第二十六劇『錬値』
聖地「よし、行き先…『テムローア高原』か…。」
(聖地は『テムローア高原』へ)
聖地「ここにアオスの遺産があるんだよね。確か………あった!ここに触れば…。」
(一つの岩に手を触れると、地下に通じる階段が現れる)
聖地「よし。………ここか。」
(階段を降りて行くと、扉を発見)
聖地「ここが、アオスの遺した、アオスの研究の全て。……ユエ?その人がディークの半身なんだね。そしてディーノ………成程、急がなきゃならないみたいだね。」
(天満は)
天満「…。」
ユエ「…。」
天満「…ユエ?」
ユエ「こんな所で何をしているんだ?」
天満「いや…。」
ユエ「……『黄泉玉』の真実は、やはり重いか?」
天満「……皆には悪いけど、正直…キツイよ…。」
ユエ「だろうな。」
天満「ユエはキツくないのか?自分の体のこと。」
ユエ「私は望んで生まれたのだからな。」
天満「望んで?」
ユエ「ディークが何故私を生み、わざわざ『月』を創ったのだと思う?」
天満「…『地球』のため?」
ユエ「ああ、それもある。だが真の目的は『月』、すなわち『天球』を『地球』のように、生命溢れる緑豊かな星にしたかったのだよ。」
天満「どうして?」
ユエ「我々の…『故郷』にしたいと言っていた。だから私は、その想いを受け、『知のディーク』として生まれることを、決心した。」
天満「…そっか。」
ユエ「天満…我々は、ここに有って、無い存在なのだよ。真実を知ったお前なら、理解出来るだろう?」
天満「ふぅ…理解は出来ても、納得は出来そうもないよ…。かつてのネオスのようにね。」
ユエ「アオスか…彼もまた、限りなく危険な存在だった。いや、そもそも我々を生み出した存在が、既に危険な異物なのだろうがな。」
天満「『オルフェリア』に『ドリューマ』か…。」
ユエ「『地球』という世界には、我々は異物でしかない。そうディークが言っていたよ。」
天満「それでも…それでも俺は、『地球』を守りたい。」
ユエ「ああ、それがディークの意思であり、私の意思でもある。」
天満「守るんだ、絶対。」
(真雪が天満を発見し、近付こうとする)
真雪「あ、天…。」
天満「俺は『地球』から去るよ。」
真雪「えっ!」
ユエ「そうだな、それが一番良いのかもしれない。」
天満「人が生きる世界を守るため。」
ユエ「我々の居場所は、『地球』には存在しないのだろうな…。」
真雪「……天くん。」
天満「そろそろ時間だね。行こうユエ、三段階の準備は、もう出来たはずだ。」
ユエ「ああ。」
真雪「こっちに来る!……天くん。」
(真雪はその場から去る。天満は皆の所へ)
アイズ「ん?天満、どこ行ってたんだ?三段階の準備はもう出来てるぞ。」
天満「ごめんごめん。」
サリーオ「真雪、天満を呼びに行ったんじゃないのかい?」
真雪「…。」
サリーオ「ん?…真雪?」
真雪「え!あ、はい、準備が出来たんですよね!」
サリーオ「?」
ユエ「皆、それでは三段階を開始する。」
(その時、大きな地震が起きる)
天満「な、何だ?」
サイガ「地震かいな!」
ユエ「一体……ユインシス、『黙示録』はどうなっている!」
ユインシス「見てくる!」
ユエ「このような地震、予期していないはずだ。」
ユインシス「ユエ!」
ユエ「どうだった?」
ユインシス「『黙示録』が、書き換えられている!」
ユエ「何っ!」
ユインシス「予定よりも早く、奴らが来た!くそっ!俺が『エリア』を使ってさえいれば、察知出来たものを!」
ユエ「くっ、予想より確実に早いか…。」
天満「ユエ!」
ユエ「天満……仕方ない。皆、聞いてくれ!」
ゼロ「ま、まさか…。」
ユエ「敵が来たようだ。」
シャウト「アイオーンか!」
