【冬童話2024】夢の中での会話から
いつもの時間にベッドの中へ入る。
夢を見る。
最近同じ子が出てくる夢。
けもののような耳としっぽ、それと背中に変な模様がついてる子。
いつも同じ子。
別の子もでてくるけど、僕に話かけてくる。
近所の公園で遊んでいる。
遊び疲れたら、ベンチに座って、一緒に飲み物を飲みながら子供が読む絵本を読んで聞かせてる。
「ねえ。これは何?」
「これは消防車。火事になったら火を消すのに出動するんだ」
「へー。じゃあこれは?」
「こっちははしご車。高い建物が火事のときにつかう」
「ふーん。高い建物ね。めずらしい。私、広さが限られる空間の中で育ったから」
と会話している。
いつも、週の後半になると公園にやってきて一緒に遊んでいる。
女の子っぽい。多分女の子。
けもののようなしっぽをベンチに座ると、横に投げ出してる。
たまに触らせてもらう。
毛並みが良い。
公園の中で遊び、夕方になると帰らなくちゃと言い、帰っていく。
どこへ帰っていくんだろう。
気になったが追いかけることはなかった。
で。目が覚める。
心地よく目が覚める。
夢の内容は起きると全部忘れてしまうけど、なぜか全部覚えていた。
学校のクラスメイトに夢の内容を話してみたところ、同じような夢を見てる人はいないみたいである。
なんだろう。
夢なんだけど、すごくリアル。
☆☆☆
秋が来て冬になり、また春になったころ…
ニュースでアナウンサーが言った。
『これはすごいことですよね。知的生命体からの通信でしょうか』
大学の先生みたいな専門家が言う。
『まだはっきりと断言できませんが、数学がわかる知的生命体からの信号ととらえて良いでしょう。方向から地球外のシリウスのほうから来ています。2年で届く距離のころから受信しましたが、今では1年以内に届く距離から送信されているのではないかという解析結果がでています。好意を持っている知的生命体なのか、あるいは悪意がある知的生命体なのか、あるいは知的生命体が使ってた機械からの人工的な信号だけなのか』
『現時点ではわからないということでしょうか。おって調査を続けるのでしょうか』
『はい』
とやっていた。
宇宙。
興味があるね。
そういえば、夢で見る子。
地球にはいないよね。
けもののような耳としっぽがついているんだもん。
その日の学校で直角三角形のことを習った。
その日の夜、金曜日なので夢を見た。
☆☆☆
「ええとね。数学はわかる? 算数?」
なぜか算数の話になった。
「うん。普通にね。今日直角三角形のことを習った、長さが3、高さが4、斜辺が5。それだけ」
僕は今日習ったことを話した。
「あ。そうだ。そう。それそれ。今度やってみよ。気が付くかな」
とけものみみの子が言った。
「なに? なんなの?」
「ないしょ」
☆☆☆
朝のニュース。
大学の先生みたいな専門家が出てる。
土曜日である。
『例の知的生命体からの信号ですが、文書のようなものが繰り返し送られてきてるのを確認しました。昨日から内容が変化したみたいですが、内容がわからないのです。宇宙人が使っている言葉なのか、今解析中です』
『そうですか。宇宙人からの紹介でしょうか。それとも地球がもうすぐ滅亡するので警告をおくってきてるのでしょうか?』
『さあ』
と先生みたいな人が言う。
信号ね。直角三角形を示す数学のことだったりして。
☆☆☆
2階の自分の部屋へあがってから、スマホを使う。
お兄さんのおさがりである。
さっきのテレビ番組のホームページを開き、問い合わせのところから番組名と宇宙からの信号のことだけど、直角三角形を示す数学のことなんじゃないと書いて送ってみた。
☆☆☆
土日から水曜日までは夢は見ない。
月曜日になり、ニュース番組を見た。
普通のニュースばかりやってた。
水曜日になり木曜日の朝。
大学の先生みたいな専門家がまた出てる。
『わかりましたよ。直角三角形を示す数学を示す信号だったのです。ほかにも数学に当てはめるとわかる内容に思えるのです。これはすごいことです』
『だれかのいたずらということはないでしょうか。小型の衛星を打ち上げて、それっぽい方向から信号を出してるとか』
『それはないですね』
『そうですか。進展があったらまた特集しましょう』
で終わってた。
そっか、あれかな。ヒントになったんだろうか。
その夜夢を見た。
例のけもの耳の子。
「送ったんだけど、ニュースとかになってた?」
聞いてきた。
