第二十一劇『理解』
天満「…ああ聞いた。だけど、俺はお前自身の口から聞きたい!」
ユエ「……いいだろう。」
サリーオ「どういうことだい?」
アイズ「天満、お前は何を知ってるんだ?」
真雪「天くん…。」
ジウ「黙ってろ。」
サリーオ「しかし…。」
ジウ「ユエ自ら真実を答えると言ってるんだ。黙って聞いてろ。」
ゼロの心「さて、これでユエさんの真実が明らかになる。色々疑問だったことが、解決するかもしれない。」
天満「ユエ、皆に話してほしい。何故こんなことをするのか……そして……ユエが見い出した答えを!」
ユエ「…分かった。だが先程も言ったとおり、君達にとって、重責になる真実だぞ。」
サイガ「ここまで来て、尻込みするわけないやろ?」
シャウト「そうだな、私も自分の意思で、ここにいる。」
にゅう「みんな強いにゅ〜!負けないにゅ〜!」
ユエの心「これが…ディーノの仲間。成程…いい仲間達を持ったものだな。」
天満「ユエ。」
ユエ「……『ユインシス』。」
ユインシス「…ああ。」
サイガ「誰や?」
ユエ「彼が私の所へやって来てから、全ては加速した。」
(ユエの過去)
ユエ「よし、これなら上手くいく。完成するのもそう時間はかかるまい。」
ユエの語り「私はディークに託された『月』の保護と、『エリア』を完成させるために、『錬術』の研究に心血を注いでいた。そして…。」
ユエ「…君は誰だ?」
?「『ユインシス』という。あなたが、ユエだな。俺は未来から来た……『地球』を守るために。」
ユエ「…。」
ユエの語り「驚きを隠せなかった。このユインシスが、未来から来たということもそうだったが、『地球』が破滅するという事実に。」
ユエ「君には未来が見えるというのか?」
ユインシス「ああ、あなたが生み出した『エリア』が、俺に教えてくれた。」
ユエ「…。」
ユインシス「しかし、たとえ未来が分かったとしても、変えることが出来ないんだ。だからユエ、あなたの『力』が必要なんだ。」
ユエ「私の?」
ユインシス「そうだ、俺の感じた未来を『ある者』が記す。そして、あなたが新たな未来を刻むんだ。」
ユエ「…『ある者』というのは?」
?「僕です。」
ユエ「え?」
?「僕の名前は『ユナイマ』と言います。よろしくお願いします。」
ユエ「一体どういう…。」
ユナイマ「ユエさん、これを見て下さい。」
ユエ「え?あ、こ…これは?」
ユナイマ「この『石盤』は…『土録盤』。ユインシスが感じた未来が記してあるんです。」
ユエ「…。」
ユナイマ「これが僕の『エリア』、ユインシスが感じた未来を、この『石盤』に記すことが出来ます。」
ユエ「…驚きだな。」
ユナイマ「そして、あなたの『エリア』で、この『土録盤』に記された未来を変えてもらいたいんです。」
ユエ「そ、そんなことが出来るのか?」
ユナイマ「あなたなら……『アイオーン』の『力』を唯一防ぐことの出来たあなたなら、未来を変えることが出来るはずです。僕達はそう信じて、ここまで来たのです。」
ユエ「『アイオーン』……そいつが?」
ユナイマ「そう…『地球』を破滅に導く『無』……我らが討たなければならない、絶対の『恐怖』を司る者です。」
ユエ「…。」
ユナイマ「『力』を…あなたの『力』を貸して頂けますか?」
ユエ「……無理だ。」
ユナイマ「な!」
ユエ「私達だけでは無理だ。」
ユナイマ「あ、諦めるのですか!」
ユエ「勘違いしてもらっては困る。」
ユナイマ「え?」
ユエ「『地球』の問題は、そこに生きている者達の協力無しでは、解決なんてしない。」
ユナイマ「で、ですが…。」
ユエ「大丈夫さ。『地球』には、もう一人の私がいる。そして、その者に集った者達は、必ず『力』を扱えるはずだ。」
ユナイマ「ディークさん…ですか?」
ユエ「ああ。」
