第九劇『時代』
剣斗「『アイオーン』…そいつが『地球』を…。」
アリス「はい。その者は私達の前で『アイオーン』と名乗りました。『アイオーン』は『黒の波紋』より生まれた『無』として存在する者なんです。そして…。」
琴花「そして?」
クロノ「奴は言った…『手始めに銀河の光を奪う』と…。」
剣斗「『光』?」
クロノ「『自分が存在する空間に光はいらない。美しいモノも、輝いているモノも、何もいらない。全てを無のままに…』と。」
剣斗「で、でも『地球』は関係なくないか?というかそもそも『アイオーン』て奴は、この時代の奴なんだろ?それが何で!」
アリス「あの者は言いました、『過去も未来もない……白は黒に、光は闇に、全ての明るさは暗さに包まれ…最後には無が全てを支配する』と…。『地球』は本当に美しい惑星です。またそこに生きづいている者達も、愛を育み、働き汗を流し、『光』ある日々を生きています。」
クロノ「愛情、友情、努力、必死、人が放つ命の輝き……そんな『光』は奴にとって、苦痛でしかないみたいなんです。そして奴は、銀河の中で最も美しい惑星『地球』に目をつけました。…奴は『地球』が一番輝きを失いつつある時代を狙い、『光』を消し去るために、あなた達のもとに行くんです。時を渡ってです…。」
剣斗「そ、それじゃ今が…『地球』が一番弱ってるってことなのか?」
クロノ「弱ってる……違います。今あなた達の時代の『地球』は、進化しようとしているんです。」
琴花「もう!全然意味が分からないんですけど!」
クロノ「『ある者』が、この未来を知り、変えるために行動しているんです。ですが、今『地球』が一番無防備な状態であることには変わりはありません。そしてその時を狙い、奴が現れるんです。」
琴花「ちょっと待って!『ある者』って誰?」
アリス「あなた方を石化させた者です。」
二人「!」
剣斗「どういうことだ?『地球』破滅を阻止するために行動してんじゃないのか?」
琴花「そうだよ!何のために石化する必要があるのさ?」
トト「全ては『地球』のためですの!」
二人「え?」
トト「少しでも『アイオーン』に『地球』の存在を気付かれないためですの!」
剣斗「それと石化に何の関係があんだよ?」
トト「『アイオーン』は今『地球』を探してるですの!ですから『地球』の存在を隠すために、生きている人達を石化したですの!」
クロノ「そうです。『アイオーン』は『光』に敏感です。より強い『光』を滅することが奴の目的です。ですから少しでも『地球』から『光』を隠す必要があったんです。『アイオーン』に気付かれないために。」
剣斗「じ、じゃあ『地球』は大丈夫なんだな?」
クロノ「いいえ、奴は必ず近いうちに『地球』に辿り着きます。『地球』が『光』を失わない限りは…。今は『ある者』が『強い力』で、『光』を抑えているに過ぎないですから。…まあ、抑えているというより、皆から『生気』という『光』を奪っていると言った方が正しいですがね。」
剣斗「う…味方なのか敵なのか分かんねえな…。」
琴花「あのさぁ、さっきから出てくる『ある者』って、一体全体、どんな奴なの?」
クロノ「…アリス様。」
アリス「構いません。」
クロノ「分かりました。……名前は『ユインシス』、この『アリスシティ』から、あなた達の時代に行き、石化をさせた張本人です。」
剣斗「つーことは…そいつも?」
クロノ「はい…『時人』です。」
剣斗「やっぱり…。」
クロノ「それに…。」
剣斗「ん?」
クロノ「…。」
剣斗「クロノ?」
クロノ「あ…。」
アリス「私の兄です。」
二人「!」
琴花「お兄さん!」
アリス「そうです…。」
(アリスの過去)
アリス「お兄様!過去にお渡りになられるというのは本当なのですか?」
