第八劇『時人』
アイズ「天満、この剣を使え。」
天満「ありがとう！よし…行くぞっ！はあぁぁぁ！『飛燕斬』！」
ジウ「ふ…。」
天満「どうだ？………はっ！」
ジウ「それだけか？」
天満「くっ！なら、『爆燕斬』！」
ジウ「ほう…『飛燕斬』を進化させた技か……だが…。」
天満「……これでも…。」
ジウ「…終わりか？」
天満「駄目か…。」
シャウト「強い…天満の攻撃を受けても、傷…いや…汚れ一つ付けられないのか…。」
サリーオ「『星の纏い』……ジウの周囲は常に『星の力』で覆われている。生半可な攻撃力じゃ、その防御壁を突き破れない。」
アイズ「何て奴だ…。」
サイガ「そいつで、『水使』の攻撃も防いだっちゅうことやな…。」
真雪「天くん……頑張って…。」
ゼロ「今のままでは無理ですね…。」
真雪「え？…じゃあどうすればいいんですか？」
ゼロ「可能性があるとすれば…。」
シャウト「『フォンス』か？」
ゼロ「ええ…ですがたとえ『フォンス』を覚醒させたとしても、可能性は薄いですね。」
真雪「どうしてですか？」
サリーオ「ジウの『星の纏い』は生半可な『力』じゃ破れない。なんせ、『叢雲』の一人、フェイの『レベル２』でも無傷なんだからね。」
真雪「あ…。」
シャウト「天満…。」
天満「はあはあはあ………く……てやぁっ！」
ジウ「ふ…どうした？もう技すら出せない程、消耗したか？」
天満「く、くそっ！」
ジウ「そら、今までの釣りだ！まだ死ぬんじゃねえぞ？『星較斬』！」
天満「ぐわぁぁぁーーーっ！」
真雪「天くんっ！」
アイズ「…強い。」
ジウ「小僧、生きてるか？」
天満「く…。」
ジウ「この程度か？お前の『力』では、もう無理だな。さて…。」
天満「はあはあはあ……どうする？このままじゃ…。」
ジウ「……『ダイン』は馬鹿だな…。」
天満「！」
ジウ「在りもしない希望にすがって命を落としやがった。全く…愚かな男だな。犬死にみたいなものだ。」
天満「……するな…。」
ジウ「ん？」
天満「馬鹿にするなっ！」
ジウ「む！」
真雪「天くん？」
ゼロ「この感じは！」
ジウ「…ふ。」
天満「父さんを馬鹿にするなっ！」
サリーオ「この光は！何て奴だ…怒りで『フォンス』を目覚めさせたのか！」
ジウ「よし…これで面白くなったな…。」
アイズ「天満…。」
サイガ「ごっつい『力』感じるで！」
ジウ「馬鹿にされたくなかったら、否定してみな。他ならぬ自らの『力』を持ってな。」
天満「これは…『力』が湧いてくる……今までとは違う『力』…。」
ゼロ「天満くんの『エリア』…見物ですね…。」
ジウ「小僧、このオレに傷一つでも付けることができれば、及第点をやるぜ。」
天満「その言葉、忘れるなよ！父さんを馬鹿にしたこと、後悔させてやる！」
ジウ「口を動かす暇があったら、さっさと来な。」
天満「俺のこの『力』…まだ上手く制御出来ない…。だけどいいんだ！一撃…一撃だけでいいから爆発してくれ！俺の『力』ぁっ！」
ジウ「それじゃ行くぜ！てめえの『力』で打ち消してみろ！『星凰斬』！」
アイズ「あの技は！」
サイガ「あ、あかん！」
真雪「天くんっ！」
天満「うおぉぉぉっっ！」
シャウト「天満の体が光って！」
サリーオ「いや、光ってるのは剣だ！」
天満「くらえぇぇぇーーーっっっ！」
（両者の力がぶつかり大爆発が起こり、皆爆風で吹き飛ぶ）
サイガ「うわぁぁぁつ！」
アイズ「くっ……ふ…ふんばれな…い…うわぁっ！」
シャウト「くっ………天満は！」
サリーオ「……あそこだ！」
真雪「天くんっ！大丈夫！しっかりして、天くんっ！」
天満「う…。」
シャウト「天満…無事か…。」
サイガ「あ、奴は？」
アイズ「後ろだ！」
ジウ「ふ…。」
