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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第4章 エルフの里

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3

「それで、今回の依頼ってどんな内容なんだ?A級相当の依頼だってことしか聞いてないけど」


 それからしばらく移動している際、ふとサトーが口を開いた。


「そもそも、エルフってのがいること自体が驚きなんだよね。確か四賽ってのに滅ぼされたとかじゃなかったっけ?それとはまた別の話だったりする?」


 サトーの疑問に答えたのは、先頭でシジマの手綱を握るシャグラだった。

 シャグラは仕切られている幕から顔を出すと、話を始めた。


「エルフはこの国と深い繋がりがあってねぇ。四賽との戦いにおいて、エルフは一切戦線に立たなかったらしいんだよねぇ」

「それは戦うって言ってたのにか?」

「らしい、というか詳しいことまでは分からないのが実際のとこだけど。エルフは凄く警戒心が強いことで有名で、まぁ色々と命を狙われる立場にあるって言えばいいのかなぁ」


 エルフといえば迫害されがちだったり、ひっそりと生活している印象が強い。

 この世界におけるエルフも例に漏れることはなかったらしい。


 共闘をしても、味方から迫害を受ける可能性は高い。

 四賽という共通の敵だけではなく、他の種族も警戒しないといけない立場にあるということだろう。


「エルフには見た目以上にある共通点が存在します。それは全員が風に関連する権能を有している点です」


 向かいで目を閉じていたリーゼが口を開いた。

 それを見たシャグラは役目を終えたつもりらしく、そっと幕を閉じた。


「我が国では交易が盛んです。そして海を渡って、他の大陸ともやり取りをすることもあります。現在の海での交易において、風という要素は極めて重要な位置を占めています。全ての船において帆、と呼ばれる機動力を高める機能を備えているからです」

「でも、魔術でも風って起こせるんだよね?」

「起こせますが、それはただの突風。風そのものを操るものではないのです。なにより、回数に上限がある魔術や魔器を使用するのは、あまりに非効率であり、かつ危険です」


 その言い方だと、恐らく天候ですら制御できかねない代物なのだろう。

 扇風機のように風を起こすのではなく、特定の空間にある空気そのものを制御できる、ということらしい。


「そんだけのことができるってことか。そりゃ命狙われるわな…………」

「ただ、エルフのみで生活を成り立たせるのは非常に困難です。そのため、利害が一致している我が国とのみ、国交を結んでいます。エルフは我が国の領土下にありますが、その在り方はギルドに近いものと考えるのが適切でしょう」


 領土の中にある独立国家、ちょうどバチカン市国のようなものだろうか。


 エルフィン王国は交易のため。

 エルフ側は自身の保護と生活の維持のため。


 互いの利益のため、あくまで表面的に仲良くしている、というのが実情なのだろう。


「そのため、表向きには現在向かっているエルフの里の場所は開示されていないのです。行くには自力でその場所を見つけ、更に里を秘匿するための結界を解除しなければいけません。以上の点から、難易度としてA級相当だと評価されているのです」

「今回の依頼はエルフの里に書簡を届けることで、ナマク支部に委託してきたらしいねぇ。あそこの支部は見た目よりずっと優秀だから」


 気が付けばシャグラが荷車の中にいた。

 どこか愉快そうにしながらも、近くに置かれていた小さな箱を手に取る。


「これが書簡。なんでも、結構重要なことが書かれてるらしいから、決して開けちゃダメみたい」

「…………まさかと思うけど、開けたりしてないよね?」

「ま、大したことは書かれてなかったねぇ」

「開けてんじゃねぇか!」


 そう突っ込まれてもどこ吹く風。

 まるで気にした様子もなく飄々とした笑みを浮かべている。


(いや、凄い人なのは重々理解してるけど、本当に大丈夫なのか…………?)


 サトーとて、彼の実力を理解していないわけではない。

 だが、彼の言動はあまりに不可解で、掴みどころがないのだ。


 そのせいか、いまいち信頼していいのか判断に困る。 


「着いたのですか?」


 リーゼがそう尋ねると、シェルアははっとした表情で近くにおいてあった荷物を手に取る。


 それを見てサトーもまた盾を近くに寄せた。

 背丈と同じ大きさなだけあって、動かすだけでもかなり重い。


「ついさっきねぇ。予定とは、ちょっとだけ違ったけど」


 荷車を下りると、目の前にあったのは鬱蒼と木が茂る森だった。


 森、といってもこの前リーゼと二人で魔獣の間伐を行った場所や、シェルアのお屋敷の近くにある森とは様子が大きく違う。


「…………すっげぇな、これ」

「ここまで大きな森は初めて見ました」


 木々の一つ一つ、そのどれをとってもあまりに巨大なのだ。

 樹齢が百年を超えていないものがないのでは、と思ってしまうほどに巨大な木々が、それこそ隙間なく生えている。


 鬱蒼。

 その言葉通りに、森は暗く緑が強い。

 日中であればある程度光が射してもおかしくないはずなのに、遠くを見ても夜のように暗闇が広がっていた。


「これが特徴で、エルフの里がある森は異常なまでに生長するんだよねぇ。だから人によっては過剰成長している森を『エルフの森』って呼ぶ人もいるらしいよ」


 そう言ったシャグラは近くに木の杭を押し込むと、慣れた手つきでシジマの手綱を括り付けていく。

 それを見たリーゼはぐっとその杭を地面に押し込み、ちょうど半分程度が地面に埋もれる形になった。


「あれ?そいつ連れて行かないの?」

「この森は起伏が激しくて、荷車と一緒には無理かなぁ。とりあえずは結界を解除するところからやらないとね」


 それを聞いたからなのか、シジマは地面に突っ伏すとあっという間に眠ってしまった。

 こうやって見ると可愛いものだが、些か不用心にも思える。

 

 そんなことを考えつつリーゼに視線を向けると、彼女はため息を吐きながら口を開いた。


「貴重な物は持っていけば問題ありません。万が一野盗などに漁られた場合は仕方ないと割り切るしかないですね」

「まぁ、いいんだけどさ、こいつが連れてかれる可能性もあるんじゃないの?」

「こいつはかなり高齢でねぇ。わざわざ攫う必要があまりないんだよねぇ。なによりシジマはそこらへんで普通に見かけるから、敢えてこいつを攫う必要もないしねぇ」


 すやすやと眠るこいつから年齢をあまり感じないが、多分分かる人には分かるのだろう。

 リーゼやシャグラがそういうのであれば同意するしかない。


 その間、シェルアはどこか心配そうに森の中を見る。


「ここって、魔獣とかはいるんでしょうか?」

「いないことはないだろうけど、まぁ大丈夫だと思うよ」


 ざっくりとシャグラが言うと、大きく膨らんだ荷物を背負った。


 恐らく、他の人の荷物も入ってるのだろう。

 明らかに彼一人で持つ量ではなかった。


「いやいや、もう少し荷物分けてくれよ。流石に盾だけってのは申し訳ないし」


 そう言うと、シャグラはどこか楽しそうに笑みを浮かべ、


「それは、しばらくしてから聞こうかな」


 それがどういう意味か分からず、シェルアとサトーはお互いに顔を見合わせるのだった。

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