ユエ「いや、アイオーンはまだ遥か銀河の彼方のはずだ。」
シャウト「だったら!」
ユエ「アイオーン本人が来るのは、まだ先のはずだ。恐らくは…。」
ユインシス「『黒の波紋』…。」
アイズ「それが敵?しかし『黒の波紋』には実体が……そうか、アイオーンのように形を成したのか!」
ユインシス「アイオーンが『地球』を見つけるために、様々に放った手下だろうな。」
ユエ「とにかく、この『黙示録』を知られる訳にはいかん!皆、頼む!」
フェイ「へ、このためにマジ鍛えてきたんだ!マジ任せときなって!」
イオキス「ユエさんは…どうするの…ですか…。」
ユエ「私とユインシスは、すぐにでも三段階を実行する。」
リアリィ「うん。あとはリアリィちゃんにまっかせなさいっ!」
天満「みんなっ!」
アイズ「ああ、行こう!」
サイガ「よっしゃっ!」
ゼロ「仕方ありませんね。」
シャウト「手強いだろうが、やるしかないだろうな。」
真雪「私も!」
天満「駄目だ!」
真雪「え!」
天満「サリーオさんと真雪は残っててくれ!」
真雪「どうして?」
天満「お前はまだ覚醒させてないだろ?」
真雪「あ…でも。」
天満「いいから残れ!」
真雪「あ…。」
天満「サリーオさん、あとは頼みます!」
真雪「天くん!」
サリーオ「真雪!」
真雪「サリーオさん…。」
サリーオ「今必要な『力』を持ってない真雪は、戦いの邪魔でしかないんだよ。」
真雪「でも、天くんは!」
サリーオ「しっかりおしっ!」
真雪「サ、サリーオさん…。」
サリーオ「今のアンタは普通じゃない。心そのものが揺れている。」
真雪「…。」
サリーオ「なあに、奴らに任せときなって!」
ジウ「そうだな、信じて待つことも、強さだ。」
真雪「……はい。天くん…。」
(天満達は外へ)
アイズ「なんだコイツらは!」
サイガ「うじゃうじゃおるやんけ!」
ゼロ「『蟲』…ですか?」
天満「コイツらが『黒の波紋』か?」
イオキス「いや…正確には…『無の破片』と…呼ばれる…ものたち…だろう…。」
天満「『黒の波紋』とは違うのかい?」
イオキス「『黒の波紋』は…アイオーンの…ことを言う…。」
アイズ「じゃあコイツらは?」
イオキス「アイオーンの…『力』の一部で…生み出した…もののことだ…。」
アイズ「一部?そいつが『無の破片』なのか?」
?「少し違いますね。」
天満「な、『蟲』が喋った!」
アイズ「何だお前!違うとはどういうことだ!」
?「わたくしは、誉れ高き『最翁様』の戦士、『マグナオウ』と申します。」
天満「『最翁』?アイオーンの仲間か!」
マグナオウ「おやおや、いけませんよ。アイオーン様を呼び捨てなど。命を落としたく無いでございましょう?」
天満「何っ!」
アイズ「命を落とすのはどっちか、思い知らせてやるぞ。」
マグナオウ「ほう、何やら威勢のいい方がいらっしゃいますねぇ。」
アイズ「威勢だけかどうか、試してみるか?」
マグナオウ「生憎と、わたくしは多忙なのでございます。故に、貴方達と遊戯を楽しむ時間などございません。」
フェイ「マジむかつく野郎だな!」
リアリィ「リアリィちゃんは『蟲』なんて大っ嫌い!」
ゼロ「ふむ…一つお聞きしてもよろしいですか?マグナオウさん。」
マグナオウ「成程、少しはマシに語れる方もいるみたいでございますね。いいでしょう、仰って下さい。」
ゼロ「あなたは、何をしに来られたのですか?」
マグナオウ「無粋なことを聞きますね。とっくにご存知のはずですが?」
ゼロ「……成程。では、あなたをここから出す訳には行かないようです。」
マグナオウ「貴方も馬鹿でございますね。」
ゼロ「行きますよ天満くん!」
天満「ああ!」