「なに?」
「直角三角形を示す信号。もう言ってもよくなったから言うね。私は恒星間移民船にいるの。進む先にある星系に信号を送ってから、生命体脳波を検出して夢に入るの。でね。仲良くなれそうならそこへ行くの。もうすぐでつくよ」
「まじなの?」
「まじ。でね。君の住んでいるところ教えてくれる?」
「え? どうやって?」
「スマホあるでしょ」
「スマホ知ってるの?」
「うん。他の子なんだけど、大人の人と仲良くなって夢の中でいろいろ言葉とか文化とか教えてもらったのを教えてくれた。見せて」
「うん」
夢の中なんだけど、ポケットに手をいれるとスマホが出てきた。
入ってなかったはずなんだけど。
電源をつける。
地図アプリを開く。
これじゃだめか。
「あ。私に貸して、見るから」
と言われたので貸す。
その子はしっぽを僕の太ももの上に乗せた。
かなり仲良くなってる。
しっぽを僕の体の上に乗せてくるようになっていたからかも。
しっぽもあったかい。
けもみみの子が胸につけているプラスティックのような名札のようなものを外して、スマホの上にかざす。
いじって、地図アプリで僕の家を表示させる。
マークがついている。
それを拡大していって、地域というか市がわかるぐらいの大きさにしてから、別のアプリを起動して、地球を表示させた。
拡大していって、日本を表示させて、さっきの市がわかるぐらいの大きさにまで表示させた。
「よくわかるね。僕でもあまり知らないのに」
「わたし、賢いから」
とだけ言う。
そのあとスマホを返してくれた。
手があったかかった。
「へー」
地球がわかるアプリを僕も触ってみる。
そのあと夕方になった。
「帰るね。あ、2週間ぐらいつながらなくなるから… 速度調整するの、ついたらすぐに行くから、お家の人にも言っておいて」
と言われた。
☆☆☆
お家の人に朝。けもののようなしっぽと耳がついてる子と知り合いになったから、今度家へ来るって。
と言っておいた。
おかあさんはふーんとだけ言ってた。
☆☆☆
2週間後。
1週間ほどいろいろなものが休みになった。
学校も普通の会社も。
休んでは困るもの以外はお休みになった。
なぜか。
宇宙人が来訪したからである。
夢で見たことがあるような子がテレビでうつってる。
アメリカかな。
中国。
インド。
イギリス。
世界各国の中継が切り替わり来訪を伝えてる。
☆☆☆
月曜日なのに夢で見た。
「明日行くから。よろしく。あ、今日はこれだけ、上陸準備で忙しいから」
とだけ言って行ってしまった。
☆☆☆
火曜日の朝。
7時半ごろ。
呼び鈴が鳴った。
来たの?
出てみる。
玄関には夢で見た子がいる。
「こんにちは。で良い? あってる? そのままだね」
ちかづいてきて、ぎゅううとだきついてきた。
あったかい。
体温があったかい。
しっぽも僕の体にまきついてきた。
ぎゅ。
「入って」
「おじゃまします」
日本語が上手。
けもみみの子が家にきた。
本物の子。
僕のお母さんは相手にしてなかったけど、お客さんの姿を見て、手に持ってたマグカップを落としてしまった。
「まさか。ほんもの?」
「ほんものだよ」
「あ。おとうさん。お客さん」
あわてだした。
僕の前に立つ子。
「ちょっとだけ、私のほうが大きいね」
言われた。
「そうかも」
けもののような耳としっぽがついているのでかわいい。
夢で見たとおり。
椅子にちょこんと座る。
「ちょっと疲れた。重力ちょっとだけ強い。あたしの体重重くなってるし」
と言った。
「そうなんだ」
「ねえ。何を飲むのかしら」
お母さんが困ってた。
「何のむの?」
「ええと。カルピスで…できれば炭酸で割って」
と言った。
「まあ。よく知ってるわね」
ちょうど家にあるし、炭酸もあるし。
良い感じでまぜた。
せきについてから聞く。
「いつまでいるの? 一緒に暮らさない? 部屋余ってるし」
お兄さんは高校へ通うために家を出て行ったから部屋は余ってる。
「そうね。いいね。ホームスティだっけ?」
あ。女の子か。いいのかな?
「あ。女の子が男の子の家に泊るのはまずい?」
「そんなことはないよ」
うれしい。宇宙人のけもののような耳としっぽがついているかわいい子と知り合いになったんだ。
「しばらくよろしく」
「何勝手に決めてるの? おかあさんは女の子ほしかったし、いいけど。父さんは?」
「いいに決まってる」
良いらしい。
夢で知り合った子。
実在して本物だった。