イク2 いい人
学園編って、学園はいつ始まるんだ〜
あ、あと二編ほど、あとです…
『パーーーーン』
「ユスト!王都の憲兵隊がイクちゃんを探しているの!いま、後ろの通りで、聞き込みをしてるの!!」
「まじかっ!?」
「っわ!」
アンナからの知らせを聞いて、急に俺が叫んだのと、可愛い声で違和感ありまくる発言をしたため、イクがびっくりしてしまったが、とりあえず、イクにどうしたいか聞こう。
「イクちゃんを探している人がいるらしいけど、どうする?」
「っ!それって」
「いや、お姉ちゃんとかではなさそう、王都の人たち。」
「そんなっ、もう…」
「逃げるか、話し合うか、どっち?」
「……!」
「そうか、よし、なら。」
イクが話し合うことに、拒絶して首を振ったため、逃げることにする。
国の公共の憲兵隊に敵対する、つまり、バレたら犯罪だが、不思議と恐怖はなかった。
今あるのは、目の前の女の子を守りたいという気持ちだけ。
よって、
「サリー!宿に行こう!あと何分かかる?」
「たぶん五分ほどかと…」
「わかった、案内頼む。」
イクを背負い、走って逃げることにした。
「ユストさん!全力で走ってください!疲労回復魔法をかけます!」
「ありがとう!」
こうして、イクを背負い、通りの人をかき分けながら走り、3分で目的の宿に着いた。
「おばあちゃん!一泊、二人部屋頼む。」
「あらあら、綺麗なお嬢ちゃんねえ。…はい、銀貨二枚になるよ。夕食はいつ食べる?」
「わかんない。ありがとう、おばあちゃん。」
「はいはい、いつでも食べに来なさいな。」
優しいおばあちゃんに部屋の鍵をもらい、二階の二人部屋に入る。
さすが、サリーが探してくれただけはある。「優しい老夫婦が経営していて、周りは治安が良く、値段も高くなく、いい宿です、ご主人様」と、言っていただけはある。
着いて、まだ混乱が落ち着かないイクをベットに座らせ、自分は椅子に腰掛ける。
そのまま、向かい合って……伝えなければならないことを言う。
「サリー、いいか?」
「ええ。イクさんならば、大丈夫でしょう。」
「ありがとう。イク、伝えなければならないことが二つある。」
「う、うん。」
「一つ目は、」
そこまで言ったところで、妖精三人に姿を見せるように頼む。
すると、イクが驚いた顔をした。まあ、自分の後ろに急に現れただろうから、びっくりするだろう。
「イク、これは…」
「妖精さん!」
「なんだ、知っていたのか。」
「可愛い、さっきのは…」
「ああ、憲兵隊がいたのを教えてくれたのも、宿まで案内してくれたのも、走って疲れたのを回復してくれたのも彼女たちだ。」
「っ!!あ、ありがとう」
と、イクが急に立ち上がって、後ろにいる三人に頭を下げた。
妖精たちは、びっくりしたのか、驚いた顔をした後、照れている。
(初めて見たなあ〜、こんな顔するんだ。)
「さておき、二つ目だ。」
「う、うん。」
正直、二つ目はあまり言いたくないし、悪い知らせだ。
けど、言わなきゃいけないことだから、しっかり伝える。
「イクは、憲兵隊って言う、王都の人たちに追いかけられている。」
「けんぺいたい…?警察みたいなもの?悪い人を捕まえるひと?」
「けいさつ…が何かはわかんないけど、悪い人を捕まえたりする。それで、今、その人たちから逃げてきた、だから」
「だから…」
いいたくないが、認めたくないが、こうならざるを得ない。
「イクを隠していることがバレたら、私は捕まる。イクも自由に出歩けなくなる。」
「そんなっ!」
「僕はいいんだけど、イクが辛い思いをするかもしれない。」
「うん…」
「どうするか、考えよう。」
「……っ…」
泣き出してしまったイクを抱いて、撫でて慰める。
その時、
「おい!憲兵隊だ!白い服を着た10歳くらいの女を見なかったか!」
宿の入り口から叫び声が聞こえた。
腕の中のイクが、ビクンと震える。
とうとう、この宿にも着てしまった。ここは逃げるしか…
「おや、この子は、通りを通って向こうへ行ったよ」
「そうか、情報感謝する。」
耳をすますと、そんな声が聞こえてきた。
おばあちゃん…。少し感動した。
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そのあと、再び落ち着いたイクを連れて、夕食をとるため、一階の食堂へ向かう。
料理をしているのはおじいちゃんらしい。
「わあ、おいしい!」
「そっか、嬢さんに言ってもらったら、おっちゃん、嬉しいわい。」
「はい、本当に美味しいです!」
おじいちゃんのコロッケは絶品だった。
その時、おばあちゃんが来た。思わず体が硬直する。
「あ、あの。」
「ああ、二人できた…。ふふっ、宿ではゆっくりしていくといいさ。」
「あ、ありがとうございます!」
なんていい人たちだろう。
じわってきたのは久しぶりかもしれない。
その夜、色々あったのだろう。疲れた様子だったイクは、夕食から部屋に戻ってすぐ、水浴びもせずに寝てしまった。
あ、大切なこと忘れてた。
おじいちゃんとおばあちゃんは、マジでいい人!




