第四劇『計画』
天満「何を見るんだい?」
みゅう「この壁にゅ〜!」
真雪「何?……何も無いような…。」
ゼロ「いえ、ここに小さな穴があります。」
にゅう「この穴にゅ〜!」
天満「この穴が何だい?」
ゼロ「…まさか…この穴…。」
シャウト「もしかして穴の奥に………かすかにスイッチみたいなのが見えるな。」
アイズ「そのスイッチを押したのか?どうやってだ?」
にゅう「コレにゅ〜!」
サイガ「針?どこにそないなもんあったんや?」
にゅう「作ったにゅ〜!」
ゼロ「『レストピア』…ですね。」
アイズ「そうか…その『力』で、針を作ったんだな。」
にゅう「そうにゅ〜!」
サイガ「せやけど…これは気付かへんわ!にゅうがおって良かったっちゅうこっちゃな!まさかこないなトコにスイッチがあったなんてな…。」
アイズ「僕らの一年は一体…。」
天満「まあまあ、にゅうのお陰で、先に進むことができるんだ。ありがとうな、にゅう。」
にゅう「にゅ〜〜〜!」
シャウト「それでは行こうか!この階段の先に!」
にゅう「行くにゅ〜!」
天満「行こう!」
(階段を降りる)
天満「ゼロ、この先には何があるのかな?」
ゼロ「はい…恐らくは最高機密の研究資料保管庫ではないかと…。なんせ、隠し部屋にあった、さらに隠された通路なんですから。」
真雪「でも結構歩きましたよね?何処まで続いているんでしょうか?」
ゼロ「確かにもう二十分は歩きましたね。いつまで続くんでしょうかね…この階段…。」
シャウト「これは帰りは骨が折れるな…。」
サイガ「嫌やなぁ〜帰りはこれ登らなあかんのか…。」
アイズ「ん?扉があるぞ!」
天満「これは…ぐ……開かない!」
シャウト「この感じ…。」
ゼロ「『エリア』ですね…。」
天満「え?」
ゼロ「見て下さい、『フォンス』が埋め込まれています!」
シャウト「やはりか…しかし…。」
ゼロ「シャウトさんの疑問は当然ですね。」
天満「どういうことだ?」
アイズ「『エリア』は『ユエ』が編み出した技術なんだろ?その技術が、何故この扉に施されているのか…。」
サイガ「せやな…まあ、一つ分かることは、この先に『ユエ』が関わっとる何かがあるっちゅうこっちゃな。」
天満「そうか…。」
アイズ「問題は『ハクウェル研究所』で、『ユエ』は何をしていたかだ。」
ゼロ「僕達の疑問の全てが、この先にあるかもしれません。」
天満「でもどうやって扉を開けるんだ?」
ゼロ「ふむ……『フォンス』には『閉』の文字が記されていますね…。『スタンスエリア』ですか…やっかいですね…。」
アイズ「何だ、『スタンスエリア』というのは?」
ゼロ「これは、あなた方が『力』に目覚めてから、お話しするつもりでしたが、まあいいでしょう。『エリア』には、『自然の力』を集め、増幅し具現化する『ネイチャーエリア』と、『力』を固定化させて対象物の状態や状況などに影響を与えたりする『スタンスエリア』の二つがあります。ちなみに僕は『氷』ですから『ネイチャーエリア』ですね。」
天満「それで…この扉は『スタンスエリア』で……何でやっかいなんだ?」
ゼロ「『ネイチャー』と違って『スタンス』の方は、術者自身の『力』で対象物の状態を左右するものがほとんどなんです。」
シャウト「つまり扉に施された『エリア』は、施術者しか解けないのか?」
ゼロ「本来はそのはずなんですが…。」
アイズ「何か手立てがあるのか?」
ゼロ「この扉に限って…ですがね。以前にも言いましたが、本来の使用方法は、生物に『フォンス』を埋め込み、その装備者の『想いの力』を発現させることです。ですがこれは、僕の『タリスマン』のような使い方をしています。」
天満「確か…その使い方だと、『力』を少し強化してくれるだけなんだよな?」
ゼロ「はい。」
真雪「ではどうすればいいんですか?」
ゼロ「簡単です。この『フォンス』を破壊するんです。」
サイガ「んなこと出来んのか?」
