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微笑みの詩  作者: ここたそ
第二章
53/57

躊躇

バレンタインデーの騒動から一月ほど、そうホワイトデーの季節がやってきた。





この日、詩衣は健人に呼び出されている。





行くか行かないか悩んだものの、あのキスのことをハッキリさせたかった。






嘘、何事もなかったかのようにスルーしてしまいたいとも思う。





相反する二つの気持ちが激しく心の中で摩擦を起こし、結局は行くという答えしか持ち合わせていないのだ。






「…んー…、」





一応、服とか悩んでみたりしてはいるものの、どちらにしろ健人のペースに振り回されることをいい加減学んだ詩衣。




何でもいいや、という結論に達しフリンジが可愛らしいピンクのワンピースに袖を通した。






待ち合わせは…、あの時の公園。






溜息を吐きたくなるような気持ちを押さえ、待ち合わせ場所へと向かった。





「よー…、」





既に到着していた健人は、詩衣に気づくと右手をヒラヒラと振りかざした。







ちゃんと女の子より先に来て待っているんだから、そういうところは流石だ。






「こんにちわ。」




「ちわ。」







ハハッと笑う健人に感じた違和感。






健人と会う時はいつもあの店で、しかも夜だから、妙に色気たっぷりだったけど、今日は違う。






昼間の健康的な日光に照らされている健人は、いつもよりも優しい笑みを帯びていて。








───何だ、爽やかじゃん。





そんなことを考えながら、クスリと思わず微笑んでしまった。





「…ん?」




そんな詩衣に対して、健人がグッと顔を近づけてきたので、





「あ、何でもないですっ、」




詩衣は慌てふためき、手を突き出すと、今度はそれに健人がニヤリと微笑んで。






結局、二人して笑ってしまった。



「ほい、ホワイトデー。」




ピンクの包装紙に包まれたそれを、健人は詩衣の目線の高さに合わせてゆらゆらと振りかざした。





「…ありがとう、ございます…。」




詩衣がバレンタインの日に健人に渡したチョコレートは、健人の為に用意した物ではないので、言葉とは裏腹に受け取るのを一瞬躊躇した。






「ほーら。」






そんな詩衣を見透かして、健人はピンクのそれをズンと詩衣の顔に近づける。





「…いいの?」




「いいよ。」






ありがとう、再度そう呟き手でそっと包み込んだ。





「…何ですか?」



「んー…、帰ったら開けて。」




「…はい。」





ニコッと笑った健人は、いつかのベンチを指さした。



「ちょっと、座って話そうか?」




ゴクリ、思わず唾を飲む。




詩衣の腕を少々強引に掴み、半歩前を歩く健人の横顔が、何故だか切なく思えるのは…どうしてだろうか。





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