第43話 第二迷宮攻略、開始。
ついに主人公が本領を発揮する?
あ、パーティは住民カードで管理してる。
姉ちゃんがリーダーで無言処理してたんでそこらへん書くの忘れてた……
茂崎第二迷宮の事務所は、開いてはいたが暇そうな受付嬢以外に人がいなかった。
「ちょっと確認だけど、今、中にいるのって何人くらい?」
「はい、3組21名です」
随分とパーティ数に対して人数が多いな?
まあいい、今気にするところはそこじゃない。
「退避勧告って出せるかな?第二の底まで一騎駆けしなくちゃならなくなった」
「難しいと思います。ひと組めの6名は入ったのが昨日の朝イチですし、もう一組も通常程度の進行ができているなら既に20層近くにいる時間かと。
最後の二人だけは入ったばかりなので呼び戻せるとは思いますが……
……って、おひとりで、何をですって?」
「茂崎迷宮の後半は、両迷宮同時攻略じゃないと進めない。
姉とリケラが第一側の合流点、80層で待機中だ」
「……は?80?第一の、80ですか?」
だめだ、受付の姉ちゃんが宇宙猫になっちまった。話にならん。
「まあいいや、通告はしたからな。
あと多分茂崎迷宮は潰すことになると思う。
コアが二つはともかく、ダンマス二人とか、深層が悪質すぎる」
薬品やその原料が入手できる迷宮は他にもある。
リケラによれば、茂崎じゃないと手に入らないものは例のルミナスパウダーくらいらしいし、これも収納に死蔵して、世に出さなければ済むことだ。
恐らく、ダンジョンマスターの片方は倒さざるを得ない、そんな予感もある。
何故なら、そうしないと、もう一人のもとにたどり着くことが、多分できない。
今は、そのもう一人、つまり深層側にいるのが五斎さんであることを祈るだけだ。
問題は、五斎さんじゃない方がどこの誰か、なんだけどね……
今はそれに関する情報はないからなあ。
大学にダンジョンができた時には、十人以上の行方不明者が出ているそうで、見当が付かないのが現状らしい。
オレも通い始めたばかりで、学生側どころか、教員教授勢の名前も全部覚えきれてない時だったしなあ、2回目の召喚食らった時って。
「だ、ダンマスが二人??コアがふたつは、二つ迷宮がある以上判るのですが……」
「第一も第二も50越えなんだから、想定はしてしかるべきだろう?
ともかく時間が惜しいんで行かせてもらうよ」
3組ならそこまで迷惑にはならんだろうし、駆け抜けでいいか、と、魔法陣に飛び乗り、第一層へ向かう。
探索者規定に則った申告と通告はちゃんとしたからな!あとは知らん!
茂崎迷宮第二の構造は、判明している限りの範囲においては、第一のそれと同じだ。
というわけでいきなり湿地帯だね!
幸い受付嬢の言っていた、最後に入ったという男性二人組は、入り口のすぐ近くにいた。
「すいません、今からちょっと駆け抜けやらなきゃいけないんで、できたら退避願います」
「うん?垂水の英雄君じゃん。ソロ踏破狙うの?」
「いや、合流地点に姉ちゃん達を待たせてるんで急ぎたいんで」
なんすかその垂水の英雄って。知らんぞそんな呼ばれ方。
「……マジで中繋がってんのか!うん、佳境っぽいのは判った。ここ、潰すんだな?」
「多分。かなり底の方がヤバいんで、維持は無理だと思う」
「おっけー、健闘を祈るが、俺らの前に入ったの、垂水のアホボンのはずだから説得は無理かも!」
「あ、板に情報流していい?あとアホボンの前に入った奴の消息判ったらあとで教えて」
「うわあマジか、情報ありがとう!!ああ、探索者板にも話は流しておいて!」
よりにもよって、人数が多い団体、アホボン……例の姉ちゃんのストーカーときたよ!
なんでこんな時にいるんだよあいつ!