ゼロ「あれだけの爆発でも無傷…ですか。」
ジウ「…最後の一撃……なかなか良かったぜ小僧…。」
アイズ「化け物め…。」
サリーオ「…はっ！ジウ、その顔！」
ゼロ「天満くんの一撃が入ってたのか…？」
ジウ「傷じゃない。」
アイズ「…ただの汚れか……くそ…。」
ジウ「…。」
サリーオ「ジウ？」
ジウ「ふ…全く…面倒な小僧を連れて来たもんだな、サリーオ。」
サリーオ「ジウ…。」
ジウ「小僧…お前の一撃…確かに届いてたぜ。及第点には程遠いがな。」
サリーオ「ジウ…アンタ……腕に…。」
ジウ「傷とまではいかないがな。…剣に『力』を集約し、衝撃の塊を放つ。『月の咆哮』……未熟だが最後の一撃はまさしくそれだった。」
サリーオ「ユエと同じ『月』の『エリア』…それが天満の『力』なんだね。」
ジウ「…話を聞こうか…。」
サリーオ「ジウ！」
ジウ「オレの家で話を聞かせろ。」
サリーオ「ああ！」
アイズ「天満…やったな。」
真雪「天くん…良かったね……でもあまり無茶しないで…。」
ジウ「『ダイン』の奴、在りもしない希望…いや、在りもしないはずだった希望をキッチリ育ててやがる。あの小僧……面白い。」
（ジウの家に行き説明。その頃剣斗達は）
剣斗「う……ここは？…琴花？琴花！」
琴花「うう……剣斗？…私達……ここどこ？」
剣斗「分かんねえ…どこなんだ？」
？「ですの！」
剣斗「ん？」
？「目が覚めたんですの？」
琴花「な、何？う…可愛い……霊神なのかな？」
？「ボクは『トト』って言いますですの。それに、ボクは霊神じゃありませんですの。」
剣斗「じゃあ何だ？」
トト「ボクは…。」
？「どうかしたかい、トト？」
トト「あ、ご主人様！帰ってきたんですの？おかえりなさいですの！」
？「ああ、ただいま。ん？あ、起きたのですね。」
剣斗「お前は！」
？「改めて自己紹介しますね。ボクは『時の神』の側近、『時人クロノ』と言います。この子は『時人形』のトトです。」
琴花「『時人形』？」
クロノ「はい。元はただの人形だったんですが、ボクのために『時の神』が命を吹き込んで下さったんです。」
トト「ですの！」
クロノ「トトはボクのかけがえのない友達です。」
トト「ご主人様…。」
剣斗「な、何かスゲエんだな…。と、ところでさ、ここはどこなんだ？」
クロノ「ああ、そうでしたね。どうぞ、ボクについてきて下さい。」
剣斗「あ、ああ。」
琴花「う、うん。」
クロノ「……いかがです？」
剣斗「な、何かスゲエんだな…。」
琴花「そのセリフ、さっきも言ったよ剣斗。」
剣斗「ほっとけ！」
琴花「でも確かに不思議なところだぁ…。」
剣斗「人形が動き回ってやがるし…。」
クロノ「ここが我ら『時人』の国『アリスシティ』です。」
剣斗「へぇ…『オルテナ』にこんなトコがあったんだな。」
クロノ「違いますよ。」
剣斗「え？」
クロノ「ここは『地球』ではありません。」
剣斗「はい？」
琴花「じ、じゃあ…どこなのさ？」
クロノ「正確には、あなた達が住んでいる『地球』では無いということです。」
琴花「どういうこと？」
クロノ「トト。」
トト「はいですの！ここは、遥か未来の『地球』と呼ばれていた星の一部なんですの！」
剣斗「一部？意味がさっぱり…。」
トト「つまり、未来の『地球』の残骸ですの！」
琴花「ち、ちょっと待った！…ていうことは…。」
クロノ「はい……そう遠くない未来…あなた達の『地球』が滅びます。」
二人「！」
クロノ「…それはある一人の者により起こされる事実なんです。」
剣斗「ま、まさか…そんなわけ…。」
琴花「そ…うだよ！何言ってんのさ！」
クロノ「信じられないのも無理ありません。ですからあなた達に来て頂いたんです。知ってもらうために。」