ユインシス「ああ…本当だよ。」
アリス「何故なのです?…はっ!……お兄様…。」
ユインシス「アリス…心を見通すお前に隠し事は出来ないな。そうだよ、過去に行き…奴を消す。」
アリス「いけません!」
ユインシス「アリス…。」
アリス「過去や未来に干渉することは禁じ手とされているはずです!私達『時人』は、『時』を静かに見守ることを義務とされているはずです!」
ユインシス「そんなことは百も承知だよ。」
アリス「お兄様!」
ユインシス「…俺の未来が見えたんだよ。」
アリス「…『エリア』…ですか?」
ユインシス「ああ…俺の未来は…『エリア』の生みの親を助けることなんだよ。」
アリス「ま、まさか…。」
ユインシス「そうだよ…。これから行く時代は……俺達の祖先……俺達を命を懸け、生み出してくれた者の時代だよ…。」
アリス「『地球』が破壊され…それでもお諦めにならず、『地球』を救われるために、ご研究なされた…。」
ユインシス「そう……ユエだよ。」
アリス「お兄様は…『アイオーン』を討つおつもりなのですね?」
ユインシス「…ああ。」
アリス「お兄様のお気持ちは分かります。ですが…それでも!」
ユインシス「この未来は変えられないかもしれない。」
アリス「悲しいことですが、『アイオーン』は絶対的です。たとえ『時の神』であるお兄様でも…。」
ユインシス「ああ…無理かもしれない。ユエでも、手も足も出なかった相手だ。俺が過去に行き、あがいたところで、未来を変えるなんて出来ないかもしれない。だけど……『地球』……本当はもっと美しいはずなんだ。この広大な銀河の中でも、眩し過ぎるくらい輝いている惑星のはずなんだ。俺達の生みの親が愛した『地球』……俺はそれを守りたいんだよ…アリス…。」
アリス「お兄様…。」
ユインシス「この未来も悪くはないよ…。だけど、どうせなら、もっと美しい未来を望みたいんだよ。」
アリス「…ですが、お兄様がいらっしゃらなければ『時の国』は、どうなるのですか?」
ユインシス「お前がいる。それにクロノもいる。お前達がいてくれれば、『時の国』は揺るがない。」
アリス「…ユナイマはご存じなのですか?」
ユインシス「もちろんだよ。二人で決めたことだよ。」
アリス「どうしても、行かれるのですね?」
ユインシス「すまない。俺は最後まで、勝手な兄だったよな。」
アリス「最後だなんておっしゃらないで下さい!」
ユインシス「アリス…。」
アリス「必ず…必ず帰って来て下さると約束なさって下さい!」
ユインシス「……ありがとう。」
アリス「違います!」
ユインシス「ああ、分かってるよ。最後じゃない。必ずまた、新たな『時』のもとで、会おう。」
アリス「ユナイマにも…お伝え下さい。お待ちしておりますと…。」
ユインシス「…ああ。アリス……また会おうな…。」
アリス「はい、必ず…。」
(現代へ)
剣斗「ユインシス…。」
アリス「今兄は、あなた方の時代で、ユエ様とともに、『地球』をお救いになるべく、行動を起こしてらっしゃると思います。」
琴花「ユエって、どんな人なの?『オルテナ』にいるの?」
クロノ「違います。」
琴花「じゃあどこにいるの?」
クロノ「『月』です。」
琴花「はあ?『月』って…あの『月』?」
クロノ「それでは説明しましょうか。」
(ユエの説明)
剣斗「もう一人のディークがユエ?」
琴花「信じられないけど……扇くんは知ってるのかな?」
剣斗「そうだ!早く天満に知らせてやんねえと!」
クロノ「『ディーノ』さんですね。大丈夫ですよ。どうやら新たな力を得て、『月』への道を探して動いているみたいですから。」
剣斗「そうか…。それで、俺達はこれからどうすればいいんだ?」
