第十一劇『真情』
天満「…俺は…。」
使者「怖いか?」
天満「そ…そりゃ……。」
使者「先程も言ったが、これは試練みたいなものだ。ここで試練を放棄することも出来るぞ。」
天満「……。」
使者「試練は過酷…真実はお前の身を滅ぼすかもしれない。生半可な意思と覚悟で臨めば、自らの精神を崩壊することもある。それほどこの真実を知り、受け入れることは難しい。だから…。」
天満「俺さ…。」
使者「ん?」
天満「俺…あなたの声…嫌いじゃないよ…。何かさ、聞いてると勇気が湧いてくる。」
使者「…。」
天満「へへ…確かに怖いさ。でもさ……約束したんだよ。大切な人を守るって!でかくなるってさ!」
使者「……ふ。」
天満「さあ、『黄泉玉』よ、俺に真実を教えてくれ!」
(天満は『黄泉玉』を触る)
ダイン「そうか………強くなったんだな…。今のオレにはお前の姿を見ることはできないが、きっとオレの想像以上に成長したんだろうな……心も体もな…。オレは嬉しく思うぜ!」
天満「父さん…。」
ダイン「なら話そう。お前の真実を。」
天満「……。」
(その頃真雪達は)
真雪「天くん……。」
サリーオ「心配かい?」
真雪「サリーオさん!……はい。」
サリーオ「心配無いさ。ジウは天満の祖父にあたる奴だ。悪いようにはしないよ。」
真雪「そうだといいんですけど…。」
にゅう「大丈夫にゅ〜!ジウ、悪い人じゃないにゅ〜!だからだから、大丈夫にゅ〜!」
真雪「ありがとう、にゅう…。」
アイズ「それにしても、長いな…。」
サイガ「せやな…もうかれこれ一時間くらいや…。」
ゼロ「少し家の中を見てみましょうか…。」
サイガ「だったらワイが見たる!………な、なんやて!」
アイズ「どうした!」
サイガ「……天満がおらへん…。」
シャウト「何だって!」
サリーオ「ちょっとどきな!ジウッ!」
ジウ「ん?何か用か?」
サリーオ「何か用かって……話は?天満はどこなんだ?」
ジウ「…さあな…。」
アイズ「キサマ、ふざけるな!天満をどこへやった!」
サイガ「せやで!話があるっちゅうから、ワイ達は外に出たんやで!」
サリーオ「ジウ、何をしたんだ?」
ジウ「やれやれ…やかましい連中だな。」
アイズ「何だと!」
ジウ「小僧を信じろ。」
アイズ「な…何を…。」
ジウ「オレが言えるのはこれだけだ。今小僧は『虚無の世界』にいるだろう。果てのない絶望を感じているかもしれん。だが本当に小僧を信じてるなら、待ってやれ。」
アイズ「キサマ…さっきから何を…。」
真雪「…天くんは戻ってくるんですね?」
ジウ「小僧次第だな。」
真雪「分かりました。私は天くんを信じます!」
シャウト「そうだな…。天満なら、たとえどんなことがあろうと、くじけはしないな。」
(天満は)
天満「くっ……そうか……だから俺はエルフでも人間でもないっていうのか……。それに……俺にそんな使命があったなんて……くそ…。」
使者「勘違いするな。使命なんかではない。どうするかは、お前自身が決めることができる。」
天満「…。」
使者「ハッキリ言って、私はお前が『どちら』を選ぼうと、どうでもいい。」
天満「何だよそれっ!あんたもここに住んでるんだろ?だったら…!」
使者「私はここに有って無い存在だ。」
天満「く…だから俺がどっちを選んでも関係無いっていうのか?」
使者「私はただ真実を管理し、時に伝え、見守る存在だ。お前が『どちら』を選ぼうと、私はただそれを見守るだけだ。」
天満「俺の選択に…世界の運命が……関係しててもか?」
使者「そうだ…。」
天満「そうか…。」
使者「だが…。」
天満「ん?」
使者「お前を信じよう…。」
天満「え?」