ユナイマ「では早速連絡を!」
ユエ「いや…今はディークの邪魔はしたくない。」
ユナイマ「邪魔?……そうか、あなたが遺した文献に書いてあった、アオスとの戦いですね?」
ユエ「ああ、だから今は『力』を貯えることに専念したい。来るべき時に備えて…。」
ユナイマ「…分かりました。まずは『エリア』の完成、そしてそれを扱える者を…。」
ユエ「そう…育てるんだ。かなり強引な手になるかもしれないが。場合によっては、悪と呼ばれる行為をしてでも…。」
ユナイマ「『地球』を守るため…いや、銀河を守るためです。」
ユエ「……運命を変える。言葉で表すのは容易だが、難しい響きだな。」
ユナイマ「僕達自身の『力』を信じるしかないですがね。」
ユエ「そうだな…。そうと決まれば、時間がものを言う!一刻も早く『エリア』を完成させるんだ!手伝ってくれ!」
ユナイマ「はい、やりましょう。」
ユインシス「やろう、ユエ。」
ユエ「……ああ。」
(現実へ)
アイズ「ち、ちょっと待て!じゃあ何か?お前は『地球』を守るために、こんな事をしたと言うのか?」
サリーオ「アタシに『コズミックブリッジ』を造らせたのも全ては…。」
ユエ「ああ、このためだ。」
シャウト「だったら何故『地球』から生気を奪うんだ?」
ユエ「それは…。」
ユインシス「『アイオーン』が近付いているからだ。」
シャウト「『アイオーン』…。」
ユインシス「今はまだ『アイオーン』に見つかるわけにはいかない。だから一旦『地球』を殺し、気配を消し、『天球』…すなわち『月』と融合させ、『アイオーン』でさえ手が出せない程の、強い『光』を持つ惑星へと進化させる。」
シャウト「…。」
サリーオ「そうか…アンタが運命を変えると、あんなに必死になっていたのは…。」
ユエ「そうだ、私の『力』で、どれだけの運命を変えることが出来るか。何度も何度も試みて、私の『力』を少しずつでも、大きくするためだったんだ。この時のためにな…。」
サイガ「…アンタはどこまでやっとったんや?」
アイズ「サイガ?」
ユエ「どこまでとは?」
サイガ「エーテル王の暴君ぶり、アオスの二度目の復活、ワイらの戦い、全部アンタが書いたシナリオちゃうんか?」
ユエ「…。」
サイガ「どないや?」
ユエ「確かにアオス…いや、ネオスを復活させたのは私だ。」
サイガ「なんでや!なんでそないなことしたんや!」
ユエ「…。」
ユインシス「『無』に侵された者を葬るためだ。」
サイガ「はあ?」
ユインシス「王の酷烈な行い、ネオスの暴走、全ては『アイオーン』の『無』の影響がもたらした結果なんだ。」
真雪「じゃあ、アーミアにあんなことをしたのは…。」
ユインシス「いや、行ったのは、あくまでも王だ。『アイオーン』が銀河中に放った『黒の波紋』は銀河を漂い、それが微弱だが『地球』にも届いていた。そしてそれは、王に流れ込み、その者の『悪しき欲望』を増幅させてしまった。」
真雪「『悪しき欲望』…ですか…。」
ユインシス「そう、人間やエルフ、霊神や妖精、それだけではなく、草花や食物、『黒の波紋』はどんなものにでも影響を与える。…それに、少なからずいたはずだ、『無』に負け、自分の『欲望』のためだけに行動を起こす者達が。」
アイズ「……邪霊。」
サイガ「ん?」
アイズ「一年前から…いや、それ以前から異常な程に邪霊が増え、その強さが増していた…あれは!」
ユインシス「そのとおりさ。まだ『アイオーン』は銀河の遥か彼方にいるはずなのに、『黒の波紋』は、もうすでにここまで影響を与えてしまっている。」
天満「そして、ネオスにも、その影響が出ていた。」
真雪「天くん…。」
天満「ユエ…。」
ユエ「かなり強引な手だったのは認める。アオスを使って『無』に侵された者達を排除し、最終的に、やはり『無』に侵されたアオスを、君達に倒させた。」
