変わらない変われない変わろうともおもってない
歩いて向かうこと数分
昨日とは違って、校長と会うようなこともなく、無事学校の前に着くことができた。
『少し警戒しすぎだったかな?』
『相手《校長》の目的が読めない……だったのよね?警戒しても仕方ないとは思うわ』
『それにしても、ユス…いえニノさん、結構目立ってるっすね。ああ、美人だからっすか!つまり、同調した妖精ははもっと美人のに違いないーつまり、私が美しいってことに……アイタッ』
『バカなこと言うなよ。多分服装だろ。周りみんな制服だし。一人だけ違うし、しかもドレスって浮くに決まってるじゃん。』
『ユストは昨日も学校に行ったのよね?その時は何もなかったの?』
『ああ、そういえば昨日はレージェが魔法で制服を構築してくれたっすね。』
『そうなのね。聖属性って羨ましいわね』
『闇属性にはできないの?』
『裸にすることならできるっすけど、やるっすか?』
『ごめんなさい、なんでもないです。』
ユストはいま、校長室に向かっているが、生徒や、先生からも視線を集めていた。
しかし、態度があまりにも堂々としていて(妖精と話しているせいで、あまり他のことを気にしていないというだけだが)聞いてみるのもためらわれた。
そんなこんなで、校長室に着いた時、
『ここって校長室よね?』
『え?そうだけど。』
『何かあるっすか?』
『いえ、ただ、この扉は魔法防御金属が組み込まれているわ。いや、あまり気にしなくていいはずよ。ただ、他の扉にはないし、久し振りに見たからびっくりしただけ。』
『まあ、そう言うことなら気にしないでおこう』
『では、作戦通り行くっすよ』
コンコン、ノックの後
「失礼しま〜す」
『もうちょっと上品に、それでいて可愛らしく挨拶するっす!』
『うるさいな〜もう。』
間の抜けた挨拶に、サティが突っ込む。
「ああ、私ならいるが……?見かけない顔だな。」
「はい。えっと、昨日はイノがお世話になりました。」
ユストの妹と言うことはイノの姉である。イノというのはとっさに言った偽名で、相手にもばれているが、一応自然的な流れになるためこう行っておく。
「随分と綺麗なお方ですなあ。イノさんのお姉さん、と言ったところですか?お名前を伺っても?」
「はい、ユストの妹、ニノと申します」
「それは、偽名ですかな。」
「……まあ、はい。イノがそう呼んでもらっていたそうなので」
「ふっ、了承した。それで、わざわざ足を運ばれたのはお礼を言いにきただけではあるまい。どのようなご用件で?」
自ら切り出すこともなく、相手に促してもらえたので、相手の言葉に従い目的を伝えることにした。
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(ふう。なかなかに大変なものだな。)
私こと、エミーレは、朝早くから学校に来て書類の処理と雑務を行なっていた。
普段は、かなり多い校長の仕事の一部《大半ともいう》をヘレネに任していたのだが、最近はユストや昨日きた妹について調査させているため、仕事が滞りがちになりかけていた。
そこで、溜まりに溜まった仕事を片付けるべく、エミーレにとっては珍しく朝早くから働いているのであった。
今はちょうど仕事がひと段落したところだ。ようやく終わる目処が立ってきた。ヘレネはユストを調査するため、まだ寮にいる。直接の接触は避けるよう伝えてはいるが、どうなっているだろうか……
コンコン
突如、ノックの音が響く。おや、こんな朝から訪ねてくるのはヘレネくらいだがノックはしない……あ、まさかユストか?
「失礼しま〜す」
いや、女の声だな。ユストではなさそうだ。
「ああ、私ならいるが?」
そして、(なぜかちょっと間が空いてから)ドアが開いた。そこにいたのは、なかなかの美人さんだった。
「?見かけない顔だな。」
「はい。えっと、昨日はイノがお世話になりました。」
ユストの関係者、いや……家族だろうか?イノと同じく、ユストの面影が見える。王族であるかもしれないので言葉遣いを改めておく。
「随分と綺麗なお方ですなあ。イノさんのお姉さん、と言ったところですか?お名前を伺っても?」
「はい、ユストの妹、ニノと申します」
イノは確か偽名だったはずだ。それを少しもじっただけのような名前、つまり
「それは、偽名ですかな?」
「……まあ、はい。イノがそう呼んでもらっていたそうなので」
「ふっ、了承した。それで、わざわざ足を運ばれたのはお礼を言いにきただけではあるまい。どのようなご用件で?」
なんとなく心の中で想像できるが、聞いておく。
「はい、じつはユストに変わって授業を受けさせていただきたく……」
「まあ、そのような気がしてました。いいでしょう。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
昨日のイクと来た理由は大体一緒だろう。大方、学校に対する好奇心か。しかし、ニノさんは15歳にまだなっていないのであろうか?15歳になれば第一貴族学校の方に入るはずだが……なかなかに兄であるユストが大変そうだ。そういえば、イノと違って、ニノさんはドレスを着ているが……
「確か、昨日来られたイノさんは制服を着ていられたのだが、ニノさんは制服はお持ちで?」
「あっ、い、いえ。あ、必要でしたか?」
「いえ、こちらで準備しましょう。」
そこで、ガチャっとドアが開く。ちょうどいいタイミングで来やがったな。
「ヘレネ。ニノさんに会う制服を持ってきてくれ。」
「きて早々ですか……はい、了解しました。ニノさん、失礼します。」
そして、ニノさんの背丈を確認するヘレネ。大体、ヘレネより高く、エミーレより低い感じだ。若い同性のニノに負けることに悔しそうな表情を浮かべるヘレネ。
「この背丈なら、私と同じ『中』のサイズも入るでしょう。」
「器が小さいのお。ではニノさん。こちらにおかけを。お茶をご用意します。」
「ありがとうございます。」
「では少々お待ちください。」
ヘレネがとってくる間少し待つ。
「校長。持ってきました。ニノさんどうぞ。」
「あ、あの、どこで着替えたらいいですか?」
「む?ここでもいいぞ?」
「あ、あの……それはちょっと……」
「校長!デリカシーがなさ過ぎですよ。更衣室があります。どうぞこちらへ。」
どことなくニノが慌てたように見えたのは気のせいであろうか?
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