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微笑みの詩  作者: ここたそ
第一章
33/57

懺悔

「5、4、3、2、1…」


メラメラと力強く揺れ動いている灯火は、詩衣によって吹き消された。



二人は宿である旅館で、夕食をとった後、各々露天風呂に入り、部屋でテレビを見ていた。

その後、12時10分くらい前のタイミングで、仲居さんが部屋にケーキを届けに来てくれた。

それは、篤紀が詩衣のために用意したものだった━━━共に詩衣の誕生日を祝うために。



部屋の明かりを全て消し去り、蝋燭に火をつけると、窓から見える海が反射して何とも幻想的な雰囲気になった。



そして12時を回ったとき、詩衣はその蝋燭を優しく吹き消したのだった。




「詩衣、誕生日おめでとう。」

篤紀はお決まりの台詞を口にした。

「ありがとう。」

詩衣もまた、通り一遍の返答で答えた。



奮発した宿代に、交通費、ケーキ代…、決し

て安い物ではなかったが、これは詩衣に対する謝罪のつもりであった。

いくら詩衣が望んだ事とはいえ、詩衣を傷つけているのに違いはないのだから。



そして、もう一つ。


「詩衣、これ…誕生日プレゼント。」


篤紀は鞄の中から、手のひらサイズの小箱を取り出し詩衣に手渡した。

茶色の小箱は、可愛らしいリボンで結ばれている。

詩衣はそのリボンをほどき、小箱を開いた。


「…これ…」


そこには、シルバーの指輪があった。細めのデザインで中央には十字架のマークが施されている。




婚約指輪ではないものの、そこそこ値の張る物であろうことは、詩衣も十分理解できた。




ちゃんとするつもりだった。

この指輪には、篤紀のこれまでの懺悔と決意が込められている。


あれから華は、離婚を決意し、今そのための準備中をしているところだ。

離婚した後は、今暮らしている家を出て実家で子供を育てるつもりだ。


しかし、華の旦那も親権を放棄しようとはしていないため、色々と事が思うように進まず手間取っていた。



正式に華と旦那の離婚が決定したら、篤紀はもう華と会うのは辞めようと思っていた。


正直に言うと、肉欲に負け一度だけ華と寝てしまったことがある。

行為に及んだ後、篤紀は激しく後悔した。

いくら詩衣が、華とのことを公認してくれているからと言って、詩衣と別れてもいない状態でこんなことしていいはずもない。



篤紀は自分の行動を恥じ、詩衣を大切にすることを決心した。



この指輪はそのことを証明するために用意したものだった。




しかし、次の瞬間詩衣は声を激しくあげ突然泣き出した。

子供が母親に叱られて泣いているときのようなそんな感じだった。


想像だにしていなかった、詩衣の行動に篤紀は呆気にとられていると、詩衣は声を絞りだし話した。



「あ…あつのり……ごめ…ごめん。こ…これは受けとれな…い。」


尚も興奮冷めやまぬ状態のまま詩衣は続けざまに話した。


「もう…も…もう限界…だよ。わ…別れよ…う。こ…この旅行…が…お…終わった…ら。」




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