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With Angel  作者: びたみん
With Angel
3/4

Fallen Angel

 ルナは一人、森の中に入っていった。辺りは木が日光を遮り薄暗く、湿度が高くジメジメしている。

「この辺りが堕天使のよく現れる場所……」

 ルナは光輝を戦いに巻き込まないように、こうして、自ら堕天使の下へ向かっているのだが、それは光輝のことが忘れられないという意味でもあった。

「死ぬのが怖い、か……」

 そんなことを呟きながら歩くこと数分。堕天使の居場所に着いた。いや、着いてしまった。

 暗い森の奥から、髪は銀髪、顔はルナよりもかなり大人っぽい。服の色は漆黒で、背中からは同じ羽根でもルナの持つ真っ白な羽根とは程遠い堕ちたことを表すような赤黒い羽根。

「一人? その様子だと時間稼ぎか偵察か、どっちかだと思うけど、どっち? このイリアの目についた時点で、どっちにしたって殺すことは決まってるんだけど」

 ルナは、質問に答えない。ただ何も言わずに、例え死んでも目の前の敵を足止めすることだけが、ルナに与えられた命令だから。ルナの顔に先程光輝の家にいた輝きは消えていた。

「答える気はないってことね。まあ、どうせこれから先あなたが答えることなんて、訪れないんだけどね」

 そう言い、イリアが短剣をルナに向けたとき、一つの声が聞こえた。

「っざけんじゃねえぞ!」

 光輝だった。光輝は自分の手をグーにして、そのまま思いっきりイリアの顔面を殴り付けた。イリアは数メートル飛ばされ、近くの木に後頭部を思いきりぶつけた。

「あれ、意外と効く? それより今は……ルナ! 怪我、ないか?」

 ルナは驚いて信じられない様子で、唖然として立っていた。

「光輝! なんで来たの……」

「そりゃ、お前、人が殺される、って言われてほっとける奴がいるか? それに、本当に死ぬのが怖くないなら、わざわざ俺に構わなくたって、黙って行くはずだ。だけどお前はそうしなかった。死ぬのが怖いから」

「でも……!」

 そうやって話している間に、イリアは標的をルナから光輝に変えた。恐らく、今は光輝の方が危険だと判断したのだろう。

「無駄話はやめようぜ。どうやらあのイリアって奴もお待ちかねらしいからな」

「光輝!」

 と、光輝は格好いい言葉こそ言っていたが、内心は凄くびびっている。堕天使なんて聞いただけでもう強そうだし、今更だけど逃げてしまおうかとも考えていた。

「人間……あなた、何者?」

「何者だっていい……だろっ!」

 再び光輝はイリアを殴り付けた。すると、先程と同じように怯み、後退りした。

「なんだ? 思った程強くないな」

 人間の光輝と堕天使のイリアでは身体能力にさほど変わりはなかった。むしろ、光輝の方が少し上にも見える。しかし、相手はおそらく何度も戦ってきているだろうし、刃物を躊躇わずに振り回す、人間とは全く違うものだった。

「調子、乗ってるんじゃないわよ!!」

 その後しばらく、光輝は殴り続け、イリアは短剣で攻撃する、というだけの戦いが繰り広げられた。手数は光輝の方が多いが、相手は刃物を持っているため、光輝へのダメージも大きい。

「お前、意外と大したことないな」

「そんな口聞いてられるのも、今の内よ」

「ちょっとー! 光輝、どこ行ったのー?!」

 そこにまた新たな人影が現れた。光輝を探しにきた雪だ。それをチャンスとばかりに、イリアは素早く移動して雪を捕らえ、人質にとった。

「お前……雪を放せ!」

 雪を人質にとられ、光輝は身動きができなくなってしまった。雪は天使達が見えるので、突然化け物に刃物を突きつけられ、恐怖で震えていた。

「私が、私が行くよ、光輝。あっちの本当の標的は私だから。そしたら多分、あの人は殺されないと思う」

 口を開いたのはルナ。自分が犠牲になって、雪と光輝を助けるという考えだった。しかし、そんな考えは光輝は当然拒否した。

「駄目だ。他に方法はないのか? お前も助かる一番良い方法が」

「……ないこともないよ」

「どんな方法だ?! 早く言ってくれ!」

 そして、数秒間を置いて、ルナは光輝に告げた。

「私の、天使の力を光輝に分けるの。でもそんなことをしたら、光輝はもう、普通の人間の生活を送れないかもしれない。だから、こんな方法とりたくないんだ」

「……そ、それで本当にみんな助かるのか?」

 ルナは、無言で頷いた。

 光輝は戸惑っていた。今日出会ったばかりの、何の関係もない少女のために普通の生活を捨てれるのか、分からなかったから。

「俺は、俺は……」

 そうして、迷っている間にもルナは自らが犠牲になるために、イリアの方へ向かっていく。光輝はそんなルナをただ見つめているだけだった。そんな光輝の目に映ったルナの表情は今にも、

「泣き出しそうじゃねえか……」

 ルナは今にも泣き出しそうな表情だった。ルナが地上に落ちてきてほんの少しだけの間だが、光輝といた時間がルナのそういった感情を生み出したのだ。

「死ぬのは怖くないんじゃなかったのかよ……」

 そして、光輝のとった行動はただ一つ。

「おい! お前の言った作戦、乗ってやるよ!」

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