第二十二劇『無影』
天満「『コレ』は!」
ユエ「そう…『黙示録』だ。」
サイガ「『本』…やんな…コレ…。でかいなぁ…。」
アイズ「こんな大きなものだったのか…。」
ユエ「コレが私とユインシスとユナイマの『エリア』を結集させた『力』なのだよ。」
シャウト「だが、どうやって未来を刻むというんだ?」
ユエ「私の『エリア』でだよ。見てなさい。『レベル3』……『黙新月』…。」
天満「…『玉』?その『玉』がユエの『レベル3』なのか…。」
ユエ「ああ、私の『想い』を凝縮し、形と成したモノだ。」
アイズ「それをどうするんだ?」
ユエ「簡単だ、例えばこの白紙のページ…この『黙新月』を近付けると…。」
サイガ「めり込んだで!」
真雪「…あ、字が浮き出てきましたよ!」
シャウト「『刃持つ者、苦難に追いつめられ、聖なる獣と愛の証を交す』?」
天満「どういう事だい?」
ユエ「すぐ分かる。」
サイガ「一体どういう意味なんや?」
アイズ「さあな……ん?サイガ、肩に何をつけてる?」
サイガ「あ?肩?」
アイズ「コレは…『クモ』だな。」
サイガ「な、ななななななんやて…?」
アイズ「いや、だから肩にクモが…ほら。」
サイガ「ひやぁぁぁぁーーーーーーっ!」
アイズ「え?」
天満「サイ…ガ?」
ゼロ「ああ、そういえばサイガさんて、クモがお嫌いでしたねぇ。ネオス様の所にいた時も、一度ありましたっけね、クモ騒ぎが。」
サイガ「ちょ、ちょ、ちょちょちょ、近づけんといてぇっ!」
アイズ「サイガ…お前…。」
シャウト「いい大人がクモごときで何を。」
サイガ「し、仕方あらへんやんかっ!そないな気持ち悪いもん、好きな奴おらへんよぉっ!」
アイズ「馬鹿馬鹿しい。ん……あれ?クモがいない。」
サイガ「へ?ちょ、何逃がしてんねん!」
(その時サイガの目の前にクモが上から現れる)
サイガ「にゃ……にゃんでや…。」
(サイガの顔にクモがつく)
サイガ「にゃぁぁぁぁーーーーーっ!」
にゅう「サイガ、カッコ悪いにゅ〜!にゅ〜!にゅ〜!にゅ〜!」
アイズ「おい、こんな狭い所で走り回ると。」
サイガ「んなこと言ってんと、ぶっっ!」
アイズ「言わんこっちゃない。壁にぶつかって倒れるなんてギャグ、ベタ過ぎてそうそうウケるもんじゃないぞ。」
サイガ「ち…違う……わ…。」
にゅう「にゅ〜!面白いにゅ〜!」
真雪「にゅう、危ない!」
にゅう「にゅ?」
サイガ「ほへ?」
にゅう「…。」
サイガ「…。」
にゅう「……。」
サイガ「……。」
天満「に、にゅう…。」
アイズ「サ、サイガ…。」
真雪「…。」
ゼロ「おやおや。」
シャウト「はぁ…。」
サリーオ「ユエ、アンタね…。」
ユエ「ふふ。」
にゅうとサイガ「んーーーーーっ!」
にゅうとサイガ「ぷはっ!」
サイガ「な、な、何でお前ここにいんねんっ!」
にゅう「にゅ……にゅ……にゅ〜〜〜〜〜!真雪〜〜〜〜!」
真雪「はいはい、よしよし、怖かったねぇ。」
にゅう「汚されたにゅーーーーーっ!」
サイガ「よ、汚され……わざとやないやろっ!せやんな、アイズ!」
皆「…。」
サイガ「ちょ、ちょ待てや!何かワイだけが悪者みたいやんか!」
アイズ「はぁ……成程な、これがユエの『力』か?」
ユエ「ふ…。」
天満「そうか、さっきの!」
シャウト「『刃持つ者』がサイガのことで、『聖なる獣』というのは、にゅうのことだったのだな。」
天満「『苦難に追いつめられる』は…クモだよね……じゃあ、『愛の証』というのは…。」
シャウト「う、うむ…。」
アイズ「口づけということか。」
サイガ「ちょ待てや!ほんなら何か?ワイは、単なる実験体やったんか?」