使者「お前が『どちら』を選ぶかは分からない。だがお前が悩み…見出した答えなら、それがお前にとって、かけがえのない真実なのだろう。私はただ、お前の答えを待つとしよう。」
天満「……へへ……卑怯だよなぁ…俺ばっか苦しませてさ。」
使者「そうか…。」
天満「でも…ありがとう。…うん、俺には仲間がいる。信じあえる仲間が。だから大丈夫さ……『その時』が来ても……俺の答えは一つだよ。」
使者「急いで結論を出す必要はないのだぞ。」
天満「いいや…俺にとって真実がいくつもあったとしても、俺が選ぶ真実はいつも一つだよ。たとえ間違っていようと、俺は自分で信じた道を進む!」
使者「…そうか。」
天満「色々ありがとう。俺がこれからどうするか、見てて欲しい。」
使者「無論だ。」
天満「また…会えるかな?」
使者「どうだろうな…だがお前が試練とも言える真実を知った…。私の役目は終わった。あとは見守るだけだ。また会えるかどうかは分からない。」
天満「残念だな…。」
使者「そうだな…。」
天満「……じゃあ俺行くよ。仲間が待ってる。」
使者「ああ…。」
天満「それじゃ…。」
使者「あ…。」
天満「何?」
使者「………自分を信じろ…。」
天満「……へへ……少しはでかくなっただろ!」
使者「!」
天満「じゃあまた!」
使者「……本当にでかくなった…。オレはいつもお前の側にいるからな……仲間を……自分を信じろ……ディーノ…。」
(真雪達は)
真雪「……はっ!」
サリーオ「どうした?」
真雪「天くんが!」
アイズ「天満が戻って来たのか?」
ジウ「どうやら終わったみたいだな。」
シャウト「天満!」
天満「やあ、待たせてごめん。」
真雪「天くん…。」
天満「ごめん真雪…心配させたみたいだ。」
真雪「ううん、天くんが無事で良かった。」
天満「ありがとう。」
アイズ「天満、お前一体…。」
ジウ「ほう……答えは決めたみたいだな……いや、まだ少し…戸惑ってるな…。」
天満「……。」
サイガ「答え?」
ゼロ「何をしてたんでしょうねぇ…。」
サリーオ「天満、何をしてたか聞いてもいいか?」
天満「………自分の『力』の使い方を教えてもらっていたんです。」
サリーオ「『力』の使い方?誰に?」
天満「試練を受けたんですよ…。」
サリーオ「……。」
ジウ「小僧、一つ聞く。」
天満「あ、はい。」
ジウ「お前は試練を受け、様々な事を知っただろう。理不尽な運命に翻弄され、己れを信じることすら厳しいだろう。それでもお前は、戦うつもりなのか?」
天満「俺の気持ちは一つですよ。」
ジウ「他を傷付け、己れを傷付け、それでも戦い血を流すのか?」
天満「そりゃ…戦うのは怖いです。でも、俺が必死で戦うのは、相手に勝つ為だけじゃないんです。俺は大切な…。」
真雪「…。」
天満「大切な人を守る為に……絶対負けない為に戦うんです。奪わせない為に…。」
ジウ「……ふぅ。お前もアイツ同様、大馬鹿だな…。本当に大馬鹿だ…。」
天満「これが俺の答えなんです。」
ジウ「…負けない為の戦い…か…。だがオレは、お前達みたいな大馬鹿にはなれん。」
天満「ジウさん…。」
ジウ「だがお前を否定する理由も、もうオレには見当たらんな…。いいだろう、『力』を貸してやる。」
天満「ホントですか!」
ジウ「『月』への道に案内してやる。」
サリーオ「ジウ!」
サイガ「やったな!」
アイズ「ああ。」
シャウト「これでようやく『月』に行けるな。」
ゼロ「ええ、いよいよですね。」
にゅう「頑張るにゅ〜!」
アイズ「それで、『銀河の架け橋』は何処にあるんだ?」
ジウ「…海の中だ。」
真雪「海…ですか…。」