ゼロ「『フォンス』は生物に埋め込んで『力』を発動させます。ですから普通なら術者を探して、解かせなくてはならないですが、先程も言いましたが、間違った使い方で、『フォンス』が直接扉に埋め込まれています。」
アイズ「そうか!『エリア』というのは『フォンス』から出る『力』…その『フォンス』の『力』を上回る『力』で破壊すれば、術は解ける!」
ゼロ「そのとおりです。」
天満「じゃあ早く壊そう!」
ゼロ「幸いにも、弱い『レベル1』のようですから、僕の『エリア』で破壊できるはずです。」
天満「じゃあゼロ、頼む!」
ゼロ「分かりました。皆さんは下がっていて下さい。近くにいると巻き込まれますよ。」
天満「わ、分かった!」
にゅう「にゅ〜!」
ゼロ「では…。」
にゅう「凄い力を感じるにゅ…。」
アイズ「『フォンス』が光ってる…。」
ゼロ「『氷の領域・氷の蒼陣』!行け!」
天満「スゲエ…。」
真雪「凄い!」
シャウト「『錬術』とはレベルが違うな…。」
アイズ「まさかこれほどのモノとはな。」
サイガ「ホンマ驚きやで…。」
にゅう「ビックリにゅ〜!」
ゼロ「ふぅ…どうやら看破したようですね。では行きましょうか。」
天満「あ、ああ。」
ゼロ「皆さんも早く、僕のレベルまで来て下さいね。」
アイズ「ふん、偉そうに…。」
天満「まあまあ。」
シャウト「この部屋……かなり広いな!」
ゼロ「保管庫…みたいですね、やはり。」
シャウト「そのようだな…。ここに我々が探している資料があるといいんだがな。」
ゼロ「…これは驚きましたねぇ…『禁忌種の実体』に『クローン理論』に『霊神解体法』……これは!」
天満「どうかしたか?」
ゼロ「『融合生命体創造計画』……『フュージョニア計画』!」
シャウト「何だと!」
天満「それって何だい?」
ゼロ「…。」
シャウト「『ユエ』の奴…。」
天満「だから何なんだ?」
ゼロ「名前の通りですよ。」
シャウト「生命体を融合させて、新たな種を創造する計画だ。」
天満「融合?」
アイズ「なるほどな…そのための手始めに『クローン実験』か…?」
サイガ「アイズ…。」
ゼロ「そのようですね。まず『クローン』を生み出し、『クローン』同士を融合させて実験をする。」
天満「な…何だって!…『ユエ』は一体何のために…。」
アイズ「く…。」
ゼロ「もう一つ…真実がありそうですね。」
真雪「もう一つの真実ですか?」
ゼロ「ええ…この研究を率先して行っていた者は誰ですか?」
シャウト「…そうか!」
アイズ「エーテル王だ……なるほどな…。」
天満「エーテル王がこの計画を進めていたのか?」
ゼロ「正確には『ユエ』さんがさせていた…エーテル王を操ってね。」
天満「それじゃあ…。」
ゼロ「データを一通り取って、用がなくなったから、今度はネオス様を操って、エーテル王を処分…。」
天満「操って…ってそんな簡単に他人を操れるんて!」
シャウト「それができるのが『ユエ』なんだ。恐らく、エーテル王は『ユエ』の口車に乗せられたんだろう。罠とは知らずにな。そしてネオスには、その復讐心を操って、自分にとって不必要になった者を一掃するよう仕向けた。散々利用したあげく、ゴミのように捨てたんだ。」
真雪「酷い…そんな…それじゃアーミアさんのこともですか?」
ゼロ「それも『ユエ』さんがさせていたんでしょうね。ほら、コレを見て下さい。」
真雪「『第一特別種能力解離法』…これは?」
アイズ「僕や天満や真雪のような、普通の生物とは違った能力を持つモノから、能力だけを取り除くことを進めた計画みたいだな。まあ、僕の場合は能力というより、世界で最初の『クローン成功例』として、エーテル王が欲したわけだがな。」
サイガ「ワイらの親は…ホンマに馬鹿やで…。こないな計画に加担しとったやなんて!」
アイズ「サイガ…。」
ゼロ「全ての計画は、この『フュージョニア計画』のための準備だったようですね。」