ユエ「すまないな。この中では、君が一番動かしやすそうだったのでな。皆に口で説明するより、見てもらった方がいいと思ったのでな。」
にゅう「にゅうはとばっちりにゅ〜〜〜〜!」
サイガ「ちゃうわ!一番割りに合わんのはワイや!」
天満「まあまあ、落ち着いてサイガ。」
サイガ「落ち着けるかいっ!」
天満「おいしかったよ。」
サイガ「へ?………ほんま?」
天満「うんうん。笑いの神様が見えたよ。」
サイガ「……まあ、あれや、ワイは心の広い男や!許したろ!」
天満「さすがはサイガ!いよ、男前!」
サイガ「なはは、もっと言うてぇ!」
アイズ「天満の奴、だんだんサイガの扱いが上手くなってきたな。」
にゅう「にゅうは納得いかないにゅ〜!にゅ〜〜〜!」
天満「あはは……あ、そうだ、コレあげるから泣くな、にゅう。」
にゅう「にゅ?」
天満「食べてみなよ。」
にゅう「にゅ………にゅっ!にゅ〜〜〜!美味しいにゅ〜!」
天満「ほら、もう一個あげるから、機嫌直してくれな?」
にゅう「にゅ〜〜〜!天満大好きにゅ〜!」
天満「あは!良かった!」
真雪「天くん、何をあげたの?」
天満「ん?飴だよ飴。イチゴ味のね。」
真雪「そんなもの持ってきてたの!天くん、甘いもの嫌いなのに、飴は好きなんだもんねぇ。」
にゅう「にゅ、にゅ、にゅ、美味しいにゅ〜!」
シャウト「ユエ、お前の『力』…。」
ユエ「そう、未来を創ることが出来るのだよ。ただし、より大きな未来を創り変えることは難しいがな。」
アイズ「しょうもない未来は、簡単に創れるということか。」
サイガ「しょうもないて…。」
シャウト「こうやって、まずは小さな未来を自分の思い通りに創っていき、『力』を少しずつ大きくしていったのか。巨大な未来を創るために。」
ユエ「ああ、そうだ。」
天満「…ユエ。」
ユエ「……君達に見せたいモノは、もう一つある。」
アイズ「何だ?」
ユエ「未来さ。」
ゼロ「『地球』破滅の未来…ですね?」
ユエ「……最後のページに書かれてある。見てくれ。」
皆「………。」
ゼロ「どうやら、本当だったようですね…。」
天満「『全ての輝きは削られていき、ただ黒い銀河が誕生する。有あるものは無に帰り、残るは終焉という言葉のみである。』………全ての…終わり…。」
ユエ「この未来を変えるために、私は君達を利用させてもらった。決して褒められたやり方ではないが、もはや時間も無いのでな。」
天満「……そうだな。」
真雪「天くん?」
ジウ「………ユエ。」
ユエ「何かな?」
ジウ「この未来は、お前の『力』で変えられないのか?」
ユエ「……ああ、何度も……何度も何度も試した。だが、生命の死に関わる未来を変えることは……まだ私の『力』では厳しいらしいんだ。」
サリーオ「じ、じゃあ、キィルの事では…。」
ユエ「……これを見てくれ。」
サリーオ「………『病に伏せし者、救いの手により再び立ち上がるが、死神を追い払う事は出来ない。最期は望むものを、望む者のもとに贈り、優しく眠る。』………キィル…。」
ユエ「一度は確かに、私の『力』で変えることが出来た。最初のキィルの未来は…ただ一言だけだった…『病に勝てず、死を否定出来ない。』だった。」
サリーオ「じ、じゃあこの『黙示録』は…。」
ユエ「私が創った、キィルの、もう一つの死の形…。」
サリーオ「ユエ…。」
ユエ「私は…キィルにただの死という形を与えたくなかった。同じ死でも、キィルが本当に望む死を、与えてやりたかった。どうせ死ぬ運命が変えられないなら、少しでも、いい運命として、キィルを……ただ病に苦しむ死ではなく、優しい死を…。」
サリーオ「…。」