ゼロ「皆さんは、他の『蟲』達を!」
サイガ「行くでアイズ!」
アイズ「ちっ!」
フェイ「マジ命令すんな!」
イオキス「行くぞ…フェイ…。」
リアリィ「でも、アイツ強いよ!」
イオキス「…『戦闘錬値』…3658…。」
リアリィ「ちょっとちょっとぉ、強過ぎじゃない!」
フェイ「ふん!」
リアリィ「どうかしたのフェイ?」
イオキス「忘れたのか…ゼロの…『戦闘錬値』は…。」
ゼロ「『氷の蛇絞』!」
天満「『月の咆哮』!」
マグナオウ「小さき技でございますね!」
天満「くっ、弾き返された!」
ゼロ「…。」
マグナオウ「どういたしました?言葉数が減りましたが?」
ゼロ「…ふふ。」
天満「ゼロ?」
ゼロ「ふふふ。」
マグナオウ「何でございますか?」
ゼロ「いやいや、失礼。どうやらあなたは、アイオーンの手下でも、最下層のようですね。」
マグナオウ「何を!」
ゼロ「僕は…7900です。」
マグナオウ「は?」
天満「え?」
マグナオウ「何でございます?」
ゼロ「さようなら、小さき『蟲』さん。」
マグナオウ「消えた?ぐっ……な…何…。」
天満「アレは『氷紋』!」
マグナオウ「ぐっ…。」
ゼロ「それではご機嫌よう。」
マグナオウ「や、やめ…。」
ゼロ「『氷の華山』。」
マグナオウ「ぐ…が…馬鹿…な…。」
ゼロ「皮肉ですね。醜い者ほど、輝く山が出来ます。」
天満「…し…瞬殺。」
ゼロ「どうやら『無の破片』ではなかったようですね。もしそうなら、もっと手強いはずですからね。恐らくは彼が言っていた『最翁』さんとやらの部下ですね。それも相当格下の……さて、皆さんは大丈夫ですかね?」
(その時、一匹の『蟲』が『月』から離れていく)
シャウト「終わったようだな。」
ゼロ「皆さんもご無事で何よりです。」
フェイ「てめえがマジ倒したのかよ、アイツ。」
ゼロ「まあ、そうですね。」
リアリィ「やっぱゼロは強いわぁ。」
フェイ「ふんっ!」
天満「あ、あのさあゼロ、さっきの数字は何?」
ゼロ「ああ、それはですね、『戦闘錬値』ですよ。」
アイズ「何だそれは?」
ゼロ「まあ、戦闘における『力』を、『錬の力』として計算し、数値化したものですよ。」
サイガ「ふ〜ん、そない便利なもんがあんねんや。」
ゼロ「イオキスさんが、数値化してくれますよ。」
サイガ「ホンマ!な、ワイは何ぼなん!」
ゼロ「ちょうどいいですから皆さん、今の自分のレベルを知っておいて下さい。お願いします、イオキスさん。」
イオキス「分かった…『最高予測戦闘錬値』……サイガ…1530…アイズ…1528…シャウト…2603…天満…1796…。」
サイガ「ワイの勝ちやでアイズ!」
アイズ「納得いかない…。」
天満「ちょっと待ってよ!ゼロは確か…。」
リアリィ「ゼロは断突の7900だよ!」
アイズとサイガ「7900!」
シャウト「強いとは思っていたが、まさかそれほどとは。」
フェイ「ふんっ!」
天満「ゼロって凄いんだな。」
ゼロ「いやいや、まだまだですよ。」
天満「何言ってんだよ!7900なんて、凄いじゃないか!」
ゼロ「ふぅ……本当にまだまだなんですよ。」
天満「え?」
ゼロ「ユエさんに聞いたんですが、『時の国』に現れたアイオーン……『戦闘錬値』いくつだと思いますか?」
天満「え…と…。」
ゼロ「83000です。」
天満「何だって!」
ゼロ「しかも、生まれたばかりで、その数値です。今のアイオーンの『力』は、ハッキリ言って測り知れません。」
皆「…。」
ゼロ「さっきの雑魚であるはずの者でさえ、僕の半分くらいの『力』を持っていました。」
天満「…。」
ゼロ「それでもやるしかないんです。やると決めた以上はね。」
天満「…そうだよな。」
次回に続く