表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微笑みの詩  作者: ここたそ
第一章
9/57

奇跡

季節はすっかり移り変わって、朝起きた時の寒さが一層厳しさを増してきた。

青森ではこの季節、当たり前のように雪かきをしている人々が目に付くが、東京ではその様な光景を見ることはあまりない。

代わりに目に入るのは、街にこれでもかと言わんばかりに飾り付けられたクリスマスの装飾だろうか。



詩衣とはほぼ毎週の様に会っている。詩衣と会うと嫌なこと全てを忘れられる気がした。

靴したに穴が開いたという小さなことから、過去の辛い失恋まで全てのことを…だ。

それが何故なのか、篤紀なりに考えてみた。

おそらくきっと、篤紀といるときの詩衣が余りにも幸せそうな顔をするからだ。

自分がこんなにも幸せそうな顔をさせてあげてるのだ、とえつに浸れる。

そんな感情にどっぷり漬かるのは、それほど悪い気もしない。




12月25日。

今日も篤紀は詩衣と時を過ごしていた。外苑の銀杏並木も今日はすっかり純白が似合うイ

ルミネーションと化していた。


「地元だとさ、クリスマスに雪が降るなんて当たり前。むしろ大雪で外に出ようなんて思わない…それがこっちだとこんなに人がごった返してるんだもんな。不思議だな」

その言葉を聞いて、詩衣は微笑んだ。手にはこんな日によく似合う真っ赤な手袋がはめられている。

「ほんと、カップルばかりだね」

言い終えた後、詩衣は少しだけ羨ましそうな眼差しを篤紀に向けた。

篤紀はその視線にドキっとした。これがクリスマスの魔法だろうか。


詩衣を喜ばせたい。そうすればきっと、自分も幸せになれるんだ。

そう思い篤紀は自分の想いを言葉にのせた。

「はたからみれば俺だだってそう見えるだろ…何なら本当にそうなる?」

早く詩衣の反応が知りたい。先走る気持ちを抑えようとそっと息を吐く。濁りもなく真っ白だ。

次の瞬間、詩衣の瞳に溢れそうなほど涙が浮かびあがった。それは詩衣の白い肌をより一層引き立たせた。

篤紀は詩衣の柔らかく細い肩を後ろから抱きしめる。

「泣くな!」

少しはにかみながらそう言い放った時、掌に水滴が滴った。詩衣の涙だろうか、それとも二人を祝福するかのようにタイミングよく粉雪が落ちてきたのだろうか…。


12月25日。

東京でも珍しくホワイトクリスマスとなった。

その日は詩衣の24回目の誕生日だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