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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第3章 ナマク村

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18

「あっつ…………」


 思わずそう呟いた後、サトーは自身の軽率さに後悔した。


 魔獣討伐初日、日が暮れたために近くの空き地で野営を行っていた。

 テントや食事の準備はリーゼが殆どやってしまったため、サトーが出張る隙はどこにもなかった。

 一応は食事の準備もやったが、それでもリーゼの手際の良さにまるでついていくことができなかった。


 そうして用意された食事を口にした瞬間、不本意にも二人の間に流れていた沈黙を破ってしまったのだ。


「やはり、あなたには情緒はないようですね」


 ばっさりと言い切るリーゼに対し、サトーはただ項垂れるしかなかった。


 なにせ、さっきまで火にかけられていた汁物を、全く冷ますことなく口に運んだのだから、熱いに決まってる。

 熱いのが平気ならともかく、サトーの触角は普通の人より少しだけ鋭いと本人は自覚していた。


「…………ま、まぁ、どっちにせよ、このまま黙ってるのはしんどいし」


 無理に軽い口調で取り繕うも、リーゼは全くこちらを見ようとしなかった。

 多分、温度を間違えてるなと考えたサトーは、一度咳ばらいをすると話を変える。


「そういうことだと、あの人を仲間にするのは難しいかもな」


 シャグラという人物の話は、壮絶というほかなかった。


 大切な人を失い、戦犯として誹られ、居場所を失ってしまった。


 そのどれもが、一つずつ訪れても乗り越えるのが困難なことなのに、それが一気に押し寄せたのだ。

 その時味わった痛みは想像するよりずっと辛いはじだ。


 そしてそれは、大切な人がいるサトーにとっても同じだった。

 もし何かしらの理由でシェルアを、リーゼを失ったら。

 

 果たして俺はこの世界で生きていけるのだろうか。

 何もかも投げ出さず、仕方ないと割り切って生きていくことができるだろうか。


「少なくとも、彼はまだ悲しみの中にいるのは間違いないと思います」


 リーゼはそう言うと、一度そこで言葉を区切った。

 どこか言いずらそうにしながらも、リーゼはその続きの言葉を述べる。


「ですが、あのままでは彼はあのままです。どちらにせよ、結果はあまり変わらないというのが私個人の考えです」

「どちらにせよ?」

「悲しみ続けるか、その悲しみを乗り越えるか。選ぶ道はどちらかでしょう。そのどちらを選んでも、彼にとっては辛く困難な道のりであることには変わりません。なにより、選ぶのは彼自身です。私たちがどうこう言うべきことではないのかもしれません」


 ですが、とリーゼは一言置いた。


「あなたがお嬢様に伝えたことを私は知りませんが、それとこれは同じことだと思います。そのうえで、私はあなたに話したつもりです」


 それがどういう意味を持っているのか、サトーは理解するのに数秒かかった。

 それを理解した後、サトーは頭を掻きながら口を開く。


「…………仲間になってほしいのが本音。でも、無理強いはしたくない」


 彼とは話したことがない。

 なにより、あの場で会っただけの彼に、縁もゆかりも、積み重ねの一つもない。


 だけど、そういった経緯や、彼のことを話す人々の事を思い浮かべると、少なくとも悪い人ではないのだと思う。

 これまで会ったことのある人たちと同じで、普通のいい人で間違いない。

 間違いなく、背中を任せるに値する人だろう。


「だから、まずは話をして、それでもしダメなら諦めよう。何度も説得して、こう、無理やり仲間になってもらうのは違う気がする」


 それが本心であることを、リーゼは理解できていた。

 だから。


「分かりました。それで私は構いません」


 一言も反論もなく、その全てを肯定した。

 それが主との約束であったとしても、彼女自身の意思と相違がなかったのが本当の理由だった。


「それにしても、なんかリーゼってちょいちょい優しいよな」

「私は常に優しいですが?」

「えっ…………」 


 ぎろりと睨まれ、思わず目を逸らした。 

 その様子が不服なのか、もしくは発言に納得がいってないのか、ふんと鼻を鳴らすとリーゼは手に持っていた食事に口をつける。


 二人は黙々と食事を食べ続けた。

 燃える薪の音が静かな草原に溶けるような、そんな優しい沈黙だった。

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