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おんどろび

作者: 空暮

 これも新潟の知人から聞いた話です。新潟の住込み寮で噂になっている話だそうです。



 私がその寮で夏、住込みのバイトをして働いていた時の話です。

 その寮はエアコンなどは付いておらず、古びた扇風機しかついていませんでした。そのため、夜眠る時は割り当てられた部屋の窓を開けて寝ます。

 その寮にはルールがあり、


 『夜寝る時は窓は開けていいが、部屋の扉は閉めておく』


 というものでした。私はバイトの先輩たちから、

 「それだけは守った方がいいよ」

 と言われていたのですが、その日は寝苦しく、とてもとても寝られるような状態じゃなかったのです。

 ふと、夜中トイレに行った時、部屋の扉が開くと風がよく通り抜ける事に気が付きました。廊下からの風が、気持ちよく部屋を抜けるのです。


 「なんだ、扉開けた方が涼しいじゃん」


 バイトの先輩も寮長も、別に怖い人じゃないし構わないだろう、と思って部屋の扉と窓を開けてその日は寝る事にしました。


 それから10分ほどした事です。ようやく寝付けそうな時のことでした。


 さわさわ、さわさわ……という気持ちのいい夜の草木が揺れる音にふと、ボンヤリと目を開けると、

 

 黄色い目をした男が、私を覗き込んでいました。


 息を飲み、動けずにいると、


 おんどろび べびでいぞのか


 と言われました。目は、膿んだように黄色く、暗闇の中でもまるで蓄光のキーホルダーのように光っていました。

 無言の暗闇の中、目を閉じれずにいて気が付きました。その目は、蕩けていました。カスタードクリームに似ていて、眼窩から流れて垂れてました。

 見えていると気付かれたら――と咄嗟に思い、私はそのまま動かずにいました。

 すると、10秒もしないうちに男は体を起こし、窓の方へ歩いて消えていきました。


 あーよかった、と思い、目を閉じて胸を撫で下ろすと、



 「つみす、あいぐせよ」



 耳元に吐息が当たりました。心臓が跳ね上がり、息を大きく吸ってしまいました。すると、


 バタン!! バタン!!! バタン!!!


 と、扉が開いたり閉まったりする大きな音が聞こえ、私はもう怖くなりとにかく息を整えて何も気付いていない振りをするしかないと思いました。


 ――

 ――――


 5分もしたら音が消え、静かになったので目を薄く開けたら、


 



 黄色い目が、何十個も私を見ていました。






 

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