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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第2章 明星の狼

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26

 懐かしい天井。


 そう感じてしまうことに無性に情けないと感じるのは自分だけだろう。

 なにせここは昨日宿泊した部屋ではなく、『明星の狼』の本部の一室だったからだ。


「…………ィッ!?」


 起き上がろうとして全身がズキンと痛み、あまりの激痛に立ち上がれず全身の力が抜ける。

 生憎ベットは柔らかく、それでいて居心地は良かった。

 あまり素直に喜べないのが残念だが。


(んで、何がどうなったんだ?)


 天井を眺めつつ、サトーは最後の記憶を思い出す。

 覚えているのは真っ白な髪をしたシェルアの姿だった。


 それより前となると、あの気味悪い青年ともみ合いになった辺りくらいで、細かいところが断片的に抜け落ちている。


「…………ッテテテ」


 わき腹が突発的に痛み、思わず顔をしかめる。

 今思い出すだけでも痛いし、我ながらよくやったなと思ってしまう。

 もう一回やれと言われてもやれる自信はない。


「…………?はーい」


 ノックする音がした直後に、見慣れた銀初の女性が中に入ってきた。


 リーゼだった。

 流石にあのメイド服ではなく、メイド服らしき何かに着替えている。


「相変わらず、無茶をしますねあなたは」


 呆れた様子でそう告げると、近くにあった椅子に腰かけた。


「調子はどうですか?悪くても連れ出すのですが」

「え、選択肢ないの俺?」

「冗談です。流石にまだ一日しか経っていませんので、移動は不可能でしょう」


 どうやら今回は三日も熟睡するという醜態を晒さないで済んでいるらしい。

 などと考えていると、気になることを思い出し、こう尋ねた。


「そういや、シェルアと他の冒険者はどうなりました?」

「全員無事です。あなたが施した治療が存外役にたったそうです」

「そっすか…………なら、よかったです」


 ほっと息を吐くと、思い出したかのように全身が酷く痛みベットに寝こんでしまう。

 どうしても、見捨てた形になった冒険者に申し訳ない気持ちが残ってはいたのだ。


 治療の心得なんてまるでないものの、その場でできそうなことはしたつもりだった。

 だからこそ、そういう風に言われるのは嬉しかった。


「些か早急すぎるかと思いますが、一つ相談を」

「は、はい」


 なにやら重要な話らしく、リーゼの表情が真剣なものに変わった。

 本来であれば正座でもして聞きたいところではあるのだけど、生憎体が全く動かないので寝ころんだままの状態だ。


「仲間を、増やしたいと思います」

「…………へ?」


 思いがけない提案に、思わずサトーはそう聞き返してしまう。

 リーゼは真剣な口調そのままに、こう続けた。


「今回の事件、ダンジョンの浅い層であり、かつザハ様という存在のおかげでなんとか乗り越えることができました。ですが、ザハ様は一時的に契約を結んでいる身。いつまでも我々の味方であるということはできません」

「確かにザハに頼りきりってのはあれだけど、それでもいいのか?」


 訝しそうにこちらを見るリーゼに対し、サトーはこう続ける。


「いや、だって俺らって一応はお尋ね者じゃん?仲間を増やすってのも信頼できる相手かどうか判断するの難しいし、なによりザハを加入させたの嫌がってたし」

「ですので、事情が変化した、ということです。ここから先、どんな事態が起こるのか予測できません。なにより、私一人では対処しきれない事態が必ず起こりえます」


 対処しきれないと、そう言い切るリーゼはあまりにイメージと違った。

 リーゼであれば一人でもなんとかなると考えていそうだし、なによりそれだけのスペックを備えていると思う。


 実際、今回だって多数のミノタウロス相手に他の冒険者を助けたのだから、その謙遜は些か過小評価に思えた。


「ですので、それに備えるための仲間を。どんな事態であっても共に戦ってくれる仲間が必要だと考えました。シェルア様より先にあなたに相談したのは、そこらへんの判断がお嬢様より優れていると考えたからです」

「や、ま、そこまでじゃないと思うけど…………」


 やたら素直に褒めるので、どう返事をしていいのか分からず困惑してしまう。

 サトーは少し考えると、おもむろに口を開いた。


「俺は賛成で。ザハの件もそうだけど、多分そういう人って探せばいそうだし」

「…………なんとなく、あなたに相談したのが失敗だった気がしてきました」

「いや酷いな!?」


 顔に手を当てるリーゼにサトーは思わずそう突っ込む。

 少しだけ感心した途端にこれだよ。

 この人、なんでこう、素直に人を褒めることができないのだろうか。


「ついでに、オレも賛成だな」


 そういってドアの向こうから現れたのはザハだった。

 どうやら先ほどまで何かしていたのか、着ている服が随分と汚れている。


「話のついでで悪いが、今日限りで辞めさせてくれ」

「え!?なんでまた急に?」


 サトーの問いに、ザハは真剣な面立ちのままこう答えた。


「一つは昨日の事件のせいでダンジョン全体が封鎖。現在ダンジョン内にいるチームを除いた全てのチームが出入り禁止になった。そんで、今回の件でオレの所属するチームの帰還の時期が相当に早まったらしい」


 モンスターパニック、という現象の再発動ということはないらしいが、それでも一応危険性を考慮しての判断らしい。

 原因と対処の方法を検討したうえで、ダンジョンを再度解放するとのことだ。


「そしてもう一つ。こっちはまーなんだ、ちょいと用事ができてな。しばらくはそっちにかかりきりになりそうだ」


 随分とざっくりとした言い方だったが、きっと言えない理由があるのだろう。

 そう考えると、特に拘泥することなく返事をした。


「そっか。一時的な契約だって話だったし、そういうことなら全然問題ないよ」

「わりーな。もうちょいダンジョンの案内とか、冒険の面白さを伝えるはずだったんだが」

「それはまた今度頼むわ。な、リーゼ?」

「…………分かりました。あまり気は進みませんが」


 嘆息すると、リーゼは短くそう伝えた。

 ザハは近くの壁に寄り掛かると、あることを提案してきた。


「で、だ。アンタらの仲間に相応しい人の心当たりがあってな。まぁちょっとややこしい事情があるらしいんだけど、どうだ?」

「事情の内容によりますね」

「いやー、そこが分からなくてな。でも身分、というか、略歴は結構真っ当な人だぜ」

「いや分からねぇのかよ…………」


 思わずそう突っ込んでしまうが、リーゼは全く気にすることなくザハに尋ねる。


「名前は?」


 問われたザハは、その名前を告げた。


「シャグラ。エルフィン王国騎士団で団長補佐だった人だそうだ」

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