プロローグ
全校生徒3000人を超えるマンモス校。
敷地面積はおよそ3hα。
敷地内には寮やショッピングモール、ジム、映画館、遊園地までもがある。
そう言ったものの維持費や生徒の学費は全て学園長のポケットマネーで賄われているらしい。
そんな独立国家と言ってしまっても構わない様な学園。
日本の教育機関の最上位に位置している学園。
私立青林学園。
その学園の生徒のレベルは総じて高く、それぞれが一般的なとは言い難い才能を有していた。
そんな超エリート校に凡人である私、如月遥が何故入学出来たのか。
その理由は約半年前まで遡る。
当時中学3年生だった私は進路について悩んでいた。
進学するのか就職するのか、また進学するなら何処の高校に行くのか。
そういう事を悩んで悩んで悩み抜いて進路調査書を書き、教師に提出した。
すると、教師の口から驚くべき事実が伝えられた。
「お前の進路調査書はもう出てるぞ?」
「は?」
何がなんだか分からなかった。
今手に持っているものが既に提出されている。
変な夢でも見ている様な気分だった。
その教師曰く、何やら私の調査書は1週間前に出されていたらしく何なら願書の提出も済まされており、推薦状もある為、試験を受ければ受かる状態になっていたそうだ。
それを聞いた時こそは自分はもう受験勉強しなくてよいのかと喜んだのだが、入学する学校に問題があった。
その学校は8年前に新設され、短い歴史ながらもエリートを排出し続けている超進学校であったからだ。
おまけに校舎があるのは東京。
通うならば東京に住むことになるだろう。
ど田舎住みの私は東京に憧れこそあるものの住みたいとは思っていなかった。
はっきり言って最悪だった。
しかし、そんなエリート校に入学できるチャンスがあるならばと中学校と親に流され、あれよあれよと言う間に青林学園へと入学することになってしまった。
「えーと私のクラスは─────」
張り出されているクラス分け表。
そこに載っているであろう自分の名前を探していた。
そのさなか、突如として腕を伸ばす引っ張られた。
「悪いけど、君はクラスよりもこっち優先だからね〜」
「ちょっ!?貴女誰ですか!?」
私を引っ張るのは白衣に身を包んだ小柄な少女。
まさに研究者と言った風貌だ。
「私?私は先生だよ〜。んでもって超法規委員会の顧問ね」
先生!?まさかの先生!?
身長160cmの私よりも一回り、二回り小さい人が先生だとは思いもしなかった。
人は見た目で判断してはいけないとは言うけれど、まさかこんな人がいるとは……。
彼女が先生であるという事実にも驚きだが、それよりも気になる単語が聞こえた。
『超法規委員会』
超法規といえば超法規的措置が浮かぶ。
法律を超えて行われる措置の事だ。
そんな超法規。の委員会。
どういうものなのか。それがこの学園にとって何なのか全く想像がつかない。
「ほら着いたから入りな」
先生を名乗る少女は校舎内の一室の前まで私を案内した。
私がいるこの校舎は先程までいた人で賑わう北校舎と違い、人っこ1人いない。
随分と閑散とした場所である。
私は扉を開けて教室の中を見た。
否、教室ではなかった。
教室と言うにはあまりに生活感に溢れていた。
ソファやテレビ、冷蔵庫にゲーム機、ベットや布団などがあり他人の部屋にしか見えなかった。
それもその筈、部屋の主らしき人が居るのだから。
部屋に居たのは2人。
黒髪黒瞳の美男子。
そしてもう1人。
背の高い赤髪の美少女。
流石に男の子の方と比べると小さいと言わざるを得なかったが、赤髪の少女の方も170cm以上はありそうだった。
スタイルも良い。顔も整っている。
そしてこの学園に入学できるほどの知能がある。
神は彼女に二物以上与えてしまったようだ。
まあしかし、欠けている部分もあった。
何というかだらしない。着ている制服を着崩し、布団の上で仰向けになってゲームをしている。
角度によってはスカートの中まで見えてしまいそうだ。
容姿を見れば世界一の美少女。
中身を見れば女子力0。
そんな感じだった。
「おし!集まったな!」
私の後から先生も教室へと入ってきて言った。
「今日からお前たちが超法規委員会のメンバーだ!学園の秩序はお前たちの手に委ねられたぞ!」
………。
多分今日は私史上、最も忙しい日になる。
そんな予感があった。
主人公 如月遥
赤髪の美少女 茅原朱音
黒の美男子 岩沢夕