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微笑みの詩  作者: ここたそ
第一章
30/57

苦難

気がつけば、人肌恋しい肌寒い季節になっていた。

12月に入り街は早くもクリスマスムード到来…と言うわけでもなく、変わりない風景だ。

詩衣においても、毎朝8時45分に起き身支度を整え出勤するという、変わりない毎日を過ごしている。

ただ一つだけ変わったのは、詩衣と篤紀━━━二人の関係だろうか。

具体的には…、二人で過ごす時間が減った。

無論、篤紀は華のところにも行っているので、当然といえば当然なのだが。

とはいえ、篤紀が華のところで何をしているのかについて詩衣は微塵も知らなかった。


一線を超えているのかいないのか…気にならないといえば嘘になるが、篤紀に尋ねることは一度もしなかった。

華と篤紀の関係に口を出す権利はないと思ったからだ。

この公認の二股(?)という、何とも奇妙な、関係が3ヶ月くらい続いている。



当然、自分で選択したことではあるが、辛くて涙してしまう日も、あった。

その回数は…決して少なくない。

けれども、詩衣は篤紀の前では泣かないように務めた。

勿論、篤紀に嫌われたくないという感情からでもあったが、華に対する対抗心からでもあった。

華という、自分以外に篤紀の愛情を受けている女性に対して負けたくないという気持ちが膨れ上がった。

篤紀の前で泣いているようでは勝ち目はないと思い、出来るだけ明るくいるようにした。



そんな、なかなかハードの恋愛をしている詩衣であるが、今日は幸せな日であった。

つまり、篤紀と過ごせる日だ。


「そういえば…、もうすぐ詩衣の誕生日だね。あれから一年も経つのか…。」

伏せ目がちに篤紀が言った。その姿は哀愁感たっぷりだ。


もう一つ変わったことがある。

「うた」と呼んでいた篤紀だが、何時の間にか「詩衣」になっていた。

これにより、再開した時の「西浦」という苗字呼びから、付き合いはじめてからの「うた」という愛称に代わり、「詩衣」という名前呼びになったわけである。

それが何故なのかは、詩衣は知る由も無いが。



「詩衣、去年の約束覚えてる?」

急にふられた話題に、詩衣は目を白黒させていた。

そんな詩衣を横目に、篤紀は微笑み続けた。

「旅行に行こう、誕生日に。」

「う…、うん!」

驚いたものの、詩衣の返事は即答だった。

覚えてくれていた去年の約束、一緒に過ごせるクリスマス(兼詩衣の誕生日)…、それだけで幸せだと思えた。


「行きたい場所、考えておいて」

その一言に、詩衣は頷いた。

微笑みながら、頷いた。








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