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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

作者: しゅうじつ




 ギシ、ギシ、と有沢が階段を上ってこちらの部屋に近づいてくる足音が聞こえる。



やばい、やばいやばいやばい!!



こっち来る…!



ドッドッドッと心臓が大きく脈打つ。



とりあえず、隠さないと!

こんなもん見ちゃったってのがバレたら……


ガチャ


部屋のトビラを開ける音が聞こえる。



「……っ!」



途端、ぼふっと顔を隠すようにしてベッドに俯きになる。


見てはいけないものを見てしまったことに罪悪感を抱き、


俺はぎゅっと目を瞑って寝たフリをすることにした。




□□□




~1時間前~



「桐谷おまえ、ゲーム弱すぎだぞ」


「苦手なんだよ、こーゆーの」



ははは、と頭に手を置いて笑ってみせる。


ここは俺の幼馴染、有沢のリビング。


教室で雑談している時に、クラスメイトの友達が俺の家と有沢の家が隣同士だということを面白がって、急遽決まった有沢宅でのゲーム大会。



「次これやろうぜ」



そこら辺にあったカセットをひょいっと拾ってみせると、目の前の顔が少し曇る。



「あー、オレそろそろ帰んないとだわ」



「おれも」



「バイトあるし」



「そ、か」



楽しい時間はあっという間にすぎるものだ。

少ししょんぼりしながら皆を玄関の前で見送った。



「そろそろお開きかな~」



友達が出ていった玄関をじっと見つめる。

同じクラスメイトとはいえ、有沢とあんま関わり無い奴らだったし、有沢に悪いことしたかな。

あとで謝ろう。



「あれ、みんなはもう帰ったの?」



トイレを済ませて戻ってきた有沢がそう声をかけてきた。

リビングに戻ってみれば誰もいなかったのを驚いているようだった。



「もうこんな時間だしな。それと…なんかその、ごめんな。急に友達呼んで」



あまり知らない人を家に呼ぶのはあまり良い気はしなかっただろう。

俺も、そろそろ帰ろう。

幼なじみとはいえ、俺も有沢とは昔のように仲良いままではないのだし、長居すると迷惑だ。



「そんじゃ!邪魔したな。おばさんにもよろしく伝えといてくれ」



「え、帰るの?」



有沢がきょとん、とした目で俺を見つめる。



「え、まあ、。みんな帰ったし俺も…」



「せっかく久しぶりに来たんだし、もうちょっとゆっくりしていきなよ」



予想外の有沢の引き止めるような発言に少々びっくりする。

もう、俺のことそんな好きじゃないと思ってたのに。

なんだか意外だ。



「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」





 俺と有沢は、小さい頃からの幼なじみだ。

昔はよく2人であそんだりして、その仲は親友だったと言っても過言ではない。

何をするにしても、ずっとふたりで行動して、ベタベタくっついていた。


それは小学校、中学校へ行っても変わらなかった。

そして中学へ上がって、1、2年の頃、

俺は、有沢と距離を置くようになった。

意図的に。


少し、心が大人になったのだと思う。

運動部に入部して肉体と精神が成長し、人間関係が広がっていった。

そして思ったのだ。

このままちひろと、有沢ちひろとずっと近いままくっついておくのはあんまり良くない。

俺と有沢の関係は共依存に似ていた。


だけどそれをストレートに言葉で伝えるのがちょっと難しくて、さりげなく、それとなく有沢を避けていくようになった。

登下校も別々にして、目をそらして、話す機会を与えなくして。

スマホもあまり連絡を取らないようにした。


 今思えばだいぶ酷いことをしてきたと思う。

あの頃の有沢の、ショックを隠しきれない沈んだ表情は今でも思い出す度に胸がチクッと痛む。


 けれども彼は何かを言ってくることもなく、親しかった幼なじみという関係は中学を卒業する頃には自然消滅していった。

高校に入ったら有沢は俺なんか気にもしてないように高校生活を充実させていった。

委員会へ入り、そこそこ何でもできた有沢は色んな所で活躍していった。



 有沢は俺から離れ、自立して、新しい人間関係を築いた。


