イクさん 語る
た、他視点に挑戦したかったんだ。
そ、それだけさ…
イクさん視点です。
どうも、イクです。
こう見えて、異世界に来ています。
正直、何をいってんだか、自分でもわかりません。
ただ、元の世界には、あんまり未練はありません。
なぜなら、唯一の心残りになったであろう、優しいお姉ちゃんと、一人だけのお友達とは、一緒に異世界にこれたのです。
しかし、異世界にきて、突然、二人とは離れ離れになってしまいました。
何も知らない、お金もない、知り合いもいない世界で、正真正銘の一人ぼっちになってしまいました。
そして、市場で泣いていた私に、声をかけてくれたのが、ユストさん(女)です。
ユストさんは、突然泣き出してしまった私を、慰めてくれただけではなく、お腹が空いてしまった私に、美味しいお肉を買ってくれました。
さらには、怖い大人の人たちから追われている私と、一緒に逃げてくれたり、宿をとってくれたりしました。
ユストさんには、感謝がつきません。
さらに、ユストさんは、3匹の妖精さんとともに過ごしていました。
キラキラと飛ぶ妖精さんを見たときは、ほんとうに異世界に来たんだと、今更ながら思ってしまいました。
しかし、今、私は不機嫌です。
朝、起きたら、ユストさんが男になっていました。
妖精さんの力とかで、そうなっているのだとか。
最初はびっくりしたけど、私のことも知ってるし、私のことを守ってくれと頼まれているらしいので、疑ったりはしません。
しかし、男です。
私は、男の人が嫌いです。
異世界の男の人は、特に信用できません。
こうなったのは、異世界にきてからなんですが……、いえ、思い出したくもありません。
しかし、ユストさんには、昨日のご恩もありますし、感謝するべきであり、頼れる人が他にいないのも事実です。
けど、急に男になった、ユストさんも悪いのです。
ついつい、喋り方がきつくなってしまったかもしれないけど、見逃して欲しいところです。
変なことを口走ってしまいましたが、ユストさんは、嫌がった、困ったそぶりを見せずに、「まかしておけ」と言ってくれました。
これだから男は…、と思いましたが、安心してしまった自分がいたのも事実です。
しかし、言ってることは、よく分からないし、あまり信じられません。
ユストさんだけに、騙すことはないと思いますが、疑ってしまうのは、仕方ないと思うのです。
私だって、女の子です。小さい頃は、ちっちゃくてかわいい妖精さんに憧れたりもしましたが、まさか異世界にきて、自分がなってしまうとは……、人生わからないことです。
戻れる……ということだったので、自分の追われている状況もありますし、お願いすることにしました。
「フェアリーチャーム」
ユストさんが唱えると、私の体が光り始めました。
眩しくて、目を閉じてしまいましたが、嫌な感じではありません。
……光が収まって、目を開けると、
「レージェ!成功か!?」
「はい!成功しましたね。」
「すごくかわいいです!よろしくお願いしますね」
妖精になった私がいました。
変わっていることといえば、長い髪の毛が白くなったことと、体が小さくなったこと、あと飛んでいることでしょうか。多分、他の妖精さんと同じように、羽も生えているのでしょう。
あと、すっごく心地よいです。なんと言えばしょう、心が優しく包まれている感じがします。
「うう、眩しいの……。どうしたの、ユスト?」
「ああ、新しい妖精だよ、アンナ。」
もう一人の寝ていた妖精さんが起き上がりました。
赤い妖精さんです。
確か、昨日は、私を追いかけている存在のことを、教えてくれた(らしい)妖精さんです。
「あれ?イクちゃんが妖精に見える。」
「たしかにイクだぞ、アンナ。レージェと妖精化魔法を掛けたんだ。」
「すごいの!無属性の妖精は久しぶりに見たの!」
「え?無属性?」
なんだか、私を置いて話が進んでいきます。
どうやら私は無属性らしいです。よくわからないです。
「そうですよ、ユストさん。イクちゃんは、たしかに無属性。高位の無属性の妖精はとっても珍しいんですよ。」
「へえ。じゃあサリー、どんな魔法が使えるようになるんだ?」
「契約したらですが……、鑑定魔法とか、通話魔法とかがありますよ。」
「す、すげー……、けど、」
どうやら、けいやく(?)というのをすると、ユストさんは魔法が使えるようになるらしいです。
この世界には、魔法があるのですね。
「い、イク。契約を頼みたいんだけど、いい?」
少し前の私だったら、契約とは何か、契約して、悪いことがあるのか、いいことがあるのかなどを問い詰めたかもしれません。
しかし、今の私は、心地よさから逃れることができず、ここで断ると、この心地よさが逃げていく気がして、つい、
「は、はい。大丈夫です。」
と、答えてしまいました。
すると、私の、体の一部が(あとで、私の妖精の体を構築している魔力の一部だと知りました。)ユストさんに、流れていく感じがして、ユストさんと何かでつながったような感触がありました。(これも、あとで経路がつながったとわかりました。)
しかし、後悔はしていません。
この心地よさが、気持ちいいのですから。
そんな時、アンナさんが口を挟みました。
「ユスト、そういえば学校は?」
「あ、やべ!」
こうして、私の妖精生活が始まりました。
ユストの心地よさが、もはやチートな件。
ず、ずるい。
うらやま




