第二十八劇『修業』
皆「六ヶ月ぅーーーーっ!」
ユエ「そうだ。」
フェイ「お、おいおいマジかよ!六ヶ月なんて…マジあんなトコに六ヶ月もいたら廃人になっちまうぜ!」
ゼロ「さ、さすがに驚きましたね…六ヶ月…ですか。」
天満「ユエ、本気なのか?」
ユエ「言ったはずだ、時間が無いと。零か百か、そういう試練が必要なのだ。」
シャウト「『力』を得るか…『全て』を失うか…か。」
アイズ「だ、だが半年も僕達が中に入ってて大丈夫なのか?僕達のことだけじゃなく、アイオーンが半年も『地球』を放っておくのか?」
ユエ「それは大丈夫だ。『黙示録』によると、アイオーンがここに来るのは、今から187日後だ。」
アイズ「ほ、本当に大丈夫なのか?さっきみたいに、お前の予想を上回るかもしれないんだぞ!」
ユエ「確かにその可能性は否めないな。」
アイズ「だったら!」
ユエ「それでもやるしかないのだ。」
アイズ「う…。」
サイガ「…。」
アイズ「サイガ…。」
サイガ「やってやろうやんけ、アイズ。」
アイズ「……。」
サイガ「ワイらにはまだまだやることがあるやろ?でけへんまんまで、死にたあらへんからな。」
アイズ「サイガ…。」
天満「そ…そうだよな…。そうだよアイズ!俺達ならきっと出来るさ!」
アイズ「だが半年なんて、どう考えても生存率が…。」
天満「零じゃないだろ?」
アイズ「…。」
天満「このままじゃ、俺達は何も出来ないで、殺されるだけだ。だけど、俺達が生きていられる可能性がある。」
アイズ「天満…。」
天満「ほんの僅かかもしれないけど、俺は懸けたい!その僅かな可能性に!」
アイズ「……ふ、以前と逆になったな。」
天満「え?」
アイズ「以前はこうやって尻込みしてるお前を、僕が後押ししたんだがな。」
天満「そうだったよな。」
アイズ「自分の守りたいモノを想う。それが強さ……自分で言ったことが、自分で分かってなかったとはな。」
天満「やろう、アイズ!」
アイズ「ああ!」
サイガ「それでこそや!」
サリーオ「いいチームだな。」
真雪「はい!」
にゅう「みんな強いにゅ〜!」
ユエ「それでは来てくれ。」
(『暁の部屋』へ)
ユエ「ここが『暁の部屋』だ。」
サイガ「でかい扉やなぁ。」
天満「この中で六ヶ月……ん?…あのさぁ、食事とかは?」
アイズ「そういえばそうだな。五日程度なら何とかなるが、さすがに六ヶ月も断食は無理だしな。」
ユエ「ふ、入れば分かるさ。」
ゼロ「まあ、普通に驚くと思いますよ。」
フェイ「ま、俺達はマジ辛くて食事どころじゃなかったけどな。」
リアリィ「そうそう。体の痛みに耐えるのに必死必死!」
真雪「そ、そんなに大変なんですか…。」
リアリィ「た〜いへんた〜いへん!」
ユエ「中の生活の仕方は、ゼロ達に教えてもらうといい。」
天満「分かった。」
シャウト「そう言えば、どれだけの者が行くんだ?」
ユエ「私、ユインシス、ユナイマは行かない。」
天満「どうして?」
ユエ「三段階は時間がかかる。私まで入ってしまったら、誰も計画を進められなくなる。」
天満「そうだな。じゃああとは…。」
ジウ「オレも行かないぜ。」
天満「ええ!」
ジウ「オレにはオレのやることがある。それに、六ヶ月も閉じ込められるのもごめんだ。」
天満「ジウさん…。」
ジウ「…強くなってこい。」
天満「え?」
ジウ「強くなって戻ってこい。その為に来たんだろう?」
天満「…はい!」
ジウ「…小僧。」
天満「はい?」
ジウ「……負けるな。(ボソ)」
天満「え?何ですか?」
ジウ「何でもねえ。さっさと行って、さっさと強くなってこい!」
天満「あ、はい!」
