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微笑みの詩  作者: ここたそ
第二章
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「…大人でしょ?浩介さんって。」


合コンが終わったあと、家路に向かう電車の中で千里が尋ねて来た。


車内はもう終電間際だと言うのに、疲れた表情を浮かべたサラリーマンで溢れかえっていた。



「うん。…優しいし、だけど気さくで紳士だった。けど…」


「けど?」


「凄く惹きつけられるのも本当だけど、ちょっと苦手かも。」


詩衣は素直な気持ちを千里に話した。矛盾しているかもしれないが、どちらも浩介に対する本当の気持ちだ。


「どうして?」



「浩介さんは…やっぱり凄い大人で。自分が子どもっぽく感じちゃうんだよね。心の中まで見透かされていそうな…。」


「なるほどね。」


「篤紀は…、篤紀は適度に子供っぽくてだから余計にそう感じるのかも。」


「そっか~、二人いい感じで話してたからひょっとしてと思ったんだけどなぁ。」


千里は肩を竦めた。

顔には残念そうな表情を浮かべている。

思ったことがそのまま顔にでるのが、千里の悪いところでもあり、またいいところでもある。



「浩介さん自身は凄く魅力的だと思うの。でも、私の心の中にいる篤紀が…まだ当分出て行ってくれそうにないんだよね。」


千里が、う~ん残念と呟くと同時に電車が揺れ、二人は一瞬体制が乱れた。

体制を整えると、また千里が話しはじめた。


「浩介さんも傑も結構モテるんだけどな。」


「そうなんだ。」


言いながら詩衣はゆっくり頷いた。

それを確認すると、千里は再び視線を窓に戻した。


「バレンタインの時、わざわざスタンドに持ってくる女の客いたくらいだしね。…まぁ、私も客ではないけどその一人か。」


「えっ?」


詩衣は驚いた様子を隠すことなく、少々大袈裟なくらいのリアクションを浮かべた。


「傑にね、あげた事があるんだ。チョコレート。」


「…それでどうなったの?」


今現在、千里と傑が付き合ってないことを考えると大方の予想はついたものの、本人の口から真相を教えて欲しかったため、詩衣は聞くことにした。


「それがどうもなってないんだよねー。『ありがとう』って笑顔で受け取ってその場でチョコ食べて『美味しかった!』って言ってそれっきり。友達のまま。」


「そっか…。」

詩衣は言葉なく立ちすくんでいた。その様子を見て、千里が軽く笑いながら喋りはじめた。


「もう今となっては笑い話だけどね。…けど、今日久しぶりに会ったらあの頃の気持ち蘇ってきちゃったかも。」


そう話した千里の表情はまるで恋する乙女そのもので、詩衣は少しだけそんな千里を羨ましく感じた。





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