表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微笑みの詩  作者: ここたそ
第二章
41/57

無情

「それでは報告しまーす。うたちゃんはお前とのことはもう過去のこととして、乗り越え至って元気でしたー。カラオケでも非常にテンションが高く、美奈子と一緒に『とんぼ』を大熱唱!それはそれは長渕も仰天の『お~お~おお~おお~』でした!以上。」



帰省したときの詩衣の様子を健人に尋ねた結果がこうであった。

篤紀は苛立ちを通り越し、目眩がした。


「おい、冗談と長渕の話はいいからさ…。詩衣は元気なの?」



この日篤紀は、用事もないのにわざわざ健人の店に飲みにきた。

それは他でもない、詩衣の様子が知りたかったからだ。


自分のことをまだ少しでも思っていてくれていることを期待していたが、健人の悪ふざけにより今だその答えは知りえない。


「元気か元気じゃないかって聞かれたら、まあ普通じゃないの?いくら失恋直後でも赤ら様に落ち込んだ姿を他人に見せるやつなんてそうそういないだろうし。見た感じじゃわかんねぇよ。」


最もな健人の答えに何も反論を持ち合わせていない篤紀は、別の質問に切り替える事にした。


「…俺のことは?何か話してなかった?」


すると健人の顔つきは少々険しくなった。



「それを聞いてお前どうしたいわけ?」


「…どうって…」


「お前さ、わかってるの?」


何がだよ…と声にする前に健人が話を続けた。



「うたちゃんが心の何処かでまだお前のこと好きでいるの期待してない?…いいか、お前はふられたんだよ。はっきりもう無理って言われたんだろ?それが答えだよ。例えまだお前のことを好きだとしても、お前との未来をうたちゃんは選択しなかったんだよ。」



健人の言葉が心に突き刺さった。

自分が戻ってきてほしいと言えば、詩衣は戻ってくる様な気がしてた。


不意に、自分が今までしてきたことの重さに気づかされた気がした。

詩衣よりも華を選んだのは自分なのに、この後に及んでまだ詩衣のことを思っている自分がいることをはっきり自覚した。

しかし、もう遅い。

今更どんなに詩衣を思ってももう詩衣との時間を取り戻すことは出来ないのだ。



「もう忘れてしまえよ。…それがお互いの為に一番いい。」


健人の言葉が静かな店内に響き渡った。



「そしてお前は、華との未来を考えろ。」



この日のビールは、苦々しく感じた。



どうしてだろうか…一粒の涙がこぼれ落ちた。

それがグラスの中に吸い込まれ、ピチャッと音を鳴らした気がした。



あれ程までに、自分を愛してくれた彼女はもういない。









長渕ファンの方…すみません。。

こんな使い方ですが、気を悪くしないでください…

ちなみに私は『とんぼ』好きです。



引用:長渕剛『とんぼ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