 そもそも、俺が有沢を距離を置くようにしたのは共依存というちょっと異常な関係から一歩引く為であって、断じて彼のことが嫌いになったのではない。


 もし、有沢が許してくれるのであれば、酷い行いをした俺を許してくれるのであれば、こんなふうにまた、

昔みたいにはいかないけれども。

時々遊んだりして、

たまには内容の無い話をしたりして、

ごく普通の友人みたく、仲良くしていければいいな。



□□□



 「あぁー、なんかそんな事もあったわ~」



「忘れてたの?あん時は俺も、俺の母さんも、すっごい心配してたんだよ?」



「わっ、まじでか!!それは悪いことしたなぁ…」



 皆が帰ったあと、有沢はリビングもなんだしと俺を自分の部屋へと招き入れた。

そして2人はベッドに腰を下ろし、昔の思い出話に花を咲かせていた。



「そういえば、あの後家に戻ったとき、有沢めちゃくちゃ泣いてたな!鼻水まで垂らしてさあっ!」



「ちょ、やめてよ。てか、忘れてたって言ってたじゃん!!!」



有沢が頬を赤らめ、ぷくぅと膨らませる。



「いや、だってなんか、言われてたら段々思い出してきて…」



「もう~…ほんと桐谷は俺にとって都合悪いことだ、け、は!覚えてるよね!」



わざとらしく嫌味ったらしい目をこちらへ向けできたのでごめんごめん、と彼の頭をくしゃくしゃと撫でる。

そして幾つか言葉を交わした後、有沢はコップの中が空になったからと1階のリビングへ降りていった。


 そして有沢の部屋で一人きりになって、静かな時間が訪れる。



「なんか、全然変な空気にならなかったな」



2人きりになった時は正直気まずいかとも思ったが…



「それよか前みたいに普通に話せてる」



嬉しくなって、ふわっと胸が踊るような感じがして、思いのままにぼふっとベッドに横たわる。


 なんだ、有沢のやつ全然俺のこと嫌いになってなんかなかったじゃん。

酷いことをして、あいつも新しい友達ができたからもう俺のことなんてどうでもいい嫌な奴くらいに見られてたと思ってたのに。

変わらない、あのときのままだ。


 もしかしたら、有沢は俺の意図を汲み取ってくれていたのかもしれない。

中学の時一方的に有沢を避けてたりしたけど、あいつはよく物事を考える、思慮深い人間だ。

きっと俺の行動の意味を推察して、

桐谷は、これはお互いが健全で良好な関係を築くためにやっているのだと、有沢は理解してくれていたのかもしれない。

だから俺になにも文句も言わなかったし、俺以外の奴とよく話すようになった。



「なーんだ、俺は何を今まで思い悩んでいたんだか」



 これからは故意に避けるなんてことはせず、普通に仲良くしていこう。

もう共依存のことについて心配になることは無い。

俺も、あいつも、大人になっている。


重いものが取り除かれたように、気分の良くなった俺は大の字に寝そべる。

そして広くなった視界で部屋全体を見回した。



「あいつの部屋も変わんねーなー」



ベッドの上にある目覚ましも、カーテンも。

昔となんも変わらない。


昔からある家具や匂いに刺激されて、ふわっと湧き出る昔の記憶に思いを馳せる。

すると、今の今まで忘れていた、2人の尊い、ある記憶がふっと、思い出される。


そういえば、俺たちがちっさい頃、確か5歳の時に書いた「20年後の手紙」もまだあったりすんのかな。

懐かし~と、ニヤッと笑みが溢れる。


どこだっけ。



「あれは確か…ベッドの下だ」



寝転んだまま、ベッドの下にさわさわと手を伸ばすと、手応えが。



「うわー、まだあった」



取り出してみると、古びた四角い箱が出てくる。

それぞれクレパスで自分への手紙を書いて、20年経ったらまたまたここへ来て、ふたりで開けようねと、指切りしたのだった。



「なつかしいな…」



今すぐ開けてみたいけど、どうしよう。

まだ20年経ってないしな。



「まあでも、開けてみるだけなら…」



箱の蓋を開けてみるだけ。

封筒に入っている手紙は読まなかったら良いだけのことだ。


少しドキドキしながら、おそるおそるフタを開けてみる。


するとそこには2つの封筒があった。



「うわ~これ俺が昔好きだった戦隊モンのやつじゃん!」


俺宛へのは、当時テレビで流れていた戦隊ものの便せん。

よく「戦いごっこ」なんてものを2人でやってたっけ。


ええとそんで?有沢のは……?


