表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

モブ

モブの体育祭

 今日は高校の体育祭。

 天気は良くないけど、盛り上がっております。

 運動部のエースのあいつが評判通りの力を発揮したり、帰宅部で普段冴えないあいつが突然予想外の能力を発揮したり。

 女子がそれにキャーキャー言ったり。

 うん。盛り上がっている。

 名もなきモブの俺も、途中途中で「えええ!?」とか「マジかよ……」と言う大事な役割をそつなく果たして、しっかり参加。

 俺の出場種目は、スウェーデンリレーのアンカー。

 モブのくせにリレーのアンカーかよ、なんて思われるかもしれないけど、勘違いしないでくれ。

 最終種目の、一番盛り上がる方のリレーは男女混合8×百メートルリレー。男子と女子が交互にバトンを繋ぐ、この体育祭のメインイベントだ。当然、クラス対抗戦での配点もめちゃめちゃ高い。

 スウェーデンリレーっていうのは、四人の走者がそれぞれ、百、二百、三百、四百メートルを走る、後に走るやつほどきつくなる謎ルールの地味なリレーだ。

 当然誰も四百メートルも走りたくないから、モブ同士でじゃんけんをして、負けた俺がアンカーにされた。


 午後の部の競技がほぼ終わったところで、天気がいよいよ怪しくなった。今にも雨が降りそうなので、一番最後のはずの男女混合リレーを先にやることになった。スウェーデンリレーは最後にまわされた。

 要は、男女混合リレーを雨で中止にしたんじゃ盛り上がらないから、天気が持ってるうちにやっちゃおうってことだ。

 実に正しい判断。

 で、当然男女混合リレーはめちゃくちゃ盛り上がった。

 途中女子がバトンを落としたり、その遅れを男子が必死の走りで挽回したり、なんていう胸熱のドラマがあって、最後にぎりぎりでうちのクラスが勝った。

 そこで終わればよかったのに、問題が起きた。予報90パーセントの雨が、降りそうで一向に降らないのだ。

 で、クラスの優勝を懸けた最終種目が、モブのスウェーデンリレーになりました。

 生まれて初めてクラスの連中に囲まれて「頼む」とか「勝ってくれ」とか拝まれてさ。

 いや、俺名もなきモブよ? クラス一の美少女の若松さんに「お願い、頑張って」なんて言われて鼻血出そうになったけど。俺モブなんだって。

 仕方ない、クラスのために必死で走ったよ。四百メートル。

 最後はモブ同士で競ってさ。でもこっそり地味に走り込んでた俺がぎりぎりで勝ちました。

 ゴールした途端、駆け寄ってきた若松さんに抱き着かれたけど、俺はモブだし多分酸欠の幻覚か何かだと思う。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全然モブじゃない!寧ろ鈍感系主人公?大事な所で決めれる人は充分主役ですよ。例え幸運と運命の気まぐれであっても。驕らず偉ぶらず身分不相応な夢を抱かない。きっといつか誰かに滅茶苦茶惚れられて逃…
[良い点] モブのほんのりとした自棄感が良かったです。体育祭っていうイベントムードにあてられたクラスの雰囲気も良かったですし、モブなりに頑張った結果が出たのも良かった。 あとは後日若松さんと会話できる…
2022/12/20 21:48 退会済み
管理
[良い点] わ、若松さぁあああああんっ! 抱きついた?! 抱きついたですって!? これはアウトだっ! 花火間に合うねは、ぎり鈍感天然で許せるけど、抱き着いたらもう、それはアウト……! 責任とりましょ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