ジウ「サリーオ、お前のことだ、船の用意は出来てるんだろ?」
サリーオ「ああ、抜かりは無いよ。」
ジウ「よし、では行こうか。」
天満「はい!」
(その頃ユエは)
ユエ「『フェイ』。」
フェイ「あいよ。」
ユエ「『リアリィ』。」
リアリィ「はぁ〜い。」
ユエ「『イオキス』。」
イオキス「はい…。」
ユエ「三人とも、聞いてくれ。もうすぐ『地球』から、ある者達がここへ来る。」
フェイ「マジでか?」
ユエ「その者達の中には、サリーオもいる。」
リアリィ「サリちゃんがいるの!」
イオキス「さすがは…『万薬の師』…石化を…免れたか…。」
ユエ「そうだフェイ、ゼロもいるみたいだぞ。」
フェイ「な、何だって!アイツ……マジ俺らを裏切りやがって!いいぜぇ…この俺がマジ制裁してやるぜ!」
リアリィ「やめといた方がいいんじゃないのぉ〜。」
フェイ「何でだよ!」
リアリィ「だってさぁ、フェイってば、一度でもゼロに勝ったことあったっけ?」
フェイ「う……うるさいっ!マジまだガチンコでは戦ってないぜ!」
リアリィ「確かにそうだけどさぁ、何をするにもゼロに先を越されてたじゃんか!」
フェイ「ア、アイツはマジただの頭でっかちなだけなんだよ!」
イオキス「もうよせ…悔しいなら…戦えばいい…。どうせ…ここへ…来るんだ…。」
ユエ「……。」
リアリィ「ん〜どうしたのユエ?」
ユエ「いや…三人に頼みがある。」
リアリィ「頼み?」
ユエ「恐らく彼らは『月の三爪』に来るだろう。お前達はそれぞれの場所で待機していてくれ。」
リアリィ「待機?」
ユエ「恐らく彼らは三方に別れるだろう。」
フェイ「じゃあ、マジ来た奴を倒せばいいってのか?」
ユエ「…頼む。」
イオキス「………。」
リアリィ「ユエやユナとかは?」
ユエ「私はやらなければいけないことがある。ユナイマとユインシスも、二段階の最中だ。時間が無いからな。」
フェイ「ま、マジ安心しろよ!俺が奴らをマジ片付けてやるよ!」
イオキス「では…行こうか…。」
ユエ「三人とも、頼むな。」
リアリィ「まっかせなさい!」
フェイ「マジでボコボコにしてやらぁ!」
イオキス「…。」
(三人が出て行く)
ユエ「…みんな…すまない……っ!げほっ、げほっ、げほっ………残された時間は…少ない…か…。早く……早く来い……ディーノ…。」
(天満は)
天満「確か海の中って言いましたよね?」
ジウ「ああ。」
天満「でも、今は海は渇れてますけど、大丈夫なんですか?」
ジウ「ふ…行ったら分かるぜ。」
天満「はぁ…。」
サリーオ「さあ、もうすぐで着くよ!」
天満「こ、これは!」
真雪「す、凄い!」
にゅう「水に囲まれてるにゅ〜!」
アイズ「一体…。」
ジウ「ここは『天地海』の中心だ。『オルテナ』の中心とも言われているな。」
シャウト「この水に囲まれてる中にあるのか?」
ジウ「そうだ、『オルテナの箱庭』と呼ばれてる場所だ。気脈が一番安定している場所だ。」
天満「この中に『コズミックブリッジ』が…。」
アイズの心「…だが妙だな…。何故ユエはこんなものを、まだ残しておいたんだ?……僕達に邪魔されたくなかったら、再起不能にすればいいものを………何故だ?」
サイガ「行くで、アイズ!」
アイズ「ふぅ…考えても仕方ないか…。罠ならそれ相応に対峙すればいいか…。」
ジウ「行くぞ。」
天満「………何か『不思議な力』を感じる…。」
ジウ「ここに来るのも久しぶりだな…。」
天満「この『力』……どこかで感じたことが…。」
ゼロ「この感じは…。」
シャウト「……『レストピア』…。」
天満「そ、そうだよ!にゅうから感じる『力』と同じだよ!」
にゅう「にゅ?」
次回に続く