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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第3章 ナマク村

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23

「シェルアちゃんってさー、もしかしてお姫様だったりする?」


 その問いに、どくん、と心臓が跳ねた。

 温かいはずの湯船が、まるで温度を無くしたかのように感じなくなっていくのが分かる。


 何も言えないシェルアを見ることなく、ぼんやりとした調子でライナは言葉を続ける。


「さっきもそうだけど、なんとなくさ、シェルアちゃん達って冒険者らしくないんだよね。あのリーゼさんって人もそうだけど、どことなく、そうじゃない空気がするっていうか、もっと身分の高い人なのかなって思う時が結構あるんだ」


 ちゃぷん、と音を立てて、ライナが両手を前へと伸ばした。


「シェルアって、確かこの国の第六王女の名前じゃん。でも名前を肖ることはそれほど珍しくないから、別にそれだけってわけでもないんだけど。でも、なんとなく、本物なのかなって。丁度手配書が回ってるタイミングで、それっぽい同名の人がいる。これって偶然なのかなって」

「…………もしそうだとしたら、通報、するんですか?」

「んー、別に?」


 あっけらかんと言い切るライナに対し、思わずシェルアはライナの顔を見た。


「だってシェルアちゃん、悪い人じゃなさそうだし。手配書だって、きっと何か理由があるんでしょ?そりゃ通報したら報酬はたんまりもらえるかもしれないけど、私そんなにお金が欲しいってわけでもないしね」


 どこか照れ臭そうに笑うライナは、こう言葉を続けた。


「なにより、私もっとシェルアちゃんと仲良くなりたいし」


 あー恥ずかしい、と湯船の中で手足をバシャバシャと動かすライナを、シェルアはただ見ているしかなった。


(…………分からない)


 それがシェルアの本心だった。

 私は嫌われ者のはずで、だからあんな森の奥に追いやられていた。


 誰も私のこと必要としていないのだと、そう思っていた。

 だから、彼女の発言も、行動も、何もかもが分からなかった。


「…………私はシェルアちゃんがどんな生い立ちなのかは知らないし、多分快く思わない人もいるのかもしれない。実は私もその一人だった」


 でもね、と一つ区切ると。


「会ってみて分かった。あなたはすっごく善い人。それも、今まで会った中でも指折り。だから、私はあなたの味方でいたい。まぁ、隠避罪みたいなのに引っかかるかもだけど、そしたらしょうがないってことで」


 簡単に言ってはいるが、実際はそんな軽いことではないだろう。

 なにより、その結論に対して一切躊躇いがない。


 それがどれだけ稀有なことなのか、シェルア自でも理解できた。

 そしてそれは、きっと彼女だけではないということも。


「だから、出来たらでいいから話してほしいな。勿論、無理強いはできないけど」


 その言葉で、たったこれだけの言葉でシェルアは心の底から救われた気がした。


 ずっと不安だった。

 サトーもリーゼも、優しくて、優しいからこそ言葉を選んでくれていると。

 私を気遣って、そう言ってくれているのだと。


 だから、今回の依頼を二人で受けたのは、きっとそういうことなのかもしれないと、そう思ったのだ。

 本当は私は足手まといで、二人のお荷物なのかもって。


 でも、そうではないのかもしれない。

 私は、私が思ってるよりずっと、誰かに好かれる人なのかもしれない。

 もう少しだけ、胸を張っていいのかもしれない。


「…………ライナさんの、言う通りです。私はエルフィン王国第六王女、シェルア。今は国に追われて、身分を隠すために冒険者をやってます」


 そう思えば、あとは勝手に口が開いていた。

 ぽつり、ぽつりと自分のことを話すシェルアを、ライナは静かに聞き入れていた。

 話し終えるのを待って、ライナが口を開く。 


「そっか。記憶がないんだ…………」


 幼少期の記憶がないことも。

 定期的に記憶を失い、昏睡してしまうことも。

 シェルアは生まれて初めて、他人に話すことができた。


「てか、お姫様と一緒にお風呂って地味に凄くない…………?」


 そんなことを知る由もないライナは、どこか砕けた調子でそんなことを言い始めた。

 あれよあれよと独り言を続けるライナを見て、シェルアは小さく微笑む。


「ありがとうございます、ライナさん」

「ライナでいいのに。でも、どういたしまして」


 まるで旧友かのように、二人は顔を見合わせて笑いあう。


「それじゃ、この話は二人だけの秘密ってことで」

「はい。そうしてくれると嬉しいです」


 そうして二人はそっと指切りをすると、思い出したかのようにまた笑い出した。

 雫が淡々と時間を刻む音だけが聞こえる、穏やかな時間がそこには流れているのだった。

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