13
「そっか…………ごめんね、シェルアちゃん」
シェルアの話を聞いたライナは、先ほどの発言を思い返しそう謝罪した。
「ううん謝らないでください。彼もそんなことで怒ったりしないと思ってはいるので。ただ…………」
彼のことを信じ切れない。
そんな自分が情けないと。
言わずとも、シェルアの顔はそう物語っていた。
「…………それって、本当は凄いことなんだけどな」
「え?」
「ううん、なんでもないよ。それよりも、さっさと選んじゃお!」
シェルアに向けてはにかむと、ライナは制服選びを再開する。
(そっか…………そりゃ、不安にもなるよね)
ライナはそれほど長い間、受付の仕事を行ってきたわけではない。
それでも、それなりの数の冒険者を見て、見る目だけは肥えていると思っている。
それは両親がここのレストランをやっていて、幼いころからギルドに入り浸っているからだというのもあるだろう。
冒険者の多くが自信家で、自分の実力にプライドを持っている。
それはどの階級に行っても変わることはなく、そういった自信を失った者から冒険者を辞めていく。
危険を伴う冒険を行うのに、自信は時に実力以上に重要な武器となり、弱点にもなる。
(だから、つい期待しちゃったんだよね。この人達なら、彼がいるなら。シャグラさんを動かせるって)
彼は、どこか異質だ。
己の事を誇張するのではなく、むしろ卑下しているようだった。
確かに実力はそれほどないかもしれない。
それでも、あんな風に言われても食い下がらないのは非常に珍しい。
でも、だからといって何とも思ってないわけではないのは確かだ。
自分の実力がないことを悔しいと思っているとライナは踏んでいる。
なのに、それを全く周りには見せないように振舞っていた。
当たり前のように怒り悲しみ、喜ぶ。
そういったごくごく普通の感情を彼は間違いなく持っている。
なのに、そういったものを表にしようとしてこなかったらしい。
(…………そっか。だから彼)
意地。
それがきっと、彼を突き動かす原動力なのだろう。
どうしてあの年齢でそれに至ったのか。
その理由は分からないが、少なくとも利己的な理由ではないのは確かだった。
やっぱり、冒険者らしいものではない。
そしてそれは、シェルアとリーゼにも言えることだった。
良くも悪くも、三人ともあまりに駆け出しの冒険者らしくない。
だからこそ、ライナは三人に声をかけたのだ。
正体も、目的も不明。
きっとまだ隠し事がある。
「……」
そこまで考えてライナはここまでの思考を放棄した。
きっと、何か理由があるのだろう。
それが何かは分からないけれど、少なくとも今ここで言及することではない。
なにより、私自身が彼らが悪者ではないと思いたかった。
それほどまでに、彼らの空間は穏やかで。
ただ純粋に、手を貸したいと思えたからだ。
「さて、と。どれがいいとかある?」
「こ、これなんてどうでしょうか…………?」
シェルアが選んだのは白と黒を基調にした比較的シンプルな代物だった。
それはリーゼがお屋敷で着ていたものとよく似た代物なのだが、ライナはそのことを知る由もない。
「いいじゃん絶対似合うよ!じゃあ外で待ってるから着替えちゃって!私は下の人たちに、シェルアちゃんが手伝いに入ることを伝えておくから!」
「え、あ、はい」
ライナは駆け足で部屋を後にし、残されたシェルアは少し急ぐように着替えを始めた。
「うーん、やっぱり似合わないかな…………」
シェルアはこれがリーゼが着ていたものとよく似ているものであることを理解していた。
勿論彼女のことが好きで、一番尊敬できる親友だと思っている。
働く、となれば彼女のように振舞いたいと思ったのも事実だ。
だが。
「サトーが見たら、どう、思うかな…………?」
そう呟いたシェルアの表情が、ほんのり赤く染まっていることを知る者は誰もいなかった。