シャウト「では行かないのはジウだけだな?」
ユエ「…ゼロ。」
ゼロ「分かりました。では皆さん、僕に触って下さい。」
フェイ「ちっ…。」
ゼロ「おや?もしかして行かないんですか、マジ馬鹿さん?」
フェイ「くっ…触ればいいんだろ、触れば!」
ゼロ「素直じゃないですねぇ。」
ユエ「よし、準備が出来たようだな。」
天満「ああ!」
アイズ「絶対に!」
サイガ「強ぅなって!」
シャウト「帰ってきてみせる!」
真雪「私もです!」
サリーオ「やるしかないね。」
フェイ「六ヶ月なんてマジ大したことないぜ!」
リアリィ「ユエ待っててね!」
イオキス「では…。」
ユエ「皆、生きろ!」
皆「おう!」
ゼロ「では行きますよ!『レベル2』…『氷紋』発動!」
ユエ「…待ってるぞ。」
ジウ「奴らなら平気だろ。」
ユエ「そうだな。」
(天満は)
ゼロ「さあ着きましたよ。」
天満「ここが…。」
アイズ「信じられないな…。」
サイガ「ホンマに部屋ん中なんか?」
ゼロ「広さは『月』くらいあるらしいですよ。」
サイガ「でかっ!ってか部屋ん中やで?」
ゼロ「ここは『錬』が作り出している部屋です。つまり空間、物質、質量といった、全てが『錬』で構成された部屋なんです。言ってみれば、『別次元の空間』と呼ばれるものですね。」
サイガ「別世界ってわけなんか。」
真雪「でも、凄く綺麗な所なんですね。まるで昔の『地球』みたいです。」
ゼロ「『錬』は『自然』を構成する『力』です。最も安定した豊かな空間を作ってるんです。つまり、人も建物も無い、『自然』だけがある空間が、『地球』にとって最も安定した豊かな空間なんでしょうね。」
真雪「私達が『地球』を汚してしまってるんですね…。」
ゼロ「人は欲深い生き物ですからね。『自然』を自分達が支配するものと考えてるんでしょう。」
真雪「この光景が、本当に『地球』のあるべき姿かもしれないんですね。」
ゼロ「そうですね…。」
天満「確かに『地球』を悪い方に変えてしまったかもしれない。でも、変えられたってことは、元に戻すことも出来るはずだ。」
真雪「天くん…。」
天満「人が本当に『自然』を理解した時、本当の意味で共に生きることが出来るはずだよ。」
シャウト「そうだな。」
天満「その為には、凄く長い時間が必要かもしれない。だからこそ、ここで『地球』を破壊させるわけにはいかないんだ!『地球』と共に生きていくために……『自然』を元に戻す為にも、俺達は生きなきゃならないんだ!」
真雪「天くん!」
アイズ「その為にもまずは『力』がいる。生きる為の『力』がな。」
天満「アイオーンに勝つ『力』がね!」
にゅう「勝つにゅ〜!」
天満「に、にゅう!何で!」
真雪「ついてきちゃったの!」
にゅう「にゅうも一緒にゅ〜!にゅうも頑張るにゅ〜!」
天満「全く…でもありがとうな、にゅう。」
にゅう「みんなで頑張るにゅ〜!」
サイガ「よっしゃ!んでゼロ、ワイらは何をしたらええねん!」
ゼロ「生きるんですよ。」
サイガ「生きる?そんだけ?」
ゼロ「ええ、ここで六ヶ月を生きるんです。」
サイガ「な、何や…えらい簡単やないか…はは。」
フェイ「笑ってられるのもマジ今のうちだぜ!」
サイガ「へ?」
フェイ「今はまだマジ気付いてねえみてえだけどな、そろそろ…。」
サイガ「ん?…あれ?…っ!」
アイズ「どうしたサイガ!」
サイガ「くっ!」
ゼロ「来ましたね。」
シャウト「何だ?」
ゼロ「こうやって立っているだけども、もの凄い速さで、大量の『錬』が体に流れ込んでくるんです。」
アイズ「サイガ!」
サイガ「だ、大丈夫や…。」
ゼロ「たまたまサイガさんに流れ込む『錬』の速さが、皆さんより速かった為、こうなったわけですが、そろそろ皆さんにも…。」
