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遡ること数分前。
「チームに入れろぉ!?」
その突然すぎる提案に、思わずサトーは素っ頓狂な声を上げてしまう。
ザハは悪戯を企てる子供のような笑みを浮かべていた。
「オレは別のチームに所属してんだけど、そこが今遠征中でな。その間、オレは留守番ってことになってんだ」
「は、はぁ…………それで?」
「でもこれがまた暇で暇でしょうがなくてな。下手に仕事受けるわけにもいかないし、それに個人だと受けられる仕事も限られてくるのよ。退屈だなーって思ってた時に、アンタらと出会った」
なんだか大層な言い回しをしているが、顔つきはあくどいの一言に尽きる。
どこを見ても聞いても、詐欺師の口上だ。
「オレはすぐに思ったな。これはいい暇つ、いや運命だなって!」
「今暇つぶしって言いかけたろ」
「そこで、アンタらのチームに入りたいってわけ」
どういう理屈かまるで理解できないが、そもそもチームに入っている時点で仕事を受けているのと同義にしか思えなかった。
なにより。
「アリなわけ?それ」
「どうだろうなぁ。割とあるとは思うけど、上の階級のチームから下の階級のチームに移籍するのは珍しいだろうよ。人の貸し借りはまぁまぁあるってとこだ」
倫理的にどうなのかと思ったが、ザハの口調は随分あっさりとしたものだった。
恐らく、この男は留守番を頼まれたが、別のチームに移籍していたから約束はなし、と言いたいのだろう。
(てかそれ、コイツが属してたチームから文句言われるだろ…………)
ザハの言い回しから納得しそうになるが、もめ事が起きた時に損するのはサトー側である。
それに気づいていないのか、ザハは妙案だと言わんばかりに話を進めようとする。
「で、どうだ?」
「いや、それ俺一人で決めることじゃないし…………」
「さっき見てたが、チームの代表者はアンタだろ?ならアンタが決めても何も問題ないんじゃないか?それにだ、これでも個人でB級なんでな。駆け出しの冒険者にとっては心強い援軍だと思うぜ。分からないことは何でも答えるし、ダンジョンの攻略方法なんかも知ってる。役に立つのは間違いない」
「んー…………」
「どうだ?オレって結構魅力的だろ?」
誇らしげに胸を張るザハ。
確かに、B級の冒険者なら、そこそこには強いのだろう。
丁度真ん中あたりで、少しだけ心もとないとも思わないけど、それでも自分たちは一番下のD級になるはずだ。
ザハの言う通りなら、なかなか得られない機会ではあるとは思う。
人脈だって全くない状態だから、手探りで色々するよりは楽に決まってる。
(いや、でもなぁ…………)
だけど、だけどだ。
そもそも自分たちはお尋ね者で、国から追われてる身だ。
あくまで生計を立てるのと、シェルアの願いをかなえる目的で冒険者になる。
それなのに、安易に仲間に加えるってのもどうかと思う。
なによりだ、個人でB級よりチームでD級の方が仕事が受けやすいってことがあるとは思えない。
ただそこは、この場で思案しても仕方ない事項ではある。
「んー…………」
「なんだ、意外と長考するな」
さて、どちらを優先するか。
それで答えがかなり変わるのは間違いない。
問題は、どちらを選んでも面倒なことが確実に起こることだ。
正直どっちもあれとしか言えない。
なので。
「とりあえず俺は了承する。あとの二人にはきちんと説明して」
問題を先送りすることにするのだった。




