていった。
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