表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第4章 エルフの里

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/1176

1

 その力は、誰かのために振るえ。


 それが爺さんの口癖だった。

 

 クソみたいな慣習の多い里で育ったオレが、周囲から明確に避けられていると悟ったのはまだガキの頃だった。

 毎朝鏡を見るたびに、里の連中とまるで異なる顔をしている自分の顔を見る。


 ガキながらに、他の人とは違うのだと理解するには十分だった。

 

 両親はいない。

 物心ついた頃から、爺さんと二人きりだった。


 なんでもオレは赤子の頃、森で爺さんに拾われたらしい。

 大方親がオレを森で捨てたのだろう。

 酷い親だとは思うが、顔も分からないので興味はなかった。


 オレを拾った爺さんは、はっきり言って変人だった。

 

 無口で無表情。

 それでいて目つきは刃物のように鋭い。

 里の外れに小屋を建て、そこで息を潜めるように静かに過ごしていた。


 時折、森の外に出かけていたが、どこに行ったかまでは教えてくれなかった。

 ただ、帰るたびに全身は傷だらけで、それでも出かけるのを辞めようとはしなかった。


 力の使い方も、戦い方も、礼儀も。

 大体のことを爺さんが教えてくれた。

 互いに口が悪く、いつも怒鳴られ叩かれて。

 決まって殴り合いになり、大概負けた。


 爺さんは半端なく強かった。

 だから里の連中は、爺さんには何も言えないのだと思った。

 そんな爺さんが、オレは大嫌いだった。


 爺さんはオレがガキの頃から爺さんだったから。

 別れは存外早くに来た。

 ドラマチックな出来事も、涙を誘うような事件もなく。

 ただ草花が枯れるように、穏やかに逝った。

 その顔は、なんだか昼寝をしているようで、本当にいなくなったのか心配になるほどだった。


 爺さんの願いで、遺体は燃やした。

 遺品は小さな箱に入れ、一緒に燃やした。

 そんなに物に執着する人じゃなかったから、燃やす手間はそれほどなかった。

 そうして空へと昇る煙を見て、オレはようやく爺さんが死んだのだと腑に落ちた。


 ふと、頬を伝う水滴を拭って。

 煙が目に染みるな、と他人事のように思いながら。


 そして一人きりになったオレを、里の連中は追放しなかった。

 きっと感じがよくないからだとか、オレが強いからとか、きっとそんなしょうもない理由だろう。

 面と向かって言う度胸がない癖に、一丁前に悪口だけは言える。


 ここはクソだ。

 改めてそう悟るのに時間はかからなかった。

 だからこそ、爺さんはあんなところで一人で暮らしていたのだ。

 ならオレも、同じように振舞うのが正解なのだろうと、思った。


 その力は誰かのために振るえ。


 爺さんの教えは、胸の中にしこりのように残った。

 いくら問答しても、それが数年経っても、答えは出ない。


 ただ強くなりたいと。

 教えられた技を磨き、一度も勝てなかった爺さんを思い浮かべ、修行を続けた。

 その過程はあまり苦痛ではなかった。

 強くなることは楽しかったし、努力することも楽しかった。


 ただ、誰かのために力を振るう。

 その言葉の意味を理解できる気配は、いつまで経っても来なかった。


 しばらくしてオレは、森の抜け方を覚えた。

 結界を解除させず、悟らせずに出入りができるようになった。


 そうして最初に始めたのが、盗賊狩りだった。

 盗賊を選んだのは、それが盗んだものだからというのと、単純に気が楽だったからだ。


 振るった力は弱者のためになる。

 少なくとも、彼らが正義である可能性は少ない。

 なにより、生活をするのにはお金が必要だった。


 里で生活していても、お金はいる。

 仲間外れのオレはなおさらだった。


 だから、戦って、戦って、戦い続けて。

 時に怪我もしたし、命の危機もあった。


 それでも一人で戦い続けた。

 一人の方が、気が楽だった。

 一人なら、失うものは何もなかった。


 事あるごとに問い続ける。


 何のために戦うのか。


 生活するために。

 それ以外の答えが出ることはなかった。


 だから、こうも思った。

 戦わずに生きていける連中と、オレは何が違うのだろうかと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

☆☆☆現在更新中の作品はこちら☆☆☆
墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