天満「…。」
アイズ「し、しかしそれならば言えば良かっただろう!何故教えなかったんだ?」
ユエ「それが、運命に抗うことだったからだよ。」
アイズ「ど、どういうことだ?」
ユエ「先程も話した通り、ユインシスが未来を感じ、ユナイマがそれを興し、私が刻む。つまり…。」
ジウ「天満達に教えることが、『土録盤』に刻まれていた本当の未来だったんだろう?だからテメエは…。」
アイズ「…。」
ユエ「その通りだ。だから私はその逆を望み、君達に教えなかった。少しでも、定められた運命の歯車をずらせるように。」
アイズ「馬鹿な!」
ユインシス「だが、ただ見ているだけというわけでもなかったんだぞ。」
アイズ「え?」
ユインシス「君達の命だけは守るように、俺達も行動していたんだ。」
アイズ「…。」
サイガ「何かしとったんか?」
ユインシス「…これに見覚えはないかな?」
天満「……これは!剣斗が持ってた…!」
シャウト「『湧練丸』…やはりユエが関係してたのか。これはユエの作った物だと、昔ディークが言ってたからな。」
ユインシス「その通りさ。」
天満「そうか…邪霊の自爆から剣斗を助けてくれて、その『湧練丸』を渡したのは…。」
?「そう、僕です。」
皆「!」
?「僕は『ユナイマ』です。」
天満「え…僕?…ユ…ユインシス?」
ユナイマ「ふふ…今は僕の中にいますよ。」
天満「ええっ!」
ゼロの心「二重人格?それとも、二人の人物が、一つの体を共有しているのか…。」
ユナイマ「ふふ…。」
アイズ「な、何か、かつての天満と地門のようだな…。」
天満「う、うん…。」
ゼロ「さて、ユエさん。」
ユエ「…ゼロ。」
ゼロ「あなたの計画通り、皆さん『フォンス』を覚醒させることが出来ました。」
サイガ「計画通りやって!」
ゼロ「ええ、ユエさんは、『叢雲』を僕達に仕向け、皆さんを強制的に戦わせ、『エリア』を使えるようにしたんです。違いますか、ユエさん?」
ユエ「……やり方には是非があるだろうがな。」
アイズ「当然だ!」
ユエ「だが、それしか方法は無かった。悠長に『エリア』の使用を指導している時間が無かったのでな。」
サリーオ「ユエ…。」
真雪「あ、ジウさんが、ユエさんの策に乗ってやると言ったのは!」
ジウ「ああ、天満を成長させるために、オレは見守っていたというわけだ。ユエの望み通りでもあったがな。」
ユエ「『流星』、あなたなら、全てに気付いていると思った。」
ジウ「ふ…。」
天満「ユエ、これが今の全てか?」
ユエ「…ああ、そうだ。」
天満「…なら聞く。」
ユエ「…。」
天満「お前の答えは!」
ユエ「お前と同じさ。」
天満「………互いにしんどいな…。」
ユエ「そうだな…。」
真雪「天くん?」
ジウ「…。」
天満「なら、俺も迷わない!自分の信じた道を歩く!」
ユエ「ああ、互いにな。」
ジウ「それで?」
ユエ「ん?」
ジウ「今の話を信じるにたる証拠はあるのか?」
ユエ「…。」
天満「ジウさん。」
ジウ「小僧は納得しているみたいだが、他の者はお前のしてきたことを善とし、素直に受け止めることが出来るか?」
ユエ「善か……分かっている。私が行ってきた所業、決して善ではないだろう……皆、私について来てもらいたい。見せたいものがある。」
皆「…。」
ゼロ「皆さんの懸念は分かります。だから確かめましょう。自分達の目で見て。」
アイズ「ああ。」
サイガ「せやな。」
サリーオ「仕方ないな。」
シャウト「行けば分かるのだな。」
真雪「天くん。」
天満「大丈夫。ユエはディークと……俺と同じ意思だよ。」
にゅう「行くにゅ〜!真雪も行くにゅ〜!」
真雪「う、うん。」
ユエ「では行こう。」
(ユエについていく)
ユエ「ここは『天核』、見てもらいたいのは『コレ』だよ。」
次回に続く