第二十五劇『進時』
シャウト「だがユエよ、『地球』を進化させるといっても、具体的にはどうするんだ?」
ユエ「君達は『ハクウェル研究所』で見たはずだ。『フュージョニア計画』を。」
シャウト「ああ。」
ユエ「一段階は『錬吸』、『地球』から可能な限り『錬』、すなわち『生命エネルギー』をこの『天球』に吸収させる。だがそのままでは、『天球』という器から『錬』が溢れだし暴走する。それで二段階『最高領域』、『フォンス』を最大に覚醒させ、その『力』で『天球』を覆い、大量の『錬』を暴走させず留める。」
シャウト「で、ではまさか我々が戦った相手が急に倒れたのは…。」
?「コラァァァーーーッ!ユエッ、マジどこだ!」
ゼロ「おや?あの声は…。」
?「ここかっ!」
ユエ「やあ『フェイ』。」
フェイ「やあフェイじゃねえよ!マジどういうつもりだ!『イオキス』にマジ聞いたぞ!俺達の『レベル3』の『エリア』をマジお前が吸収したっていうのをな!マジ何で、んなことしやがった!でなきゃ、マジもう少しで、あのオッサンをマジやれたのに!」
シャウト「悪かったな、オッサンで。」
フェイ「な、てめえら!マジ何でここに?」
ゼロ「そんなことも分からないのですか?マジ馬鹿さん?」
フェイ「ゼェェロォォ!てめえまでいやがったのか!」
ゼロ「おや?先程からいましたよ。まさか頭だけでなく、とうとう目まで馬鹿になりましたか?」
フェイ「マ、マジ殺しちゃる!」
?「よせ…フェイ…。」
フェイ「『イオキス』…。」
イオキス「ユエさん…話して…くれますか…。」
ユエ「ああ、君達には申し訳ないことをした。全てを話そう。」
フェイ「おう、マジさっさと話しやがれ!」
ユエ「イオキス、『リアリィ』は?」
リアリィ「ここにいるよ。」
ユエ「リアリィ。」
リアリィ「話してよユエ。ユエのことだから、たぶん何か理由があったんだよね?」
ユエ「ああ…。先程言った通り、二段階は一段階による『錬』の暴走を止めること、そして『錬』を限りなく『天球』に凝縮させ留めることだった。」
フェイ「マジ何で、んなことする必要あったんだ?」
ゼロ「そうすれば、アイオーンから、『地球』を遠ざけることが出来たからですよ。」
フェイ「てめえにはマジ聞いてねえよ!」
ゼロ「これはこれは、どうもすみませんでした。」
フェイ「けっ!」
シャウト「アイオーンは『地球』が放つ『光』を探している。だからその『光』を抑え、アイオーンに気付かれないようにする訳があった。」
ユエ「そう、それが二段階だ。」
イオキス「ユエさん…それで…。」
ユエ「…単にフェイ達に『力』を発動してもらい、二段階を終えることも出来た。」
リアリィ「それなのにどうして?」
フェイ「そうだぜ!マジ何でだよぉ!」
ユエ「アイオーンを討つために、一人でも多くの戦士が必要だったのだよ。」
リアリィ「…そうか…だからなんだね。」
フェイ「え?マジどういうことだ?」
ゼロ「あなたは黙っていた方がいいですよ。これ以上馬鹿が明らかになる前に。」
フェイ「こ、こんにゃろぉ〜っ!」
イオキス「つまり…ユエさんは…我々と…サリーオ達を…戦わせ…相手の…『フォンス』覚醒を…促した…そういうこと…ですね…ユエさん…。」
ユエ「そうだ。『フォンス』を覚醒させるためには、『強い力』に触れ、『強い想い』を抱くこと。そのため君達には、彼らの『フォンス』覚醒を求め、動いてもらったのだ。」
フェイ「でもマジ何で教えてくれなかったんだ?別にマジ教えても良かったんじゃねえの?俺達はマジ『天球』を救うために、お前についてんだぜ。」
ユエ「それは…。」
