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微笑みの詩  作者: ここたそ
第一章
26/57

願望

「…篤紀、何か隠し事してるでしょ。」



詩衣が放ったこの台詞に特に深い意味合いはなかった。



大手お菓子メーカー「マリコ」が、秋の新商品として発表したチョコレート菓子(余談だが、そのお菓子のキャッチフレーズは、貴方と彼を繋ぐ濃厚なKissである。…冬でもないのに。)を、甘い物に目の無い詩衣は、それを大人買いし、冷蔵庫に保存してある。

ココア、キャラメル、野イチゴ、ビター、そ

して何故かスイカ味という季節感を全く無視した5種類が発売されたのだが、詩衣はそれぞれ10個ずつ計50個を近所のスーパーでまとめて買った。

毎日、1パックずつ夕食後に食べていたのだ

が、どうも数が合わない。

具体的には、まだ残っているであろう数より3つほど少ないのだ。

そこで詩衣は篤紀が詩衣に内緒で食べたに違いないと思い、先程の言葉を発したのだった。(事実、詩衣の家に自由に出入りできるのは篤紀しかいないので、100%篤紀が食べた

のだが。)


勿論、詩衣はその事に対して、本気で咎めるつもりなどなく、寧ろじゃれあいの一貫として言ったつもりだった。




しかし、篤紀は詩衣のその言葉に完全に想定「外」の反応を示した。

大袈裟なくらい神妙な面持ちで、顔面には狼狽の色が浮かんでいる。


そして篤紀は、地面に掌をつき完全に土下座のポーズで「ごめん」と一言だけ口にした。


流石に詩衣も、たかがチョコレート菓子の事でそこまで真剣に謝られたのでは些か居心地

が悪くなり、戯けた柔らかい表情を篤紀に向けた。

「やだなあ、篤紀。私別に怒ってないよ…そりゃあ、チョコレートは好きだけどさ。」

「………え?」



どうやら、篤紀はチョコレート菓子のことを詩衣が言っていて、自分が思い違いをしているということに今気がついたようだった。




「だから…冷蔵庫のチョコレート!篤紀勝手に食べたでしょ?」

「あ、…ああ、ごめん。」

篤紀の異様なまでの慌てぶりに詩衣も、何かが変だと思い、続けた。

「私は、チョコレートのこと言ってたんだけど…。篤紀は違うの?」


「…いや。」

篤紀からの返事は、何とも歯切れの悪い物だった。そして。この返事が詩衣の中で確信に変わるものとなった。

「…何を隠してるの?私に秘密にしていることでもあるの?」

詩衣は真っ直ぐな眼差しで篤紀を見た。

篤紀も同じ様に詩衣を見ている。

しかし、その瞳の奥に詩衣は映っていない。

詩衣の「方向」を見ているだけで、篤紀の目に意思は感じられなかった。


やがて、暫しの沈黙を破るかの様に篤紀が話しはじめた。

何かを決心したように、ゆっくりと口を開いた。



「うた、ごめん。…5日前、華と会ったんだ。」



この話に出てくる、人物•企業は実在するものとは一切の関係がありません。

全てフィクションです。

ですから、軽い気持ちで読み流して頂けると有難いです。

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