二人「…。」
クロノ「まずは、ボクの主『時の神』に会って下さい。全てはそれからです。」
剣斗「…ああ。」
琴花「…うん。」
剣斗「天満……一体何が起こってんだよ…。」
クロノ「……ここです。この『時の座』に我らが『時の女神アリス』様がいらっしゃいます。あ、そうそう、『アリス』様は人の心を見抜く『力』をお持ちです。気を付けて下さいね。」
二人「マジ！」
クロノ「大マジです。」
剣斗の心「気を付けろって言われてもなぁ…。おっかねえババアが出てきたらどうしよう？」
琴花の心「女神っていうんだから、綺麗な人なんだろうなぁ。ま、私も負けてはいないけどね。」
クロノの心「あの顔、何考えてんだか…。」
剣斗「……へぇ。」
琴花「……広い。」
クロノ「『アリス』様、お二人をお連れしました。」
剣斗「わぁ…めちゃ美人…スタイルもいいし…。良かったぁ…おっかねえババアが出てこなくて。」
琴花「く、悔しいけど負けたわ……何食べたらあんなボインに…。」
アリスの心「ふふ、面白い人達。」
クロノ「アリス様。」
アリス「ええ、剣斗さん、琴花さん、遥々ご足労頂き、本当に感謝しています。ありがとうございます。」
剣斗「え？ああ、そんなのいいんですよ！気にしないで下さい！アハハ！」
琴花「何鼻の下伸ばしてんだ！」
剣斗「んぐっ！」
アリス「ふふ、本当に面白い人達。」
剣斗「いやぁ〜そうっすか〜。」
琴花「懲りないのか！」
剣斗「あうっ！」
クロノ「二人とも、いいかげんにしなさい！」
トト「面白いですの！」
クロノ「トトまで……はぁ…。アリス様…。」
アリス「ええ、私の名前はアリスと申します。ここ『アリスシティ』を統括している者です。」
剣斗「あ、そうだ！あの…『地球』が滅ぶって……本当なんですか？」
アリス「残念ですが事実なのです。今のままでは『地球』の時間は破壊されてしまいます。」
琴花「でも急にそんなこと言われても信じることなんて！」
アリス「出来ないでしょう。ですが事実なのです。こちらを御覧下さい。」
剣斗「こ、この映像って…。」
琴花「何なのコレ…。」
アリス「驚かれたことでしょう。これが今の『地球』なのです。」
剣斗「これが『地球』…。」
アリス「そして…この未来は、すぐそこまで来ています。」
琴花「で、でもやっぱ信じられないよ！」
剣斗「石……俺達は石になってたよな？まさかそれって…。」
アリス「石化自体は関係ありません。ですが、全てが無関係というわけではないのです。いわば、『地球』破滅への序曲なのです。」
剣斗「誰…だよ……一体誰がそんなこと！」
アリス「実は…。」
琴花「実は？」
アリス「『時人』なのです。」
剣斗「それって！」
クロノ「そう、ボク達のことです。」
琴花「じゃあアンタ達が『地球』を！」
クロノ「勘違いするな！」
二人「！」
クロノ「『時人』といっても、ここで生まれたというだけで、ボク達とは関係ないんだ！」
アリス「クロノ。」
クロノ「はっ……す、すみません。」
アリス「確かに『地球』を手にかけたのは『時人』です。」
剣斗「一体どんな奴なんだ…？」
アリス「時空の彼方…『時の狭間』から『黒の波紋』が現れました。」
琴花「『黒の波紋』？」
アリス「銀河に漂う『負のエネルギー』のことです。それがここ『アリスシティ』に流れ着きました。この国は時間の流れが早いのです。そのせいで『黒の波紋』は凄まじい早さで成長していき、ある時それは形を保つようになりました。」
剣斗「形？」
アリス「あそこに見える『時計塔』で、それは完全な人の形を持って、存在しました。その者の名前は『アイオーン』、『暗黒の時』を統べる者です。」
次回に続く