クロノ「ボク達を信じて頂けますか?」
剣斗「まだ実感が無いから、全部は厳しいけどな、今『地球』に何かが起こってるのは確かみたいだ。」
琴花「うん。それに真雪達も頑張ってるみたいだし、私達だけのんびりしてらんないよ!」
剣斗「ああ、そのとおりだぜ!」
アリス「お二人はお強いのですね…。」
剣斗「いやぁ〜、あ、そうだ!確かここって未来の『地球』なんだよな?」
クロノ「そうですが、それが何か?」
剣斗「クロノ達の時代の過去も、『アイオーン』に『地球』が破壊されたんだよな?」
クロノ「そうなりますね…。」
剣斗「俺達は……『アイオーン』に勝てなかった…ていうことなんだな?」
クロノ「ボク達の過去では、あなた達は『アイオーン』と戦ってさえいないんです。」
琴花「な、何で?」
クロノ「何も知らず、何も気付かず、一瞬で『地球』は『アイオーン』の『無』に飲み込まれました。」
剣斗「そうか…。」
アリス「唯一『無』から逃れることが出来たのが、ユエ様だったのです。そこでユエ様は、長年を懸け、私達『時人』をお創りになられました。ご自身のお命をお懸けになって…。」
琴花「だったら今はもう、あなた達の知ってる過去じゃないんだね?」
アリス「…はい。」
琴花「それじゃ、未来は変わるかもしれないんだね。」
剣斗「ああ、絶対変わる!いや、天満と俺達なら、絶対変えられるぜ!」
クロノ「そう思ったから、あなた達を選んだんです。新たな未来を創る者達として…。」
剣斗「よし!クロノ、俺達を天満のトコに連れてってくれ!」
クロノ「その前に、あなた達には『力』を身に付けて欲しいんです。今のままじゃ、『アイオーン』どころか、奴が生み出す『無の破片』にも手が出ません。」
剣斗「何かよく分かんねえけど、強くならなきゃいけないんだな?」
クロノ「はい。」
剣斗「分かった!」
琴花「早く『力』を身に付けて、真雪達を手助けに行かなきゃ!」
クロノ「それじゃトト、後は頼むよ。」
トト「任されたですの!」
クロノ「ではアリス様。」
アリス「…お気を付けて。」
剣斗「どっか行くのか?」
クロノ「新たな戦力をね…。」
トト「さあ、行くですの!こっちですの!」
剣斗「あ、ああ…。行くぞ琴花。」
琴花「うん。」
アリス「…お兄様……どうかご無事で…。」
(天満は)
ジウ「成程な。それで『月』への道を探してると。」
サリーオ「ああ。アンタなら発動させられるだろ?」
ジウ「…。」
天満「う…。」
真雪「天くん!」
天満「ま…真雪…。…ここは…?」
ジウ「目が覚めたか小僧?」
天満「…俺は…負けたんだよな…。」
ジウ「…ああ、負けだな。」
天満「…。」
ジウ「まあ、いい負けっぷりだったがな。」
天満「え?」
アイズ「お前は確かに負けた。だが、奴の心を動かす負けっぷりだったということだ。」
サイガ「そういうこっちゃ!」
シャウト「…ここはジウの家だ。ジウに話を聞いてもらっているんだ。」
天満「そ、それじゃ!」
ジウ「力を貸すかどうかは、話を聞いてからだがな。」
ゼロ「天満くんのお陰ですよ。」
サリーオ「それで、どうなんだいジウ?」
ジウ「……少し小僧と話したいが…いいか?」
サリーオ「え?…ああ…分かった。アタシ達は外に出てるよ。」
真雪「天くん…。」
天満「大丈夫だよ。待っててくれ。」
真雪「…うん。」
(二人を残し、皆家から出る)
天満「…。」
ジウ「…。」
天満「……あ、あの…。」
ジウ「何だ?」
天満「は、話って…。」
ジウ「…。」
天満「……。」
ジウ「…お前に話しておかなければならないことがある。頼まれたことがな…。」
天満「え?頼まれたこと?」
ジウ「お前の父親…『ダイン』にだ。」
天満「父さんに?」
次回に続く