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微笑みの詩  作者: ここたそ
第二章
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終末

不織布の包みを開けると、そこから待ち構えていたかのように出てきたのは…、



「…う…さぎ?」



そう掌サイズのウサギのヌイグルミだった。




「…俺もその趣味はどうかと思うんだけどね。」



わけがわからずに何となくそのウサギを見つめていると、横から溜息混じりの健人の言葉。





「………、」




「わからない?意外と鈍いよな、うたちゃんて」






───それ、篤紀からだよ。





ハッとして詩衣は健人の顔を見た。健人はニヤリと詩衣に微笑む。



「…健人さん。」


「はいよ、」


「ありがとう。」



いいよ、と呟いた健人の横顔は水色の空に溶け込んでしまいそうなほど優しくて。




「…でも何でうさぎ…?」


「さあ?」





目を瞑って思考を過去へと廻らせる。




記憶の中の篤紀との思い出はちゃんと私の心で生きていて。


全部、全部、大切にしまって置いたから。



だから、きっと…




ああ、そうか。




ゆっくりと目を開けて、今日の澄み渡った空を見渡せば、聞こえてくるのは君の声。





───クラスで飼ってたウサギ、 西浦飼育登板の時いつも楽しそうに餌あげてたよな。




いつか話した何気もない会話。



篤紀と過ごした日々に、ちゃんと私が刻まれてたのなら、それは幸せ。




「…篤紀…、」


震える手でギュッとそのウサギを抱きしめる。




と、



「あれ?」



よくよくそのウサギのヌイグルミを凝視すると、ウサギは手に小さな筒を持っていた。


その筒をそっと開けてみると、中には無地の紙に書かれた一通の手紙。




『 いっぱい傷つけてごめん、でもありがとう。出会えてよかった。 篤紀 』




そこには、篤紀からの最後のラブレター。



懐かしい、少し癖のある文字を見つめると、止め処なく涙が溢れた。




大好きだった、全部好きだった。



別れてからも、ずっと好きだった。



そして、今この瞬間も大好きだ。





何度、篤紀のために泣いただろうか。


数えきれないけど、きっと今日が最後。





篤紀のことを忘れることは、この先もたぶんないだろう。


でも、思い出の中の篤紀はいつだって微笑んでいたから…それはそのままで閉まって置こう。





一筋の風が肩を優しく撫でた。


久しぶりに今日は、ぐっすり寝れそうだ。


このウサギと共に。








篤紀とのウサギの会話は…、第8話で出てきてたみたいです。

たぶん次で最終話となります。

読み苦しい点、沢山あったと思いますがここまで読んで下さって本当に感謝です。

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