第一章(1)~世界破滅宣言~
「責任取ってください」
「…はい?」
森岡高校の二年生になった僕、桐江綾斗の初日はこうして始まった。
朝、教室のドアを開けると、目の前に学年でも有名な美少女、小柴陽菜が立っていた。
セミロングの綺麗な髪の下からのぞく大きな瞳が印象的な美少女である。
身長は低めだが、それ以外の発育は良いようで、男子の憧れの的であるのは間違いない。
疑問なのは、
なぜ彼女がここにいるのか。
なぜ話したこともない僕に話しかけてきたのか。
そしてその発言の意図はなんなのか。
周りには二年次の新しいクラスメイトもたくさんいる。
彼らは、女子に『責任取ってください』なんて言われる男子をどのように見るだろうか。
答えは言うまでもない。
みんなの僕を見る目は、完全に害虫を見る目になっていた。
「…ど、どういうこと?」
やっとしぼり出した言葉だった。
沈黙は肯定と捉えられてしまうという経験から、とにかく発言が重要な…
はずだった。
「…うわ、ここまできてとぼけるのかよ…」
「人間の底辺とはああいうヤツのことを言うんだろうね」
「ギョーザが食いたい」
なんだか逆に周囲の反感を買ってしまった。
「あれだけのことをして、認めない気ですか!?
私たちの未来を奪ったというのに…」
…さらに危険な発言を。
これじゃ僕がまるで複数の女の子を蹂躙したみたいじゃないか!
しかし運命は過酷。
もはや僕がいくら弁解しても、誤解はとけそうもない。
むしろ火に油を注ぐことになる気も…。
「出席とるから着席しろー」
まだ僕の運は尽きていなかったようだ。
担任の先生が来たので、小柴もさすがに諦めて教室を去ってくれた。
去り際に肩をぶつけてきたが…。
(僕、あの子になにかしたのかな…?)
まあ危機も去ったし、気にしなくてもいいよね。
きっと人違いだ!
僕は気楽な気持ちで自分の席につく。
クラスメイトの視線が凄まじく痛いのは忘れることにしよう…。