ユインシス「本気になってもらうためだ。」
フェイ「本気?」
ユインシス「ああ、この計画を言ってしまうと、お前達が本気で戦えないと思ったのでな。特にリアリィなんかは、優しいからね。」
リアリィ「いやん、照れるじゃん!」
フェイ「で、でもさぁ…。」
ユエ「黙っていてすまなかったフェイ。許してくれ。本当にすまなかった。」
フェイ「……まあ、いいけどさ。」
ゼロ「ふふ、まるで子供ですね。」
フェイ「うるせぇっ!だがマジてめえとだけは、いつか決着つけっからな!オッサン、てめえともだ!マジ覚えとけよ!」
シャウト「心しておこう。」
ゼロ「僕は覚えませんけどね。」
フェイ「このやろ…人を散々なめやがってぇ…。」
リアリィ「でも安心したぁ。」
ユエ「ん?」
リアリィ「やっぱりユエはユエなんだもんね!」
ユエ「ああ、私は私だよ。」
シャウト「それでユエ、二段階は終わったのか?」
ユエ「ああ、我々『叢雲』の『レベル3』の『力』で、しばらくはな。」
シャウト「しばらくというのは?」
ユエ「いくら『最高領域』で抑えたとしても、『地球』から吸収した『錬』は膨大だ。そう長くは抑えてはおけない。」
シャウト「ではどうするんだ?」
ユエ「急ぎ三段階へ移行する。」
シャウト「三段階か。」
ユエ「ああ、三段階『大満月』、『地球』と『天球』を融合させる。」
アイズ「どうやって融合なんてさせるつもりだ?」
ユエ「この『月』…つまり『天球』を少しずつ分解していき、『錬』と融合させ、『地球』に戻していく。」
サイガ「ほんで、つまりは『地球』はどうなんねや?」
ユエ「『地球』そのものはさほど変わらない。変わるのは『地球』の外側だ。」
サイガ「外側?」
ユエ「『地球』を覆うのだよ。」
真雪「その…分解した『月』で…ですか?」
ユエ「そう、『天球の層』を構築する。」
ゼロ「『天球の層』…ですか?」
ユエ「ああ、名を『セイントヴァース』。『錬』を極限まで凝縮し、『地球』の外に『黒の波紋』を寄せつけない、『聖なる外壁』を構築する。」
ゼロ「しかし、聞くところによると、未来のあなたが創った結界すら、『黒の波紋』を防ぐに足らなかった。本当に、その『セイントヴァース』とやらは、大丈夫なんですか?」
フェイ「てめえゼロ、ユエをマジ信じてねえのかよ!」
ゼロ「あなたは黙っていて下さい。僕はユエさんにお聞きしているんです。」
フェイ「黙れだと!」
ユエ「フェイ…。」
フェイ「く……ちっ!」
ユエ「ゼロの懸念は分かる。だが、これが私の出来る全てだ。そう信じてきたからこそ、幾人もの者を利用し、こうして覚悟の結晶を創ることが出来たのだ。」
ゼロ「……いや、僕はただお聞きしたかっただけなんです。あなたの覚悟を。」
ユエ「ゼロ。」
ゼロ「ほとんど未知の相手と戦うんです。だがそれでも、揺らぐことのないあなたの意思を確認したかったんです。」
シャウト「そうだな、たとえ勝てる確証は無くても、勝てると信じて戦う。」
アイズ「ああ、僕らはいつもそうしてきた。」
サイガ「諦めっちゅうのは、どうも性に合わへんからな。」
サリーオ「思い出がたくさん詰まった『オルテナ』だからな。」
真雪「まだまだやりたいこともたくさんありますから。」
にゅう「天満と一緒に戦うにゅ〜!」
ジウ「まあ、こういう連中だ、ユエ。」
天満「ユエ!」
ユエ「ああ、やろう!運命を叩く!」
フェイ「へ、俺がいれば、マジどんな奴だって敵じゃねえよ!」
リアリィ「ユエについついく、そう決めたもんね!」
イオキス「早速…始めましょう…。」
ユエ「よし!三段階『大満月』、開始する!」
(剣斗は)
