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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第3章 ナマク村

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「彼女たちは、僕のことについて何か言ってたかい?」


 発した後で、自らの軽率な行為を悔いた。


 どんな言葉が飛び出るのか。

 あらゆる可能性を覚悟し、静かに待った。

 

 そんな思いとは裏腹に、彼の口調はあっさりとしたものだった。


「あぁ。褒めてましたよ。凄いお世話になったって」


 一瞬、聞き間違えたのかと思った。


 だってそれは、あまりに想定の外だったから。

 シャグラの反応に気付いていないのか、サトーは言葉を続けた。


「すごくいい人で、剣の腕が立つって。リーゼは戦い方を教えてくれて嬉しかったって感じだったし、シェルアもお菓子を貰ったって言ってたな」


 それは、多分ありふれた日常の一コマでしかない。

 お菓子をあげたのも、戦い方を教えたのも全て気まぐれでしかない。

 たった数回、それも不定期でやったこと。


 それを彼女らは、数年経っても未だに覚えているらしい。


 楽しい記憶として。

 振り返り、笑って話せる思い出として。


「…………そっか」


 返す言葉は、それしか浮かばなかった。

 それ以外で、どう返事をしていいのか分からなかった。


 彼女らは真っすぐに、大人が思うよりずっと真っすぐに育っていた。

 隔離された森の奥で、二人きりで生活しながらも、それでも真っすぐ、純粋に成長していた。


 喜んでいいのか分からなかった。

 喜べる立場にいるのか分からなかった。

 した後悔も、罪悪感もそのままなのに。


 だが。


「だから、会えるの凄い楽しみにしてる感じでしたね。覚えてるのか不安だとも言ってたけど、でもその感じだと忘れてないですよね?」


 しすぎた後悔の、その中の一つが音もなく消えていくような気がした。

 棘のように刺さっていたそれは、抜ける時は驚くほどあっけなかった。


「…………そうだね、忘れてない。忘れるわけがない」


 けど、だからといってあの日の後悔は忘れられない。

 忘れられるようなものではない。


 だから、どうしていいのか分からなかった。

 分からなくて、きっと酔っているのだと、そう自分に言い聞かせた。


「僕にはね、大切な人がいたんだ」


 分かっている。

 全て聞いて知っているだろう。

 なのに、どうしても話が止まらなかった。


「守ると約束したのに、その約束を守れなかった。騎士団の団長補佐なんて地位にまで上り詰めたのに、約束一つまともに果たせなかった。その事実から、僕は逃げてしまった」


 どんな表情で話しているのか、自分でも分からなかった。

 彼の顔も見れない。

 どんな顔で話せばいいのかも分からないのに、まとも顔も見る気になれなかった。


 会って数日、ちゃんと話したのも今日が初めて。

 そんな相手にする話ではないことは、頭では分かっていた。

 だというのに、積年の想いはいとも簡単に堰を切った。


「逃げて逃げて、いろんな後悔が頭から離れなかった。こうしたらよかったとか、こうすればよかったのにとか、そう思ううちに、動けなくなってた。酒を呑んでいる時だけは忘れられた。思い出す度に酒に逃げて、いつのまにか何もできなくなっていた」


 続けようとした言葉を、彼はこう遮った。


「でも、俺たちのこと助けてくれましたよね」

「……………………え?」


 言葉を、失うしかなかった。

 思わず顔を上げると、彼はゆっくりと語りだす。


「俺はつい最近までの記憶がないんです。だからちゃんとした知り合いっていうとシェルアとリーゼくらいなんですけど、もしその二人が死んじゃったら、多分一生立ち上がれていないと思うんです。シャグラさんよりずっと何もできず、ただ後悔しながら堕落した生活をしていると思うんです。ああすればよかった、こうすればよかったって。そんな中で昔の知り合いが会いに来ても、会おうとは思えないです」


 サトーは恥ずかしそうに頬をかきながら、話を続けた。


「だけど、シャグラさんは違った。ちゃんと話を聞いてくれて、そのうえで力を貸してくれた。それって、きっと誰にでもできることじゃないと思うし、俺は純粋に嬉しかった。俺は一人だと何もできないし、記憶も才能もないから、何一つまともにできる自信もない。そんな俺の話を聞いて、更に力を貸してくれたの、めっちゃ嬉しかったんですよ」


 彼は真っすぐこちらを見つめると、深々と頭を下げた。


「ありがとうございました。今日だけでしたけど、一緒に戦えて楽しかったです」


 そういって笑みを浮かべる彼の表情は晴れやかで。


「言いたかったのはそれだけです。もし次があれば、また話を聞かせてください」


 煌々と燃える炎を思い出すのだった。

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