戻っていく善良な探索者たちを見送ったので、あとは見通しがいいのを良いことに、全力疾走だ。
最低限の結界は張るけど、泥んこになるのはもう仕様なので諦める。抜けてから〈クリーン〉でいいし。
隠蔽も今回は使わない。噂のアホボンがいたとしても、そこまで遠慮してやる必要はないだろう。
もう一組はアホボンより前に入ってる以上、すぐ遭遇はしないはず。
10層目まで駆け抜けてから、追いついてきた亀に適当に範囲雷魔法をぶっ放せば、ボス扉もさっくり開く。
ここのボスも大亀だから、リケラに倣って炎の魔法で炙れば瞬殺。
ドロップ品の方は放置でもよかったんだが、今回は勇者セットにある〈オートコレクト〉を有効にしてある。
ダンジョン内限定で、ドロップ品を自動収集する便利機能だ。
分類が技能でもスキルでもないのがちょっと謎だが、気にしてはいけない、らしい。
普段これをオフにしてあるのは、どうもゲーム感覚になりそうなのが嫌だからだ。
オレが今いるのは現実で、ダンジョンは人によっては命がけの場所だってのを、忘れるのはマズい気がするんだよなあ!
続く11層からは草原、そして相手は蛇だが、これも全スルー。
こいつらは全部鈍足なので、19層に入ったところで少しだけ足を緩め、集めた蛇を雷魔法で一網打尽。
ところがだ。
ボス部屋が、閉まっている。中に誰かいる、らしい。
誰かってか、ここまで誰にも遭遇しなかった以上、先行の後発側、アホボンどもに決まってるんだがな!
あのクソボン、こんなところでオレと姉ちゃんの邪魔しやがるのか。
いや、流石に今回のこれはマグレだ、先方に非はない、はず。
なお10層と20層のボスは倒したパーティが外に出れば即リポップだ。
さっさと出てこい、時刻と階層的には、休憩取るような時間でもねえだろう。
いやこっちに向いて出てくるわけじゃないな、落ち着け、オレ。
15分ほど待ったろうか。
ギィ、と妙な音を立てて扉が開き、一人だけ……アホボンとは無縁そうな少女がよろり、と半身を現した。
但し満身創痍で、毒で今にも死にそうだ。
一応、治癒魔法は掛けておこう。
「うぐ、あ……ありがとう、ございます……」
「このくらいは問題ないが、ここ、こっちにも出られるんだ?」
きちんと礼を言われたので、解毒魔法も掛けてやる。極限状況でも礼儀を忘れない人は嫌いじゃないよ、オレ。
「壊滅した場合に、生き残りがいれば、出られる仕様ですが……
わたくしは、囮としてパーティから放り出されたので、出られるのだと思います……」
へえ、パーティ単位で認識するんだ、あの蛇。
それにしても……よくこのレベルで生きてたな、この子。
ここの推奨レベルは知らないが、Lv12ってことはないだろう?
「ほかの連中は?」
「私が出られた以上、多分全滅しておられます……確認はしていませんが……」
彼女が完全に出ていなくて、まだ扉が開いているので、ちょっとだけ中を覗く。
前回とは色の違う大蛇が、こちらに興味を示しつつも待機している。
……こいつら、探索者を倒すとパワーアップするんだ?やな仕様だな。
少女を引っ張り出してバタンと一旦ドアを閉める。
転がるアホボンらしき太鼓腹と倒れ伏す取り巻き連中は見えたから、もうどうでもいい。
誰も息してなかったし。
勇者セットにも、蘇生魔法はないんだよ。死んじゃったら、それでおしまいだ。
「え、あの、助けは」
「もう全員死んでる。蘇生なんてゲームみたいな魔法は持っていない」
そもそも助ける義理もないしな。
「わたくし、一人だけなら、生き返らせることが、できるのですが」
「閉めちゃったから、死体が吸い込まれるまでもう開かないよ」
「ああ……」
オレの答えに落胆する少女。
いや待て。
あのアホボン、下手したら世界に一人しかいないかもしれない蘇生持ちを囮にしたの?
馬鹿?アホ?頭沸いてる?それとも空っぽ?
30分ほど待ち時間ができたので、その間に話を聞く。
彼女は鑑定で蘇生系のスキルを持っていると明らかになったので、アホボンがレベリング目的で連れ出したらしいのだが、あいつはアホだから……本当にバカだったからか、本来の目的を途中で、というか、自分の手に余る変異体が出てきたボス戦にパニックを起こした結果、忘れたらしい。
性的な意味で手を付けられることだけはお付きの連中が阻止したそうだが、それだって、彼女のスキルが処女じゃないと使えないものだったら困る、という酷い理由で。
いやぁ、馬鹿に付き合ってる取り巻きもクソばっかだな!!
この子どう見ても未成年どころか、下手したら小学生だぞ?!
いや、年齢聞いたら中学生だったけど……それでもアウトだよアウト!
主人公が何かするまでもなく、台詞もなく退場するアホボンである。
なお変異の原因はもう一つのパーティも討伐失敗で全滅したせい。