キノコ?



「あ~…昔流行ってたなこれ」



キノコっぽい風貌をしたかわいいキャラクターの便せん。

何故かはよく分からないがその当時はその「キノコ」が男女共に大流行していた。

今振り返ってみればそれの何が良いのかよく分からないな。



「そろそろあいつも戻ってくるだろうし、元に戻しておくか」



手紙の内容は、ええと8年後?のお楽しみということで。


 いそいそと片付けをしていると、箱の中に、ある異変というか、違和感に気づいた。


なんだ…?


有沢の手紙が、箱の面から少し浮いてるような。

いや、浮遊力とかの話では無い。


箱の面と有沢の手紙との間に、何かが挟まっている。


なんか他に入れたりしたっけ。

二人の手紙以外なにも入れた覚え無いんだけどな。


 一体何がーーー


胸あたりがザワザワとして、見ない方がいいかも、という勘に似た嫌な予感に知らないフリをする。

そっと有沢の手紙を取り除くと、


するとそこにはーーー



「…手錠??」



鉄製の硬い素材に、2つの丸い円。

それは犯人を逮捕する時とかによく使う、刑事ドラマとかにでてくるヤツ。


おもちゃにしては妙にリアルで、12年前の5歳の時に入れたにしては色ハゲや古びた形跡もない、新しい感じだ。


普通に生活していたら目に入るようなことが無いような不気味なそれに、まるで体中の臓器を、べろぉ~っと舐められたような気味の悪さを感じる。



こんなもの、なんで有沢の部屋なんかにあるんだ?


分からない。

俺がよく知っている有沢は、小学生の頃まで。

俺によく懐いていて、どうぶつの出てくる本が大好きだった、かわいくて純粋なちひろ。

小学生の頃からそんな物騒なものを持っていたっていうのか?

ありえない。

しかもそうならもっと年季が入っているはずだ。

きっと、その後。

俺が彼と余り関わらなくなっていった中学生時代。

あの頃から、あいつの中で何かが変わっていった…?



疑問の念を抱いていると、背後からギシ、ギシ、と階段を昇ってくる有沢の足音が聞こえてきた。



□□□□



 階段を降り、キッチンへと向かう。

俺、有沢は桐谷の居る自分の部屋を出て、キッチンで冷蔵庫から取りだした烏龍茶を、自分のコップの中へトポトポと注いでいた。


桐谷がウチに来るの、いつぶりだろ、

中学の時は1度も来てくれなかったから。


部屋を出る前、桐谷がわしゃわしゃと撫でた髪。

そこへそっと手を添える。



トポトポトポトポトポトポ



おっと

溢れ零れた液体を慌ててティッシュで拭き取る。



 ピカピカになるまで丁寧に拭き終えた後、コップを持って桐谷のとこへ戻ろうとした時。

ある物がふっと目につく。



「あっこれ桐谷の…」



パーカー。

テレビ台の下から、赤色の裾が少しはみ出ている。

そういえば自分のパーカーが見つからないって探してたっけ。

部屋に戻るついでにこれも持っていくか。

テレビ台の下へ手を伸ばし、裾を掴むあとすんでのところで、

ピタっと指先が止まる。



「いや、やめておこう」



台の下からはみ出た裾を掴んで、隠すように中へ押し込む。

そしてコップを手に持ち、自分の部屋へ向かうためにゆっくり階段を昇っていった。




□□□




ギシ、ギシ、ギシ、




やばい、やばいやばいやばい!

こっち来る!



