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第9話 帰郷

往路と同じ5日の行程を経て、僕達はジーメンス領に帰郷した。


「相変わらず田舎ですね…。何日か前にいた王都とは大違いだ。」


ハンスの言う通りだ。周囲に広がる風景は王都へ出発した頃と何も変わらない。

変わったのは、僕の腕の中に義父ちちがいることだ。


「そうだね。まずは早く義父上ちちうえ義母上ははうえの下にお連れしなくては…」


領地に入って1時間程で、僕は我が家に到着した。

馬車や荷物の片付けはハンスとメアリーに任せ、僕はフリーデルと医師のアデリナを伴って義母ははの部屋に向かった。


「カール様、私も一緒で良かったのですか?」


フリーデルが僕に問い掛けた。


「うん。領地経営に深く関わってもらうから、ちゃんと引き合わせないとね。」


階段を上がった先に義母ははの部屋がある。

義母はははこの数日間、どのような気持ちで家族の帰りを待っていたのだろう。

僕はゆっくりと扉を開け、義母ははの部屋に入った。


義母上ははうえ、ただいま。」


「カール、良く戻りましたね。バルトルド(あなた)もお帰りなさい。」


義母はは・クラウディアが少し暗さを交えたような笑顔で僕と義父ちちを出迎えた。義母ははも覚悟はしていた筈だ。

僕は義父ちちの遺骨が入った骨壺を義母ははの傍らに置いた。

義母ははは骨壺を優しく撫でた。


「御母堂様失礼致します。」


少し間をおいて、フリーデルとアデリナが入ってきた。


「あ、あなたは…フリーデル殿下。」


義母ははが体を起こそうとした。そうか、義母ははもかつては社交界にいた筈だから、王族とは面識があるはずだ。


「いえ、そのままで。私は国王陛下より、カール・ジーメンス伯の領地経営の補佐として仕えるよう命ぜられました。カール様にも申し上げましたが、私は王族では無く臣下として扱ってください。…カール様。」


フリーデルはそこまで説明した後、僕のその後の言葉を促した。


義母上ははうえ。僕は国王陛下にジーメンス伯爵家を継ぐことを認められました。今後このフリーデルや他のみんなと共に、領地経営にあたることになります。分からない事ばかりですが、一生懸命頑張ろうと思っています。義母上ははうえにおかれてはまずは、病気の治療にあたってください。陛下が、王宮医師のアデリナ先生を遣わしてくれました。」


「カール様に紹介頂きました、医師のアデリナです。一生懸命治療させていただきますので、心配なことがあったら何でも相談してくださいね。」


医師のアデリナが義母ははに一礼した。


「アデリナ先生、よろしくお願いします。カール、貴方が立派になって、あの人もきっと喜んでいるわ。でも無理はしないでね…」


義母ははは僕の事をぎゅっと抱きしめた。

何とか義母ははを心配させないようにしないと!



その後、義母ははのことはアデリナに任せ、僕とフリーデルは部屋を退出した。


「さて、フリーデル。ちょっと僕と外に出ない?」


「カール様?」


「フリーデルに、僕の故郷を案内したいんだ。まだ日は高いから大丈夫だよね。」


「それは構いませんが…。カール様も旅でお疲れでしょうから明日からでも良かったのですが。」


「うーん、でも何かしてないと、何かね…」


僕は苦笑いを浮かべた。ここ数日間、何かと気を張っていたから、急に気を抜くと何かダメになりそうだ。


「分かりました。この館には馬車を引く以外の馬はいますか?」


「うん、一応3頭の馬がいるよ。でも僕は乗馬が苦手で…」


「私と一緒に乗れば良い。ちょっと遠乗りがてら、領地を回ってみましょうか。」


僕はフリーデルと馬に乗って出かけることとなった。

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