ユエ「あの子の…キィルの望む死の形を…大好きな姉の腕の中で、死なせてやりたかったのだ。」
サリーオ「ユエ………悪かったよ。」
ユエ「サリーオ…。」
サリーオ「アンタのお陰で、キィルは一度死の淵から帰って来れたのに……。アタシはアンタを恨んだ…。」
ユエ「仕方がない。結局…サリーオの役に立つ事が出来なかったのだからな。」
サリーオ「そんなことはない。アンタのお陰で、アタシはいろんな『力』を与えてもらった。ここに…いや、天満達に会うまでは、本当の自分の『力』を自覚してなかったが、この子達に会って、『力』は何のためにあるのか、未来は変えられないのか…。その全てに答えを出せた気がするんだ。」
天満「サリーオさん…。」
サリーオ「キィルの死にずっと囚われてて、未来を見ることが出来なかった。だけど、キィルが教えてくれた。嫌な運命なら、変えればいいって。あがいて、もがいて、必死で動けば、何かが変わるんだ。そう、教えてくれたはずなのに……分かってなかったみたいだな。」
ユエ「キィルは……キィルは笑っていたか?」
サリーオ「アタシの気も知らず笑っていたよ。真っ直ぐ見るのが辛くなるほど、眩しい笑顔だったよ。」
ユエ「そうか……サリーオ…すまなかった。」
サリーオ「アタシの方もな…悪かった。…ありがとう。」
ゼロ「どうやら、サリーオさんとユエさんは、和解出来たみたいですね。」
天満「そうみたいだ。」
シャウト「しかし、この未来がまだここに書かれているということは。」
アイズ「ああ、必ず現実になる。サイガのしょうもない未来のように。」
サイガ「しょうもない言うなぁっ!」
シャウト「どうすればいいんだ?」
ユエ「大丈夫だ。」
シャウト「大丈夫だと?」
ユエ「そのために…この未来を変えるために、君達に来てもらったのだ。」
アイズ「それで、僕達を来させて、何をさせようっていうんだ?」
ユエ「先程も言ったが、この未来を起こす者がいる。そいつを討たない限り、この未来は現実になってしまう。」
シャウト「ああ、確か…。」
天満「『アイオーン』…。」
ユエ「…『アイオーン』について話そう。ユインシス、頼む。」
ユインシス「分かった。絶対的な『無』の存在、『黒の波紋』より生まれし『負の塊』、そいつが『アイオーン』だ。」
(遥か銀河の彼方)
?「ふふ…近々だな。ふむ……ん?」
(黒い卵から、何かが生まれた)
?「…名は?」
?「……『ベルクカイザー』…。」
?「ほう……む?他の二つも生まれるか…。」
(同じく黒い卵から何かが生まれた)
?「右から名乗るがよい。」
?「……『リムキュラァ』…。」
?「ふむ、して…主は?」
?「…。」
?「どうした?緊張でもしておるのか?」
?「……『アポカリュウス』…。」
?「良い名だ。では主ら『無の破片』に、ふさわしい称号を授けよう。『戦帝』、『蒼聖』、『最翁』…。どうだ?主らに似合いの称号であろう。」
ベルクカイザー「『戦帝』…。」
リムキュラァ「『蒼聖』…。」
アポカリュウス「……。」
?「さて、余のために働いてもらうぞ。」
三人「…。」
アイオーン「『地球』を探せ。」
(天満達は)
ユインシス「『アイオーン』は、もうすぐ現れる。『地球』の輝きを消すためにな。」
アイズ「そいつの目的は何なんだ?」
ユインシス「『無』…だ。」
アイズ「『無』?」
ユインシス「ああ、奴は全てを『無』に帰すと言った。」
アイズ「言った?お前は『アイオーン』と会ったのか?」
ユインシス「…そうだな…では奴が生まれた日のことを話そうか。といっても、知っていることは限られているけどな。」
天満「話してくれ。」
ユインシス「分かった。」
次回に続く