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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第2章 明星の狼

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14

「遍く者に救いの光を!」


 誰かがそう叫ぶと、白装束の集団は恐ろしい速度で接近してくる。

 それに合わせるように、頭上に構える集団が各々詠唱を開始した。


「オレは上を相手する!アンタは下を頼んだ!」


 ザハはそういうと、勢いよく壁を駆け上がり、屋上に着地した。


 数は八。

 魔術を行使するための魔術陣を展開している人間が五人で、それを護衛するのが三人の構成だ。


「意外と用意周到だな」


 口笛を吹いて感心したようにつぶやくと、ザハは気にすることなく突っ込んだ。

 手に何も持たず接近するザハに対し、その一人が剣を構え、振り下ろす。


「よっと!」


 だが、気が付けばザハの手には奇妙な形状の剣が握られており、目にも見えない速さで一人を数度斬りつけた。

 その光景を見ていた集団がざわめきたつが、ザハはどこか嬉しそうに声をかける。


「まさか丸腰で相手するわけねぇだろ。あの婆さんじゃあるまいし、そんな無茶しないっての」


 ザハの持つ剣を、一言で例えるなら海藻、と言うのが正しいだろう。

 両刃の剣なのだが、刀身が波打つように大きくうねっていた。


 それ以上に目を引くのは、刀身に埋め込まれた六つの珠だった。

 それは水晶のように半透明で、色は赤、青、緑、茶、黄、黒に分かれている。

 それぞれが独立した穴に埋め込まれているが、平たく薄い剣とはあまりに不釣り合いだった。


「ッ!魔術班!対象をあの男に変更しろ!」


 誰か、恐らく護衛の一人がそう号令を出すと、魔術師の三人が描いていた魔術陣をこちらに向けた。

 光り輝く魔術陣の色は赤、緑、茶色。


「…………はぁ」

「放て!」


 号令の直後、魔術陣が更に光り、炎、風、土の塊が放たれた。

 それらは真っすぐザハに向かうと、着弾し、爆発を起こした。


「やったか!?」


 号令を出した者がそう叫ぶ。

 すると、煙が斜めに切り裂かれた。


「なに!?」


 現れたザハに、傷はない。

 それどころか、土埃すら被っていなかった。


「おいおい、まさかと思うが、あれだけの時間があってその程度の威力かよ?今どきのD級冒険者だってもうちょいマシな攻撃をするぜ?」

「次弾、放て!」


 残りの二人も続けて魔術を放った。


 現れたのは雷と水流。

 それらもまた真っすぐザハにめがけて進んでいる。


「…………ったく、情けねぇなぁ、おい!」


 ザハは剣を肩で背負うように構えると、小さく息を吸って柄を強く握る。

 すると剣の中心、埋め込まれている六つの球体が光り、火、風、水、土、光、闇を纏う。


「らぁ!」


 怒号一閃。

 魔術師が放った魔術が一撃で粉砕される。

 振りぬいた剣は未だ六つの光を纏ったまま、ザハはゆるりと剣を構えた。


「つーか、そんなんでよくオレを相手しようと思ったな?どんだけ見積もりが甘いんだよ。おかしな宗教にハマって頭おかしくなったか?っと失礼、まともならそもそもそんなおかしな宗教に入らんわな」

「バカな!?こんなことありえん!」

「一応、説明しておくぜ」


 狼狽する集団が水を打ったかのように静まり返った。

 空気が変わったのだと、直感で理解したのだ。


「これは『(にじ)(けん)』っつって、まぁ文字の通り全ての属性の魔力を付与できる便利な武器でな。担い手の魔力に関係なく誰でも扱える優れモンなのさ。ま、すこーし癖があるけど、慣れればどうってことない」


 魔術への対応策はいくつか存在する。

 最も単純な方法は魔術師本人を倒すこと。

 これは魔術を行使される前に実行する必要があるため、あくまで先手を取れた場合に限定される。


 次に簡単なのは魔術で迎撃すること。

 魔術はそれぞれ六龍を模した属性に分類され、それぞれに相性が存在する。

 魔術戦においては、魔術の性質以上にこの相性が勝敗を分ける。


 だが、人によって魔術における得手不得手が存在する。

 例えばシェルアの得意な魔術は土であるように、この法則はすべての魔術師において有効とされている。

 例えるならその人の趣味趣向に極めて近い。


 つまり意識して改善することがとても難しく、全ての属性に精通し、かつ使いこなせる者はごく一部の例外を除いていない。

 ごく一部の例外を除いて、だが。


「『虹の剣』だと…………!?だとしたら、貴様はまさか…………!」


 その瞬間、彼を囲っていた者たちは理解した。

 今、まさに目の前にいるこの男が誰なのか。


 そして今、眠る狼の尾を踏んでいることを。


「気づくのが遅いんだよ間抜け。言っておくが、手加減はしねぇぞ」


 剣を構え、低い声でそう告げる。

 それだけで空気が歪む。

 仮にそれに気づけたのなら、まだ救いがあったかもしれない。


 だが、彼らはそれすら気づけず、慌てて攻撃を行おうとする。

 それを見て、ザハは静かにこう告げた。


「誰に喧嘩売ったか、地獄の底で後悔しやがれ」

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