アイズ「うっ!」
真雪「う…。」
天満「真雪!」
ゼロ「分かりましたか?ここでただ生きるということが…。」
サイガ「な、納得やわ…。」
ゼロ「これからもっと激しくなってきます。ここにある『錬』は質、量共に、『オルテナ』のそれとはケタ違いです。今はまだ、『錬』が急激に流れ込んだせいで、体が驚いているだけですが、あなた方の『錬』の『許容量』を越えてしまうと、今度は全身に激痛が走ります。」
シャウト「な、なるほど…。つまりユエの目的は、無理矢理『錬』の『許容量』を広げることなんだな。」
ゼロ「それもありますが、一番鍛えられるのは『精神』です。『錬』を生むのは『精神』…『心』です。『錬』の『許容量』が増えるということは、『心』が強くなるということです。普通は肉体を通してでしか鍛えることが出来ない『精神』ですが、ここでは直接鍛えることが出来ます。つまりここでの一日は、外での何ヶ月もの修業と同じ経験を与えてくれるんですよ。」
リアリィ「そうそう、だからここで生きることは、本当に大変なんだから!」
アイズ「こ、こんなところで六ヶ月…か…。」
シャウト「確かにやり遂げることが出来れば、今までの何十倍もの『心の強さ』を身に付けることが出来るな。」
ゼロ「『心の強さ』=『エリアの強さ』ですからね。さて、僕達はまだまだ大丈夫ですが、そろそろ天満くんも…。」
天満「まだ大丈夫みたいだけ…ど…。」
シャウト「天満!」
ゼロ「シャウトさんは元々『錬の集合体』ですから、もしかしたら、この試練は案外シャウトさんにとっては一番合ってるかもしれませんね。」
イオキス「とにかく…六ヶ月だ…。」
ゼロ「そうですね。とりあえず、まだ平気な僕達が食糧の調達に行きますか。」
サリーオ「アタシはこの子達を看てるよ。」
ゼロ「おや?サリーオさんはどうやら経験者みたいですね。」
サリーオ「まあね。だからまだ平気なんだよ。」
ゼロ「では天満くん達を頼みます。行きますよ、マジ馬鹿さん。」
フェイ「いいかげん殴るぞ!」
リアリィ「まあまあ。」
ゼロ「では待っていて下さい。」
天満「く……絶対…負けないぞ!」
(剣斗達は)
剣斗「ふぅ、しんど…。」
クロノ「少し休憩しましょうか。」
琴花「た…助かった…。」
ミラァ「もう…ダメ…。」
クロノ「『レベル2』…『幽幻』終了……ふぅ。」
剣斗「きっちぃ〜〜!」
トト「お疲れ様ですの!はい、水分補給しますですの!」
剣斗「サンキュ!」
琴花「ありがとう!」
ミラァ「ありがとうトト!」
剣斗「だけど、ホントキツイよな〜。クロノの『レベル2』はさ。」
琴花「ホントだよ全く…。」
ミラァ「息もしにくいし、体も重いし、あげくの果てには、動くたんびに激痛だし…。」
クロノ「ふふ、前にも説明しましたが、ボクの『幽幻』は、様々な状態を与えることが出来る空間を作り出します。とても狭い範囲ですが、この程度の大きさなら、あなた達の感覚を支配することは十分可能です。」
剣斗「その『力』で、俺達の体に負荷をかけて、『エリア』を長時間拡げっぱなしにすることで、俺達の『エリア』を強くするんだろ?」
琴花「でもマジでしんどいんですけど。」
クロノ「さて、次は体を麻痺状態の状態にして、筋トレといきましょうか!」
三人「ええーーーーっ!」
クロノ「さてやりますよ!」
三人「はぁ〜い…。」
トト「頑張って下さいですの!」
剣斗「うっしゃぁっ!」
琴花「負けるかぁっ!」
ミラァ「強くなるぞーっ!」
クロノ「ふふ、まだまだこれからですよ!」
三人「おう!」
クロノの心「…あと六ヶ月…。」
次回に続く