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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第3章 ナマク村

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11

 ナマク村到着から二日目の昼過ぎ。


「おらぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」


 サトーとリーゼはナマク村の近くにある森林へと赴いていた。

 どうやらこの森全体が魔獣の生息域らしく、今回討伐するのはそこから出てきてしまう個体と、外に近い位置に生息する個体らしい。

 そいつらを倒しつつ、森の外周をぐるっと回るのが今日の目的だった。


 リーゼが提示した手順は極めて簡単で。


「にゃろ…………!リーゼ!」

「はい」


 襲い掛かる魔獣を盾で受け止めると、リーゼが蹴りを放ち魔獣を爆散させる。

 四散する魔獣の肉片に最初こそ驚いていたサトーだが、それ以上にリーゼの蹴りの威力に驚くしかなかった。


「はぁ。思ってたより強くないな、こいつら」

「近くにいくつか村がありますからね。もし凶暴な魔獣が発生するのであれば村など作れません」

「でもさ、俺が囮になって魔獣を引き付けて、リーゼが仕留めるってどうなの?」

「適切かと」

「検討の余地すらないのかよ…………」


 そう、魔獣のテリトリーである森にサトーが単身で踏み込み、襲ってきた魔獣をリーゼが倒す。

 リーゼ考案の魔獣討伐方法はそれくらい安直な案だった。


「とりあえず、これで三体目か。そういやダンジョンのと違ってアイテムは落とさないんだな」


 怖がっていたのは最初の一回だけで、二回目以降は襲い掛かってくる魔獣の観察ができるくらいの余裕があった。

 姿は狼くらいの大きさの肉食獣のような容姿をしており、噛みついたり、切りつけるような動きで襲ってきた。


 だが、お屋敷近くで戦った魔獣や、ダンジョンで襲ってきたミノタウロスよりかなり弱く、力も大したことなかった。

 少なくとも、サトーの腕力でも受け止められる程度のものだった。


「あれはあくまで人工的に作られたものだからです。本来の魔獣は無から生まれ、塵となって消えるのが普通ですので」

「そういうことなのか…………さて、と。そろそろ移動するか」


 魔獣のテリトリーはそれなりに広いので、短時間で複数敵を倒すことはできなかった。

 その代わり、一戦ごとに休憩が挟めるのは個人的には非常に助かることではあった。


 慣れてきたとはいえ、扱っている盾は未だに重い。

 慣れとかそういう問題ではなく、単純に重いのだ。

 長い時間構えているだけでもしんどいのに、連戦なんて考えたくもない。


 今回の依頼は数日かけて行うことになっている。

 それはこの森の広さと先ほどのテリトリーが関係しており、リーゼの計算だと三日程度かけて森林の外周を一周できるらしい。

 戻る手間を踏まえて、依頼中は野営をするらしい。


(野営か…………したことはあるけど、二人っきりってのがなぁ…………)


 キャンプ自体は苦手ではないものの、それでもリーゼと二人きりははっきり言って気まずいというほかない。

 今回野営で必要なものは全てリーゼが背負っており、今でも背負いながら戦っている。

 力は彼女が上なので合理的だとは思うが。


 問題は、それに関して何一つ文句を言わないことだ。

 この借りをどういう形で返す羽目になるのか考えるだけで恐ろしいし。

 そもそも、囮として使うなんて発言をしていて、荷物持ちをさせない理由がよく分からない。


「てか、だからシェルアは向こうなのか…………」

「何がでしょうか?」


 どうせ二人きりにしたくない、とかそんなことだろうと思い呟くと、すぐ近くにリーゼがいた。


「うおっ!?音消して歩くのやめてくれない?マジでビビるんだけど」

「バタバタ歩くのはメイドの恥ですので。それから、別段二人きりにするのを阻止するためではありません」


 なにこの人エスパーなの、いや違うなメイドだからって言うなこの人なら。

 図星だったのがバレたのか、リーゼはため息を吐いた。


「そもそも、こんな危険な状況下でお嬢様を野営させるわけがないでしょう」


 その一言でサトーは諸々の事情を思い出した。

 よく考えたら、誰かに命を狙われているから仲間を増やす、ということになったわけで、その張本人であるシェルアを人の少ない場所に置いておくわけにはいかなかったのだ。

 

「あそこなら、それなりに人の出入りがありますし、なによりシャグラ様がいらっしゃるので」

「ん?いや、あのおっさん全然会話になってなかったよな?あれで戦えるとは思えないけど」


 どう考えても彼を戦力として数えるのは無理があるように思えた。

 だが、リーゼは再度ため息をすると。


「どうせ気づいているのでしょうけど、敢えて言いますが彼は素面ですよ」

「…………やっぱそうなの?」

「はい。彼は酒に非常に強いことで有名でしたから」


 さらりと言うあたり、リーゼも考えていたことは同じだったらしい。

 二人はそのまま、その意図を検討し始める。


「しかし、なんで酔ってるフリなんてしたんだろうな?」

「おそらくは、私たちのことに気が付いているのかと」

「気がつくって、シェルアがお姫様だってこと?」


 確かにシェルアは物凄い美人だが、だからといって王女と同一視できるとは思えない。

 同じ名前だとしても、そもそも容姿を知っている人とサトーは会ったことがなかった。


「はい。あの支部長、容姿が些か老けており最初は気づきませんでしたが、シャグラ様が補佐をしていた際の部下で、同期だった方でした」

「マジか、てことは…………」

「お二人とも、我々の正体も理由も知っていると考えるのが適切かと」


 さらっと言ってるが、はっきり言ってあまりよくない状況に思えた。

 なにより、シェルアは今一人だ。


 ライナさんがいるとはいえ、もし通報でもされたらそれこそ一貫の終わりである。

 だが、リーゼは特に気にすることなくこう言った。


「ひとまずは、大丈夫でしょう。我々はこの依頼を達成することに集中すべきです」


 そう言われると従うほかないため、サトーは肯定の意を示し、リーゼの少し先を歩き始める。


「つーかさ、それならなんで指摘しなかったわけ?」


 さくっと魔獣を倒し、一息入れたタイミングでそう尋ねてみた。


「理由が分からない以上、あの場で粘るのは得策だとは思えなかっただけです。なにより、あれだけの人がいる中で彼に問い詰めるなんてことはしたくなかったので」


 そう話すリーゼの表情はいつもと変わらない様子ではあったが、口調はどこか影を落としているようだった。

 それはまるで触れてはいけない何かを躊躇うような、そういった彼女らしい気遣いに思えた。


「事情、知ってるんだろ?」

「…………あくまで断片的、ですが」


 そういうと、リーゼはシャグラのことについて淡々と話し始めた。

 話の内容はそれほど長くはなかったものの、聞き終えてると二人は互いに何も言わなくなっていた。


 そして、その日は予定通り全工程をこなし。

 二人は森の近くの原っぱで野営の準備を始めることができた。


「…………」

「…………」


 それでも二人の間に、会話はなかったのだった。


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