シャウト「そのようだな…。」
ゼロ「まだ『ユエ』さんが何をしたいのか分かりませんが、一先ず我々の目的を優先しましょう!」
天満「『銀河の架け橋』だな。」
ゼロ「いえ、その資料が残っているとは思えません。ですから先程も言ったとおり、『闇医者サリーオ』さんについての資料を探して下さい。」
アイズ「悪いが、僕は『クローン』についての資料を探させてもらう。」
サイガ「あ、待てやアイズ!」
ゼロ「やれやれ…。」
天満「いいよ、アイズの気持ちは分かるから。だから…俺達は俺達で調べよう。」
シャウト「そうだな。」
真雪「うん。」
にゅう「頑張るにゅ〜!」
ゼロ「やりますか。」
(数時間経過)
シャウト「とりあえず分かったことを話し合おうか。」
ゼロ「ふむ……どうやら皆さん…あまりいい結果では無かったようですね。」
天満「あるにはあったんだけどさ…居場所までは…。」
真雪「私もです…。」
にゅう「にゅ…。」
シャウト「ゼロはどうだ?」
ゼロ「正確な居場所…までは分かりませんが、『サリーオ』さんが住んでいた場所は掴めましたよ。」
シャウト「そうか…こちらも重大なことが分かった。」
天満「重大なこと?」
シャウト「これだ…。」
天満「『月の繁栄』?……これは?」
シャウト「中に『ユエ』が今行っていることが書いてあった。」
天満「何だって!」
シャウト「無論『ユエ』の目的の全てが書いてあるわけではないが、大まかな内容は分かるぞ。」
ゼロ「見せて頂けますか?」
シャウト「ああ。」
ゼロ「………。」
天満「ゼロ?」
ゼロ「…ふむ。」
真雪「一体…。」
ゼロ「どうやら『地球』の壊滅まで、計画は三段階あるみたいですね。」
天満「三段階…。今…今は…?」
ゼロ「今はまだ一段階みたいですね。」
天満「はあ…良かった…。」
ゼロ「安堵している暇は無いですよ。時間的に言って、一段階はもうすぐ終わって、二段階に移行します。」
天満「そんな!」
真雪「だったら急がなきゃいけないじゃないですか!」
シャウト「一段階『錬吸』、二段階『最高領域』、三段階『大満月』と…二段階と三段階の詳しい内容は分からないが、一段階の終わりは砂漠化した時みたいだな。」
真雪「砂漠化って…。」
ゼロ「まず生体が石化します。そして、段々と全てが枯渇していきます。もうすぐで完全に枯渇してしまい、砂漠化します。すると一段階終了です。」
アイズ「なるほどな。」
天満「アイズ!」
ゼロ「お目当てのモノはあったんですか?」
アイズ「…。」
天満「無かった…のか?」
サイガ「あんのはあったんやけど…ワイらの知りたいトコは…。」
天満「どうだったんだ?」
アイズ「破られていた…。」
ゼロ「恐らくは誰かが、『クローン』を完全体にする計画資料のみを破棄したんでしょうね。」
真雪「何の為にですか?」
ゼロ「『クローン』の研究を独占したい者が奪っていったか……あるいは…。」
天満「ゼロ?」
ゼロ「ふぅ…今は確証が無いですから、発言は控えておきますね。」
アイズ「貴様…何か知っているなら話せ!」
ゼロ「ですから確証無いことは控えておきます。間違ってるかもしれませんから……それに…全ては『サリーオ』さんの所で分かると思いますよ。」
アイズ「ち…。」
サイガ「ならさっさと行こうや!」
シャウト「ところでゼロ、『サリーオ』の住んでいた場所とは何処だ?」
ゼロ「『アストラル』です。」
アイズ「何処だ?知ってるか?」
サイガ「聞いた事あるような無いような…。」
シャウト「『アストラル』ってまさか!」
ゼロ「さすがシャウトさんは博識ですね!」
アイズ「一体何処なんだ?」
ゼロ「船ですよ!お・ふ・ね!」
アイズ「船だと!」
サイガ「けったいなトコが住まいなんやなぁ。」
ゼロ「とりあえず行きますか。船がある場所はここから最南端『ゴードリナ大陸』です!」
天満「よし、行こう!」
次回に続く