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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第3章 ナマク村

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12

 一方そのころ、シェルアはというと。


「うーん、やっぱりこっちの方が似合うかな…………」

「あ、あの。ライナさん…………」

「あ、気にしないで。これ予備のだからお金は必要ないし」

「いえ、その、そうではなく」


 不思議そうに首をかしげるライナに対し、シェルアは顔を赤くしながら尋ねる。


「どうして、こんなに試着する必要があるのでしょうか?」


 おびただしい数の制服を並べられ、シェルアはさながら着せ替え人形のように立ち往生していた。


 事の発端はつい先ほどのこと。

 『明星の狼』ナマク村支部の手伝いをするために集会所のような建物を訪れたシェルアは。

 とりあえず制服に着替えて、と言われライナに建物の一室に案内されていた。


「やばい、シェルアちゃんどれ着てもすっごい似合う…………!」

「あ、あの!本当に、どれでもいいのですが…………」

「ダメダメ!ちゃんと選ばないと!」

「ですが、かなり時間も経ってますし、その…………」


 かれこれ二時間。

 シェルアはライナが渡してくる制服に身を包んでは脱いでを繰り返していた。


(このままじゃ、監視なんてできない…………!!)


「そ、それにしても、かなり数があるんですね」


 なんとか流れを変えようと、シェルアは咄嗟にそう言った。

 

 この部屋には、見渡す限り様々な制服がある。

 形はそれこそ似た物ばかりだが、色や細かな装飾などを含めると違いがそれなりにあるようだった。


「制服の規定ってギルドによって違うんだけど、ウチは基本的に自由で、襟にギルドの紋章が入った名札をつけてればなんでもいいんだって」


 そういってライナがシェルアに近づき、右手で左側の襟を示した。

 金属でできた小さなバッジには、『明星の狼』の文様が描かれている。まだ新しいのか光沢がきちんと残っていた。


「では、これは一体…………?」

「んー、どっちかというと私の趣味?一応好きなものを選べるようにって理由で集めたんだけど、実際は私くらいしか着ないし」


 鼻歌を歌いながらクローゼットを漁るライナは、着せ替え人形で遊ぶ子供のようだった。

 その背中が一度、ダンジョンで徘徊した時の自分と重なってしまい、シェルアは人知れず自責の念に襲われる。


「でしたら、他の皆さんはどうなさってるんですか?」

「基本的には本部と同じもの使ってるよ。一応配給されるしね」

「なら、私もそれで…………」

「だーかーらー!それじゃもったいないって!せっかく可愛いんだから、制服も可愛いの選ばないと」


 はっきり言ってどれでも構わない、というのはシェルアの本心だった。

 だが、ライナの楽しそうな笑顔を見てしまうと、断るのがなんだか申し訳なくなってしまう。

 なにより、協力してくれると提案してくれた人に、邪険にするのは心が痛んだ。


「それに、彼にも可愛いとこ見せたいでしょ?」

「え?」


 ライナはどこかいじわるそうな笑みを浮かべると、得体のしれない動きで一気に距離を詰めた。

 それはまるで、屋敷にいたころのリーゼのような俊敏な動作だった


「サトーさん、だっけ?彼のこと気になってるんじゃないの?」


 小さく、そう囁いた。

 少しのタイムラグを経て、シェルアの顔が沸騰するかのように赤くなると、シェルアらしくない極めて俊敏な動きで反対側へと逃げた。


「ち、ちちちちちち違います!決してそんなことありません!」

「えー?でも昨日、ずっと彼のこと見てなかった?」

「あれはその、怒らないのかなと思いまして…………」


 しおしおとしぼんでいくシェルアは、どこか躊躇いながらもこう続けた。


「彼、サトーは滅多なことで怒らないんです。リーゼにも、もちろん私にもなんですけど、それがなんだか、申し訳なくて…………」


 思い出すのはあの日、謎の巨大な魔獣に襲われたときの事だった。


『うるせぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!』


 優しい彼が、あそこまで感情を表にしたのを初めて見た。

 それはまだ出会って数日だから、というのもあるだろうけど、彼はあれ以降人前で怒ったことがない。


 ダンジョン内で謎の人物に襲われた際は怒声を挙げていたが、彼自身のことで彼は怒った姿を見たことがない。

 そしてそんな姿をみたことがあるのは、私しかいないのだ。


「彼は、決して自分のことで怒らないんです。それどころか、何を言ってもそれを受け入れてくれて…………リーゼは多分無意識にそのことに甘えてるというか、きっと何を言っても平気だとばかり思ってるみたいで…………」


 もしかしたら、彼は我慢しているのかもしれない。

 もしかしたら、見えないところで不満を募らせているかもしれない。

 もしかしたら、愛想を尽かす日が来てしまうかもしれない。


 そう思うと、どうしても彼から目を離せなかった。

 次の瞬間に本心があふれ出てしまうかもしれない。

 気が付いたら、どこかに消えていなくなっているかもしれない。


「なんて、ダメですよね。私」


 そうして笑うシェルアの表情は。

 (屋敷)の中に閉じ込められた、あの時と同じであった。

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