夢
夢を見た。あの日の俺と兄貴だ。
そこは池袋の路地裏で夕陽が辺りを真っ赤に染めている。
兄貴の顔は黒く陰ってよく見えない。
その足元には両親の亡骸が転がっている。
2人の脳天は兄貴のブローニングによって撃ち抜かれていて、後頭部がザクロみたいに花開いている。
路地裏は無限に伸びていて、無限の右端と左端にそれぞれ俺たちは立っている。
兄貴が遥か彼方から銃を持った方の腕を振っている。
腕を振る度、こちら側まで永く伸びた兄貴の影が揺れる。
俺が手を振り返そうとした刹那、兄貴の脳天に穴が開く。
兄貴の影の頭から噴水の様に血の影が噴き出す。
次の瞬間、俺の前に執行官が立っている。
奴は影そのものだ。
その冷たい目だけがこちらからは視認できる。
影が手を伸ばした。
高重力射出装置を俺の眉間に向けている。
俺の影が血を噴く。
路地には俺、兄貴、両親が川の字に並べられている。仲良く夕陽に照らされ、後頭部をザクロにして。
俺は跳ね起きる。汗が衣服とシーツをしとどに濡らしている。
兄貴はもういない。
あの執行官の目、構えられた銃身、声。ヒトマルゴーナナ、執行完了。
これから何をすべきなのか、誰に会うべきなのかは分かっていた。
兄貴を改造した男、Dr.ハスター。
ナゴヤシティのヘキナンバイパスに居を構える非合法の生体チューナーだ。
このカリヤ・リージョンからミカワ・ラインで15分。
俺は帽子を目深に被りアジトを後にした