剣斗「はあはあはあ…。」
琴花「はあはあはあ…。」
ミラァ「はあはあはあ…。」
クロノ「どうしました?もう終わりですか?」
剣斗「く、くそっ!な、『幻術』!」
クロノ「ボクはこっちです!はっ!」
剣斗「うわぁぁぁっ!」
クロノ「まだまだ!」
剣斗「にゃろう…。」
琴花「つ、強い…。」
ミラァ「三人がかりで触れることも出来ないなんて…。」
クロノ「当然です。ボクは『エリア』を使用しているんです。『エリア』には『エリア』でしか対抗出来ません。たとえ『法術』を使用したとしても、『フォンス』による身体的な覚醒力には遠く及びません。」
剣斗「くそっ!」
クロノ「自分の中に『力』があることを感じなさい。それを『フォンス』から出すイメージを描くんです。」
琴花「そ、そんな簡単に言われても。」
クロノ「あなた達の中には、確かに『力』は存在しているんです。あとはそれを、自分の中から探しあてるだけです。」
ミラァ「探しあてるって言っても。」
クロノ「『法術』を会得した時のことを思い出すんです。」
剣斗「『法術』を会得した時のことを?」
クロノ「全ては想いが『力』を生み、育てる。大切なのは、想いを強く出すこと。さあ、覚醒させるんです!自分の中にある確かな想いを!」
剣斗「…想いか。」
琴花「そうだよ…。」
ミラァ「想いの強さなら!」
三人「誰にも負けないっ!」
クロノ「!」
トト「覚醒の『光』ですの!」
クロノ「そうです、それがあなた達の強さです。」
(聖地は)
聖地「僕は…君だったんだね…『アオス』…。」
アオス「聖地…君の本当の名前は……いや、よそう。」
聖地「え?」
アオス「君の名前は聖地だ。それが、君だ。」
聖地「アオス…。」
アオス「…聖地。」
聖地「…分かってる。」
アオス「いいんだね?」
聖地「今なら少し分かるよ。あのディーノが、『不完全』でありながら、どうしてあれほどの強さを手に入れたのかが。」
アオス「そうだね…。」
聖地「『不完全』なままじゃ…勝てないんだよね?」
アオス「…そう。」
聖地「大切な人を守りたい。そのために…。」
アオス「……怖いんじゃないのかい?震えているよ。」
聖地「…。」
アオス「…これを。」
聖地「これは?」
アオス「『海聖魂』。」
聖地「…。」
アオス「これは僕の『力』の全て。これを君の中に眠らせておく。」
聖地「アオス。」
アオス「これを解放する時期は、君が決めるんだ。」
聖地「…いいの?」
アオス「ああ、君なら僕のように、間違わずに正しい方向に導けると思う。」
聖地「…。」
アオス「これから君には、ある場所に行ってもらいたい。」
聖地「どこに?」
アオス「この『海聖魂』が教えてくれるよ。」
聖地「…分かったよ。」
アオス「そしてこれを…。それは『フォンス』と呼ばれるもの。」
聖地「これも『海聖魂』が教えてくれるのかい?」
アオス「そう、それは君の助けになってくれるものだから。」
聖地「助けに…。」
アオス「全ては『海聖魂』が教えてくれる。さあ、君の中に『種』として植え付けておくよ。」
聖地「………これが『海聖魂の種』……温かいよ。」
アオス「あとは君が咲かせてくれ。いい花を咲かせてほしい。…僕が伝えられることは、これで全てだよ。」
聖地「……うん。」
アオス「最後に一つ聞かせてほしい。」
聖地「何?」
アオス「この世界…好きかい?」
聖地「大好きだよ!」
アオス「いい答えだ……。」
聖地「アオス…さようなら。あとは僕がやってみるよ。君も愛したこの世界を守るために。君の親友…ディークのために…。そして、僕自身のために…。」
次回に続く