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セラフィーヌの幸せ結婚 ~結婚したら池に入ることになりました~  作者: れもんぴーる


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セラフィーヌサイド 5

 しかし義父となったクローズ侯爵からの返信はなかった。

 返信の手紙を握りつぶされているのか、職人が手紙を出さなかったのか。

 もしくは、考えたくもないけれど義父は知っていて愛人のことくらいで騒ぐセラフィーヌのことなど歯牙にもかけていないのかもしれない。

 もしそうなら、悲しいけどもうこの侯爵家にとどまる意味がなくなってしまう。

 どうしようかと悩んでいた時、なんと麗しのお義父様が突然王都に帰ってきたのだ。


 先触れもなかったようで、屋敷中が大騒ぎで出迎えの準備をした。

 セラフィーヌもいそいそと出迎えに向かった。

 するとメイドが応接室で出迎えることになっていますと応接室に案内をされ、外から鍵をかけられて出迎えることが出来なかった。

 久しぶりのお義父様との逢瀬を邪魔するあの年齢詐称の化粧お化けのメイドは絶対に許さない。


 出迎えなかったことが原因なのか、義父は監視するような目でセラフィーヌを見ており、セラフィーヌは気落ちした。

 あの様子ではセラフィーヌの手紙を見てガエルを問い詰めるために帰ってきてくれたのではないだろう。

 義父と話そうにも告げ口ができないように、うまく時間をずらされたりしてなかなか会う機会がなかった。

 それでも同じ屋敷でありふいに義父と顔を合わせることもある。嬉々として話しかけようとすると夫のガエルや執事、メイドがグルになってさりげなく言葉をはさんだり、誘導したりして話す機会を潰される。

 もっとも、出迎えの日に義父にろくに挨拶もできないと烙印を押されてしまったセラフィーヌが、ここでの仕打ちを訴えたとしても信じてもらえない可能性が高くなっているかもしれない。それこそ屋敷中の人間が口裏を合わせるはずだ。



 義父の帰還はセラフィーヌを落ち込ませただけではなく、屋敷の雰囲気をも一変させた。

 荒れた庭や掃除の行き届いていない屋敷について義父は使用人たちを叱り飛ばした。それまで仕事をさぼっていた使用人たちがバタバタと慌てふためいているのを見て、少しすっきりした。やはり、クズガエルと違ってお義父様は見るべきところは見てらっしゃるのだ。


 義父が屋敷にいるためガエルまでもがいるのでうっとうしいことこの上ないが、代わりに会うたびに嫌味しか言わない愛人のジョゼットの顔を見ることもない。

 使用人たちも自分たちの立場を思い出したのか、ようやくきちんと仕事をするようになり庭が整備されて、屋敷もきれいに磨かれるようになった。

 もちろんセラフィーヌへの目立った嫌がらせをする暇もなくなり、セラフィーヌの世話も放棄することもない。義父のおかげでとても過ごしやすくはなった。



 そんなある日、仕事で帰りは夜になると言い残して義父は外出した。

 義父が屋敷にいる間は、使用人たちの謎の団結力でなかなか会う機会がつかめず、自由に部屋の外に出ることが叶わなかった。ようやく今日は自由の身になった。

 使用人たちでさえ、張りつめた空気から解放されたようだが、義父が領地から連れ帰った使用人たちの目があるためサボらずに働いているようだ。

 だが私が義父の使用人に近づこうとする時だけは一目散にやってきて、義父の使用人たちに相談する振りをして連れていってしまう。

 セラフィーヌは仕方がなく、外の空気を吸いに庭に出る。

 義父付きの使用人に告げ口されるのを恐れてか、メイドと使用人が付いてくる。


 義父が来るまでは雑草だらけだったが今は手入れされ、花が咲き乱れた美しい庭に出て、セラフィーヌはほうっとため息をつく。

(お義父様と話すチャンスがないわ。あの様子では私の手紙は届いてないようだし……。それどころかきっと厭われているのよね。やはりお義父様も愛人のことを認めてらっしゃるのかしら。あ、でも!)

 ガエルと執事から、待遇やジョゼットの事を義父に言いつけたりすれば実家に迷惑がかかることになると、脅しめいたことも言われていたことを思えば、お義父様は知らないとみていいのかもしれない。

 


 そうなれば平民の愛人と別れたと嘘をついているガエルの方が不利なはず。

 義父と話す機会を使用人たちもことごとくつぶしてくれるが、なりふり構わず大声で話しかければ、訝しがられるとは思うが耳を貸してくれるかもしれない。

 侯爵家の体面を守るためにセラフィーヌの訴えは黙殺される危険性は無きにしも非ずだが、義父はそんな人ではないと信じたい。


 涙ながらに訴えるセラフィーヌの手を取って、

「今まで済まなかったな。この責任は私がとろう。一緒に領地に来てくれないか」

と、義父に懇願され、あちらで二人きりでめくるめく大人の時間を過ごして……うわあ! 大人の階段上っちゃう⁈

 幸せな妄想にふふふと笑みを浮かべていた時、嫌な声が耳に届いた。



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