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再会
時刻は夕方5時を過ぎ、会社帰りであろうサラリーマン達でその店は賑わっていた。
詩衣は入り口のすぐ横にある、3段に並んだネクタイ棚の品数を確かめ商品を補充した。
− 今日の売れ行きもおそらく前年比くらいだろうか−
そんなことを思いながら手だけを動かしていた時、どこか懐かしい顔をみかけた。
彼はネクタイコーナーの斜め右にある、革靴が陳列されているスペースで、少し前かがみになりながらタッセル付きの革靴を眺めていた。
なぜだろう、その男性がとても懐かしく感じたがすぐには誰だか思いだすことが出来なかった。
「すみません!」
ふいにその男性が若干興奮気味の声で、右手をあげながら定員を呼んだ。
男性があげた右手からはほどよく筋肉のついた手首と、スーツからすこしはみ出たオフホワイトのシャツがのぞいていた。
詩衣は彼のもとにかけより、「こちらのシューズ履かれてみますか…」と言いかけたその時、彼の動きが止まった。
どうしたんだろう…不思議に思い彼を見てみる。
彼は詩衣の細い首筋にかけられた社員証をその鋭い眼差しでみた後、やっと言葉を発した。
「やっぱり!…西浦だよな?」