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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第2章 明星の狼

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16

「さて、と。午前中はサトーの武器選びをやって、午後は軽くダンジョンに行くか」


 次の日の朝。

 集合場所に先に来ていたザハは、三人を見るとそう切り出した。


「ダンジョンって、もう行くのか?」

「こういうのは早いほうがいいかと思ってな。それに、一層なら誰でも行ける」


 一行はザハを先頭に、昨日訪れた鍛冶屋へと向かった。


「そういや、ここのダンジョンってどんな場所なんだ?」


 道中、何も気なしにサトーはそう呟いた。


「『()れなる(やしろ)』。それが明星の狼が管理しているダンジョンです。特徴としては全ての階層が横に広い、という点だとされてます」


 答えたのはシェルアだった。

 シェルアはサトーの横に並ぶと、その概要を説明する。


「ダンジョンはいくつかの階層に区分されていて、『連れなる社』は平たく言うなら広い空間が縦に繋がっているとされてるんです。その広さは七つあるダンジョンでも最大で、移動するだけでも一日がかりになるとか」

「てことはこの真下もダンジョンがあるってことか」

「そうなりますね。そのため、行きだけではなく帰りにも危険が多いとされていて、体力の配分が重要視されています」

「とは言っても、浅い階層ならそこまでなんだがな」


 二人の会話に、ザハが横から口を挟んだ。


「一層から十層までならはっきり言って駆け出しでも潜ることができる。なにせ広いからな。魔獣から隠れながら進めば戦わなくて済むのも大きい。そういう理由で初心者向けのダンジョンとは言われてる」


 確かに逃げるだけに徹すればそういうことも可能なのだろうけど、あの日戦った魔獣を連想するとあまり現実的ではないと思ってしまうのが本音だ。


 それともこの世界の住人ならあれくらい簡単に倒すことができるのかもしれない。

 そこに関しては今のところ分からないけど。


「だが、魔獣は二四時間で再生成される。広さも相まって魔獣がいない時間帯はそれほど多くないってことだ。それに万が一、実力に見合ってない冒険者がうっかり潜らないよう、『明星の狼』の管理する支部がダンジョンに拠点を構えてる。どうやってもそこを通る必要があるから、実力のない者はそれ以上下にはいけない仕組みだ」

「ダンジョン内に拠点とか、心が休まる感じがしなそうだな…………」

「そうでもないぜ?冒険者ってのは基本的にダンジョンが生活の大部分を占めるからな。そういう意味では天国だっていうやつもいるぜ」


 ケラケラと笑うザハもきっとその部類に入るのだろう。

 だってこの話題になってから、目つきが明らかに鋭くなっている。


 生粋の冒険者というわけだ。

 悪いが一生理解できる気がしない。


「各階層には固有の敵がいて、そいつらが落とす素材は高値で取引される。それを集めてお金にすることで、一獲千金を狙えるってわけだ。そういった素材は貴重で、一般人じゃ絶対に手に入らないからな。だから冒険者ってのは憧れの職業であり、大体の奴が冒険者をやっていたりする。ま、すぐに廃業するがな」


 やはり冒険者は誰もが一度は通る道らしい。

 そう聞くと、もしかすれば道中で荷車に乗せてくれたあの人物も、かつては冒険者をしていたことがあるのかもしれない。


「なるほどな…………話を聞く限りだと、下に行くほど敵が強くなるのか?」

「あぁ。一応は工房、天才鍛冶師が拵えた拠点だからな。奥に行くほど敵は強くなる。そうなると当然落とす素材も価値があがる。そうやって冒険者は地位を高めるのさ」

「なら、それが冒険者としての階級にも関係あるのか?」


 一つだけ気になっていたのはそこだった。

 冒険者の階級は恐らく統一されていて、何かしらの基準があると考えた。


 だけど、そもそもダンジョンは七つあり、ギルドは七つある。

 つまり七種類の基準がある可能性が高い、ということだ。


 そうなってくると、お尋ね者である自分たちとしては非常に居心地がよくなくなる。

 というか有名になるのはあまり嬉しくない。


「ま、そうだとも言えるってとこだな」


 ザハの回答は曖昧なものだった。

 少なくとも、簡単に説明できない内容であるということは理解できた。


「基本的にA級まではそのギルドで決められる。実力を見誤るのはギルドの恥になるからってのが表向きで、実際は手続きが煩雑になりかねないのと、ギルド同士でも仲の良い悪いがあるのさ」

「それってどれくらいの感じ?顔合わすだけでいがみ合うとかだと嫌なんだけど…………」


 多分どいつもこいつも癖が強いのだろう。

 限られた人しか長続きできない、ということは、それだけ個性の強い人が集まるのは明確だった。


「同一の基準を作ろうとして、ちょっとした戦争になったくらいだな」

「ダメじゃねぇか」


 仲が悪いとかそういう問題じゃなかった。

 なんで同じギルドって括りにいるのか分からないレベルだ。

 しかもなったいうあたり、一度起きてることになる。


「ただ、S級に関しては全てのギルドの賛成を得る必要がある。その談合は年に一度だけあって、それを通過すると晴れてS級冒険者になれるってわけだ」

「それって選考評価は決まってるのか?」

「どうなんだろうな。正直ギルド長、昨日あったクソデカいばばぁいただろ?あんなのが各ギルドにいて、そいつらの独断で決めてるらしい」

「随分ざっくりしてるな…………」


 同じくらいの巨体なら部屋が狭くなりそうだな、などと考えつつもそう相槌をする。

 ザハは呆れた様子で肩をすくませた。


「とはいえ、あれで意外とちゃんとしてるんだよあのばばぁ。そもそも冒険者だったくせにあんなちんけな場所で隠居してるのがおかしいんだが」

「随分詳しいな…………」


 その口調は長年一緒にいたかのような話し方だった。

 少なくとも、一冒険者と所属するギルドの長、という間柄には聞こえなかった。


「ま、色々あってな。なに、大したことじゃない」


 珍しく、ザハの空気が締まった感覚がした。

 それはいつもの飄々とした雰囲気とはまるで異なるものな気がした。


 何があったのか聞こうとしたが、どうやら鍛冶屋についてしまったらしい。

 親方に話つけてくる、と告げるとザハは三人に外で待つよう伝えた。


「ひとまず、あなたは弓矢でいいのではないでしょうか?」


 待つ間、リーゼがそう口を開いた。

 どうやら昨日の武器選びのことを踏まえて言っているらしい。

 あの惨劇を思い出し、全身がむずかゆくなるも、サトーはシェルアと目を合わすと互いにニヤリと笑った。


「そのこと、なんだけど」


 首をかしげるリーゼを見て、こう告げる。


「一つ、試したいことがあるんだ」


 訝しそうに眉を顰めるリーゼに対し、サトーとシェルアはにやにやと笑みを浮かべるのだった。

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