自分の手の中には、20年後に開ける予定の箱。

そして、絶対に見ちゃいけない感じの手錠。


これ見られたらまずい…

急いで乱雑にしまい込み、

ベットの下へと隠す。


足音がどんどん近づいてきた所で大きく身を翻して、ぼふっとベッドに顔を埋める。

寝たフリ、寝たフリ。



ガチャ



「……桐谷?」



トビラを開けた有沢が、どんどんこちらへ近づいてくる。



バク、バク、バク、と心臓がはち切れそうだ。

なんか悪いことをしてしまった犯人のような。



「寝てるの?」



そう、寝てるの


だからこのままほっといてくれ…



「おーい」



声をかけた有沢の指先が、

つんつんと俺の最大の弱点、脇腹をつつく。



我慢しろ、動くな俺………



脇腹をつつかれても身動きひとつしない俺を見て、有沢は一旦手を離した。


そして何をするかと思ったら、今度は肩へと手が触れる。


そして、ぐるりと回転させてうつ伏せの俺を横向きへの体制へと変えさせた。


!!?


何をするんだ。


いや、寝たフリだ、寝たフリ…


有沢の次の一手を大人しく待っていると、彼は静かに、ぽつりと呟いた。



「…ほんとに寝てる」



その言葉を口にしたあと、彼はギシ、とベッドを沈ませる。そして、ベットに乗り込み横向きになっている俺の背中側へと寝転んだ。


俺を起こすと思ったのに。

有沢も寝るのだろうか。


ならばと、俺も休むことにすると、後ろから有沢の手がぬっと伸びてくる。

そしてぎゅっと俺を抱きしめた。



……えっ?



突然の行動に困惑していると、首元に急なくすぐったさを感じ、すんすんと臭いを嗅がれる。



な、なにしてんだ…!!?

有沢……?



「っ桐谷…きりたに…!」



えっ起きてるの、バレて…?



「なあ、桐谷が俺のベッドで寝るの、何年ぶりだろ。あの頃から全然、うち来てくれなかったから…」



 ひとり、空中に呟くように。



「このまま、離したくないなあ…」



シャツの中へ手が滑り込む。

お腹をさすさすと撫でられた後、その手はぐんぐん上へ伸びていき、胸をふにっと触る。



ひっ……!?



「はあ、きりたにっ… ずっとここに居てよ、俺を、1人にしないで…っ」



声に熱がこもっていくと同時に、胸を触る手はどんどん激しくなっていく。

胸を鷲掴んで大きく揉みしだくと、次は先端を執拗に弄り倒す。



「っ置いてかないで…桐谷 あの頃みたいに、仲良くしてよっ…!」



「……っ!! ふ…っ……」



声を出さないようにと必死に歯を食いしばって、我慢する。混乱して頭の整理が追いつかない。



 頭が混乱している中、甘かった有沢の声が次第に苦しげなものへ変わっていき、

そして太ももの、股の間にある違和感に気づく。



何か、硬い棒のようなものが太ももの間に入り込んでいるような。


なんだろうと思っていると、それがぬこっ、ぬこっと動き出した。


こいつ、まさか…



「桐谷…っきりたに、ごめん…っ すき、好きだっ」



「……っ!?」



「こんなのダメだって、分かってるけど、 あの頃から…っ桐谷に避けられ始めてから、俺はもう…っ」



はあ、はあ、と乱れる息がうなじへ伝う。

ぬこ、ぬこぬこと棒の出し入れがだんだんはやくなっていく。

完全に理性を失いかけている彼は、いつもだったら絶対口にしないようなことを口走る。



「もっと、俺をだいじにして、桐谷。もう、いじわるしないでよ…っ」



肌に伝う息も、上がる体温も、全てがふたりでひとつのものになる。

そして、それがやがて最高潮へ達すると、どぱっと体内に溜まっていたものが放出された。


乱れた息を整えながら、有沢が唇を俺のうなじへと這わす。


「はあ、はあ…桐谷…っ 離したくないよ」



「 もう、何度桐谷が逃げようとしても、無理やりにでも捕まえて、そして…」



絶え絶えになりながらも紡ぐ彼の言の葉の音は、つい手を差し伸べてしまいたくなるほど、苦しそうだった。



「君を閉じ込めたい」






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